第一章 高校バスケット部、入部 二 監督の誘い
車が走り去るまで藤本を玄関で見送ると、三人は家の中に入り、信子が鍵を閉めた。洋は何も言わず二階へ上がろうとした。
「洋君、ちょっといいかな」
「はい?」
「話がある」
洋は胸の内で迷惑なことだと思いつつも、正昭の後を付いて行った。
客間に戻ると、三人ともさっきまで座っていた座布団に再び座った。
「それで、どうなんだい?君はバスケットをする気があるのかい?」
正昭がそう言った。隣では、信子が不安そうに洋を見つめている。
「バスケットはもうしません。今の僕には、現役で大学に合格するという目標があります。バスケットをする余裕なんてありません」
「君はバスケットが好きかい?」
この質問はちょっと洋の意表を衝(つ)いた。反論する何かを考えようとしたが、どうしても言葉が浮かんで来ない。
「信子から聞いたんだが、君は近くの空き地でドリブルの練習をしているそうじゃないか」
洋は思わず正昭を見た。
「ここに来てからまだ一月も経っていないけど、洋さん、夕方近くになると、何も言わずどこかに出掛けてたわよね。洋さんのことだから間違ったことはしていないと思っても、やっぱり気になって、一度だけ後を付けたことがあるの。私にはバスケットのことなんて分からないけど、ボールが手に吸い付いているように見えて、あれは本当にびっくりしたわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます