第一章 高校バスケット部、入部 四 練習開始

 日下部は藤本を認めると、


「全員集合」


 と言った。


 全員、藤本の所まで駆け足で集まった。


「加賀美(かがみ)と滝瀬(たきせ)はまだか」


「今、着替えています」


 と答えたのは、二年生の山添(やまぞえ)だった。身長192センチ、ポジションは

センターである。


「じゃあ、二人が来るまでちょっと待ってよう」


 と言うと、藤本は矢島のシューズを見た。


「お前がそんな派手なシューズを選ぶなんて、ちょっと意外だな」


「これには色々事情がありまして」


「別に責めてる訳じゃない。鷹取はブルーか。色的にはお前の方が正解だな」


 色的には……?洋と鷹取を除く他のメンバーは別に不思議がる様子はなかったが、二人にはその意味が分からなかった。


 そうしているうちに、ようやく加賀美と滝瀬が来た。


 加賀美英司(かがみえいじ)。三年生。身長196センチ、ポジションはセンターもしくはパワーフォワード。


 滝瀬竜二(たきせりゅうじ)。同じく三年生。身長185センチ。ポジションはパワーフォワード。


 洋は驚いた。目と鷹取を含めて180センチ超えが五人。高校レベルでこれだけの高さを持ったチームはそんなにないと思われる。全国制覇も夢ではなく、ほとんど手中に収めたと言っても過言ではないと洋は思った。


 しかし、藤本の言動を察すると、現実はきっとそうではないのだろう。


「今年の下越大会は、5月3日から5日だ。ここでの勝敗がインターハイ予選の組み合わせに大きく影響するのは、2年3年は分かっていると思う。下越大会まで後二週間。これからの練習はそれに向けて行う。それから、この二人が前々から言っていた矢島と鷹取だ。自己紹介は、もういいだろ。さあ、一応これで全員が揃った。気合い入れていくぞ」


「えっ?」


「どうした、矢島?」


「いや、全員って……一年はもっといないんですか」


 洋が尋ねると、上級生が皆苦笑いをした。

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