第二章 新しいユニフォーム 二 ハードな練習

 山並男子バスケット部の練習はまずランニングで始まる。ランニングは先頭にキャプテンの日下部と副キャプテンの早田が二列に並び、その後ろに三年二年一年の順番で並ぶ。走り始めたらまず最初にキャプテンである日下部が「オール・ファイト」と言い、それに続いて全員が「オー」と掛け声を上げ、再び日下部が「ファイト」と言ったら、その後(あと)全員で「オー」と言う。それを何度か繰り返す。その掛け声を三年生全員が言い終えたらランニングが終わる。


 練習初日にこの掛け声を聞いたとき、洋は中学のときと変わらないなあと懐かしく思った。しかし、しんどい練習がこれからまた三年間続くのかと思うと、気が滅入(めい)りもした。ただ、違うことがあるとすれば、中学時代は日曜日以外の練習は屋外のコートで行われていたことだろうか。体育館にはコートが一面しかなかったので、使用出来るのは卓球部や剣道部の練習が終わってからであった。つまり屋外コートでフットワークと速攻の練習を散々やった後の室内練習からが、洋達の練習本番であった。


 しかし、ここでは最初からコートが使える。キュッキュッと音のするコートはやっぱり気持ちが良い。洋はあの新しいシューズの感触を確かめつつ、コートを掴むようにして走った。


 ランニングが終わると、次はフットワークの練習。ターンダッシュ、もも上げダッシュ、サイドステップ、クロスステップ、サイドキック、バックランニング、ゴリラステップ……


 バスケットは攻守の切り替えが早い。早く行えないチームは絶対に勝てない。だから、フットワークの練習には多くの時間が割かれるし、入念に行われる。

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