第一章 高校バスケット部、入部 四 練習開始

 夏帆が洋を認めた。笑って大きく手を振った。


 洋は恥ずかしさが先に来て、夏帆を無視した。


 そこに日下部が来た。


「おい、矢島」


「はい」


「あれ、お前の彼女か?」


「いや、同じクラスの子です」


「いやあ、彼女ですよ」


「鷹取」


「矢島、どっちなんだ?」


「えっ、まあ、仲は悪くないと思います」


「お前、意外と手が早いな」


「先輩、その言い方は止めて下さい。今目が合ったのは、本当にただの偶然なんですから」


「何焦ってんだ。誰もそんな事まで聞いてないだろ」


 と言うと、日下部は笑った。


 日下部から見て、洋はどうもからかい易いようだ。


「それにしても、お前等、良い靴履いてるな」


「はい、鷹取と二人で昨日買いに行きました」


「二人とも靴にテーピングをしているが、何か意味があるのか?」


「これは、中学の時、先生から教わったんです。バスケは動きが激しいからシューズはすぐに破ける。だから、先に補修しろって。破けるたびに買い換えられるほどお金はありませんから」


「確かに、その通りだな……」


 日下部はそう言うと、自分もテーピングをしようかと考えた。


 と、そこに、


「日下部」


 と言う、藤本の声が聞こえた。

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