第一章 高校バスケット部、入部 二 監督の誘い
「先生もそれは言ってた。全国制覇って言うのは魅力だよな……矢島はやらないのか」
「俺は無理だよ。見ての通り背は低いし、もう高校で通用するレベルじゃない。でも、鷹取はそうじゃない。わざわざ自宅まで来て誘ってくれるんだから、前向きに考えた方がいいんじゃないかな」
「矢島はなんでバスケやろうと思ったの?」
「友達に誘われたから。でも、最初は柔道部に入ろうと思ったんだよ」
「えっ、そうなんだ?」
「俺、体が弱かったから、漠然(ばくぜん)と強くなりたいって思ってて。友達の兄貴が柔道部の主将をしてて、全く知らないって訳では無かったから。それで試合があるからって見に行ったんだけど、想像していたのとは全然違ってて……でも、体を動かしたい欲求はあったんだよな。だから、どうしようかなあって思ってて……ある日帰ろうと思って下駄箱の所で靴に履き替えていたら《矢島、俺これからバスケットをしに行くんだけど、お前も来ないかって》誘われて。そいつ加藤って言うんだけど、加藤はバスケットするんだあって思ったんだよ。それで次の日、同じように帰ろうと思って靴を履き替えていたら《矢島、俺これからバスケットをしに行くんだけど、お前も来ないかって》全く同じ状況で同じことを言われて……そいつ木下って言うんだけど、木下もするんだあっと思って……二人が誘ってくれたから、俺はバスケをしようと思ったんだ。どちらか一人だけだったら、やってなかったと思う」
「へえ、偶然って言うのか、何かやっぱり縁があったんだよ。俺、バスケやるよ。だから、矢島もやろうぜ」
「俺はもういい」
「なんで?レベルなんて気にすることないだろ」
「それだけじゃないんだよ。理由は言えないけど……まあ、家庭の事情ってやつだな」
「うーん。それを言われると、俺も色々とあったから……とにかく、俺はやってみるよ」
鷹取の顔に迷いは無かった。
鷹取は一年後きっと凄い選手になっている。何の根拠も無かったが、洋はそう直感した。
そろそろ授業も終わる頃である。
洋は現役で大学合格という目標を達成するために、熱心に先生の話を聞いていた。
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