第一章 高校バスケット部、入部 三 キーマン

 バスケット部への入部は決まったが、練習をするための準備はまだ整っていなかった。正式な練習への参加は明日(あした)の月曜日からとなった。


 藤本は洋に名刺を渡しておいた。知り合いが新潟市内でスポーツショップに勤務しているから、これを見せれば安くしてくれるはずだ。連絡も入れておく。


 洋は正昭にお願いして車で駅まで送ってもらうことにした。鷹取とは駅で待ち合わせである。


 入部届を出した日、洋は正昭にバスケットシューズを買うお金をお願いした。ただ、バスケットをしても構わないと正昭の承諾があったとは言え、お金を無心するのはさすがに抵抗を感じた。


 しかし、正昭は、


「入り用なのはシューズだけではないだろ」


 と言って、ポンと五万円ほど渡した。


 有り難い思いと申し訳ない思いが複雑に交差して、洋は何とも言えない気持ちになったが、しかし、これでただひとつはっきりした思いが洋の胸中に浮かび上がった。


「こんな大金をもらうついでに申し訳ないんですが、おじさんにもう一つお願いがあります」


「ほう、洋がそんなにふうに言ってくるとは……良いよ。言ってごらん」


「養子になるのは高校卒業後にしたいんです」

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