第二章 新しいユニフォーム 二 ハードな練習
しかし、だからこそ、この別メニューの練習には、早く一人前にしてやりたいという藤本の願いと焦りがあるようにも思える。また、彼等を腐らせないために手綱(たづな)を締めようとする目的もあるように思える。その証拠に、練習開始から四日目の木曜日の時、
「パス回しの練習はつまらないだろ」
と、練習を見ていた藤本が突然言った。
しかし、鷹取は、
「そんなことはないです」
と言い返した。が、藤本は更に、
「嘘をつくな。こんな練習、楽しいはずがない。基本練習なんてどれもこれも面白くないものばかりだ。だが、それを乗り越えなければ本当の面白さは分からない。我慢に耐えるのもまた練習だ。いずれそれが接戦の時に役に立つ。分かったか」
近いうちに、彼等がおそらく抱えるであろう不満に対して先に叱咤激励(しったげきれい)をすることで、藤本は彼等の不満を解消しようとしたのではないかと思われる。それが功を奏したのか、パスとドリブルのみならずシュート全般の基礎練習もしばらくは別メニューでやらせて欲しいと鷹取が代表して藤本に申し出た。
藤本は喜んでそれを受け入れた。
練習はこの他にも、ピボット、二線速攻、三線速攻、シュートと続いた。ただし、練習メニューは藤本の指導のもとに行われているので、当然のことながら、これらとは違うメニューをするときもある。
二線速攻では、洋は日下部と組んで練習を行っている。練習初日に日下部から自分と組むようにと言われてからずっとである。気に入ってくれるのは嬉しいが、一後輩(いちこうはい)としては、やはり有り難迷惑である。
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