第一章 高校バスケット部、入部 四 練習開始
洋と鷹取も失礼しますと言って中に入った。
すると、
「おおっ、矢島、やっぱり来たか」
と、既に着替え終えていた日下部が大きな声で出迎えた。
「矢島って、カベが言ってた?」
と言ったのは、日下部と同じ三年生で副キャプテンの早田(はやた)だった。身長178センチ。ポジションはシューティングガード。武器は言わずもがなスリーポイントシュートだが、チーム一の跳躍力を誇り、時にはそれを活かしてリバウンドを制するときもある。
「ちょっと細いな」
「しかし、こいつにはスピードがある。それもただ早いだけじゃない。相手の動きを予測しているかのような動きをしやがる。それが……なっ、矢島」
「いや、それは大袈裟だと思います」
「だけどさあ、カベと三回やって三回ともスティールしたとはちょっと思えないんだけどな……だって、この間まで中坊だったんだろ」
「まあ、すぐに分かることだ」
「……でっ、こっちが」
「あっ、鷹取と言います。バスケットは初めてです。よろしくお願いします」
「元気があっていいね。体格もガッチリしてるし、お前の将来はやっぱりセンターだな」
と言うと、早田はコートに向かった。日下部も、
「早く来いよ」
と言って、出て行った。
「日下部先輩、矢島のこと凄い買ってるんだよ」
三人だけになった用具室で、目(さっか)がぼそっと言った。
「だから、練習じゃなく本番だと思って最初から飛ばした方がいい」
期待されるのは有り難い。また、自分が目指すバスケットが通用するのか試してもみたい。しかし、技術・体力共について行けるのか、洋には不安の方がやはり圧倒的に大きかった。
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