第一章 高校バスケット部、入部 四 練習開始

 講堂脇のドアが開くと、矢島がボールかごを押しながら出て来た。後から同じようにして、鷹取も出て来た。


 バスケット部の女子はメンバーが揃ったらしく、既にランニングを始めていた。その向こうでは、チアリーダーの女子達が各々ウォーミングアップをしていた。その中には夏帆もいた。


 昨日、洋と鷹取は一通り買い揃えると、夏帆と由美のもとへ向かった。


 シューズは怪我の防止や動き易さなど、鈴木のアドバイスを受けながら、かなり迷った挙げ句、洋はナイキのローカットを、鷹取はアシックスのミッドカットを購入した。ただ、デザインに関しては、洋は当初白地に黒のロゴが入ったシューズを買うつもりだった。しかし、夏帆の《黒は元気が無くなる》という言葉を思い出し、思い切って真っ赤なシューズを選んだ。


 女子バスケット部を挟んだ向こう側、夏帆は真っ赤なTシャツを着てストレッチをしている。洋が買った真っ赤なシューズを見て、夏帆も赤に決めた。そう言えば、買い物を終えて夏帆のいる売り場に行ったら、由美とおしゃべりしながら、何を買うかまだ決めかねていた。みかづきでイタリアンを食べながらそのことを話したら、楽しいからと言って、あっけらかんと笑っていた。洋はそう言う事では無いだろうと思ったが、言い返すのは面倒臭いのでやめた。夏帆は結局違うデザインの赤いTシャツを三枚買った。

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