第二章 新しいユニフォーム 五 練習試合
藤本がボールを持ってサークル内に入って来た。審判は藤本一人で務める。安東は還暦を超えているので、さすがに協力は仰げない。
「本番だと思って、みんな全力でプレーしろ。いいな」
と言うと、藤本は口にホイッスルをくわえ、両手でボールを持った。
ディフェンスは互いにマンツーマン。
マークする相手は次のようになった。
PG 奥原 晃 PG 矢島 洋
SG 日下部武 SG 笛吹 隆
SF 早田一央 SF 目 浩之
PF 滝瀬竜二 PF 菅谷安秀
C 加賀美英司 C 山添慎吾
互いにマークする相手を意識しつつ、全員がボールに注視した。
藤本がバレーのトスをするようにボールを上げた。
両者、ジャンプ。
ボールを叩き落としたのは加賀美、日下部がすかさずボールを奪った。
「速攻」
日下部が声を上げると、全員一斉(いっせい)に走り出した。
日下部をマークしている笛吹は、彼に食らいつき、ドリブルコースに入ろうとして体を寄せた。
日下部は一旦足を止めた。右四十五度に位置する日下部はドリブルをしながら、パスを出すかドリブルで突破するかを考えつつ、周囲を見渡した。トップには奥原、インサイドには加賀美と滝瀬、左四十五度に早田。奥原をマークしている矢島はやや離れた所にポジションを取っているが、これは誘っているようにも見える。迂闊(うかつ)にパスを出して矢島とのマッチアップになれば、今の奥原よりも矢島の方が力は上。ならば……
日下部はドリブルしながらリング下に切り込んだ。
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