第二章 新しいユニフォーム 三 ベールを脱ぐ矢島

 この日、鷹取達三人は初心者と言うことで、フルコートプレスの練習からは外された。


 ディフェンスを鍛える練習なので、これまでのレギュラー陣がまずディフェンスについた。1―2―1―1の人員配置は、ディフェンス陣から見て、ファーストラインは早田、セカンドラインは滝瀬が右、日下部が左。サードラインが山添で、セーフティが加賀美。対するオフェンスは、二年の笛吹、奥原、菅谷、一年の目、矢島。笛吹は身長172センチ、体重66キロ。ポジションはSG。シュートの精度にむらっ気があるが、ハマった時は誰にも止められない。奥原は身長170センチ、体重63キロ。ポジションはPGであるが、俊敏さは今ひとつである。菅谷は身長182センチ、体重85キロ。ポジションはPF。パワーはあるが、奥原同様やはり俊敏さに欠ける。奥原と菅谷には明らかにフルコートプレスは向いていない。


ディフェンス陣がチーム分け用のビブスを着ている最中(さなか)に、藤本が、


「矢島」


 と、声を掛けた。


「はい」


「ボールはお前が運べ」


「あっ、はい」


 それを聞いた菅谷は、


「俺の所まで持って来てくれよ」


 と、ニコニコしながら洋に言った。


 菅谷は性格が明るく、ベンチに居る時はよく声を出す。ムードメーカー的な存在とも言える。


「とにかく、やるからにはギャフンと言わせないとな」


 と笛吹が言った。


 それを横で聞いていた洋は、


《過剰な期待は迷惑だよな》


 と思いつつも、笛吹の言うことには共感出来た。

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