第一章 高校バスケット部、入部 二 監督の誘い

 最前列で隣同士になった洋と健吾が仲良くなるきっかけとなったのは、健吾が洋に部活について色々と尋ねたからだった。今朝もまた一時限目の授業が始まるまで、健吾は洋に相談をしていた。


「昨日、また勧誘を受けてさあ」


「へえ。今度はどこ?」


「バスケット」


「あっ、そうなんだ」


「先輩からは、うちに来いよって軽く言われてただけなんだけど、昨日の夜、自宅に顧問の先生が直接来て……三者面談だよ」


「お店が終わってから?」


「いや、昨日は定休日」


「じゃあ、きっと事前に調べて行ったんだろうな。用意周到だな。で、どうするの?」


「これで、柔道、バレー、バスケットと三つだろ……矢島はバスケットをやってたんだよな」


「一応」


「バスケットってどんな感じ?」


「どんなって言われても……練習はきついよ。走り回ってたから」


「練習時間ってどのくらいあるの?」


「うちは毎日3時間はやってたかな。土日はもっとやってた」


「それって当たり前なの?」


「どうだろう?多分、他の学校と比べたら多かったんじゃないかな」


「真っ先に声を掛けてくれたのは嬉しいんだけど、俺、やっぱり柔道はやりたくないんだよ。痛いの嫌いだから」


「ふっ」


「何笑ってんだよ」


「そんな図体(ずうたい)してて、痛いって柄(がら)じゃないだろ」


「関係ねえだろ。痛いものは痛いんだよ」


「ちょっと聞いた話なんだけど、山並のバスケ部って全国レベルなんだって。だから、入部するんなら、日本一を目指せるのがいいんじゃないかな」

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