第一章 高校バスケット部、入部 三 キーマン

 そうして、たわいない話の花を咲かせているうちに電車が来た。


 四人はボックスシートに座った。洋と鷹取、夏帆と由美はそれぞれ隣同士、そして洋と夏帆は窓際で向かい合わせになって座った。


 車窓(しゃそう)の風景がゆっくりと流れ出した。


 夏帆は洋を見た。夏帆には洋の顔から車窓の風景が溢れてくるように見えた。


「矢島は何を買いに行くの?」


「バスケットシューズ。それからTシャツとバスケットパンツ。あっ、バスケットソックスも買った方がいいな」


「さっき鷹取が言ってたけど、バスケットはずっとやってたの?」


「中学の時に」


「何でバスケットを始めたの?」


「体が弱かったら。とにかく、運動をしたかったんだよ」


「そうだね。矢島って色白いもんね」


「俺、時々言われるんだけど、そんなに白いかなあ?」


「肌も綺麗だし、女の子みたい」


「ええっ、やめてくれよ」


「羨ましいよ」


「俺は水家のようにちょっと日焼けしてる方が健康的でいいと思うけど……それって部活焼け?」


「うん。私テニスやってたから」


「チアリーダーじゃないんだ」


「チアはこれが初めて。だから、部活で使用するTシャツは全部その時のものなんだけど、持ってるのが白や黒ばかりで。それで買いに行くの」


「えっ、それじゃ駄目なの?」


「そうなの。それが駄目なの。先生が言うには、チアは見てる者に元気を与えるものなんだから、もっと派手なものを着なさいって言うの。そうすれば、自(おの)ずと元気に振る舞えるようになるからって。黒なんて絶対着ちゃ駄目だって」


「何で?」


「黒を着ると元気が無くなるんだって。だから、下着も派手なものを着なさいって言うのよ」


「それは、俺に言われても……」

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