第一章 高校バスケット部、入部 二 監督の誘い

「ああっ、そうなんだ。多分もう少ししたら来ると思うんだけど」


「おい、矢島」


「何?」


「お前、今僕達って言ったよな?」


「まあ、色々と事情があって、俺もすることにした」


「お前、事情だらけだな。でも、何かホッとしたよ。やっぱり知ってる奴がいるのは助かる」


 洋もまたそう言われてホッとした。


 すると、


「今、矢島って言ったよね」


 と、男が洋に尋ねた。


「はい、そうです……あっ、先生だけじゃなく先輩ももう知ってるんですね」


「先輩?」


「日下部先輩が僕と1ON1をしたことです。先輩にも話されたんですよね」


「違うよ。俺も一年生だよ」


「えっ?」


「一年七組。目って言うんだよ」


「さっか?」


「目玉親父の目と書いて《さっか》と読むんだよ」


 唐突な話の流れに、洋はちょっと困惑した。しかし、それではっきりと分かったこともあった。凄い奴って絶対こいつのことだ。


「日下部さんから聞いたよ。良いフットワークしてるんだって」


「それは僕が決めることではありませんので」


「だから、俺も一年だって。敬語使うなよ」


 そう言われても、洋には同い年のプレーとはとても思えなかった。たった一発のダンクではあったが、あの一撃は間違いなく超高校レベルであることを洋は肌で感じた。ああ、これで万年補欠は確定だ。でも、それはそれでいい。バスケットが好きなことに変わりはない。


 しかし、洋がそんなことを思っている一方で、更なる衝撃を受けていたのが鷹取だった。鷹取の目にもあのダンクは強烈な一撃だった。そんなプレーの出来る男が洋に期待を抱いている。目の話しぶりから、鷹取はそう感じていた。今からバスケットを始める俺は、こんな奴らについて行けるのだろうか。


 と、その時だった。


「矢島、鷹取」


 二人は振り向いた。


 そこには、顧問の藤本が待ってたぞと言わんばかりの笑みをその顔に湛(たた)えて立っていた。

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