第一章 高校バスケット部、入部 二 監督の誘い
クラスが男ばかりだとむさ苦しくなるのは否(いな)めない。しかし、男女共学でしかも女子が多いとなれば、かなり雰囲気が変わってくる。
クラス分けがされてからまだ三日しか経っていないのに、一年二組は七クラスのうちで一番快活なクラスであるという特色が早くも現れていた。
正しく言えば、女子が多いせいであろう、全体的にどのクラスも快活であったが、一年二組はそれに加えてクラスの纏(まと)まりが非常に高かった。そのリーダー的存在が水家夏帆(みずやかほ)、洋がかわいいと言ったあの女子であった。
顔合わせとも言えるクラス分けの初日、出席番号順にまずは男子、それから女子という順番で自己紹介するよう先生から言われた。
洋は男子の最後であったので、何をどんなふうに言えば良いのか考える時間を持てたが、しかし、言いたくない事はあっても言いたい事は何もなかった。とにかく県外から来たのは黙っていよう。そう思った。
しかし、そんな洋の消極的な態度に対して、夏帆のそれは全く正反対であった。
「みんな、初めまして。私、水家夏帆と言います。福岡県から来ました。この学校に来た理由は全国的に有名な山並チアリーダー部に入るためです。夢は……いや、そうじゃなくて……私はチアリーダー部のみんなと一緒に必ず日本一になってみせます。よろしくお願いします」
彼女の溌剌(はつらつ)且つやり遂げるんだという強い意志を持った自己紹介は、クラスの雰囲気を爽やかな緊張感で包み込み、喚声に近いどよめきを呼び起こした。夏帆のリーダー的存在がまさに生まれた瞬間であった。
とは言え、やはり夏帆もまた緊張していたのだろう、席に着くと、ホッとした笑顔を覗かせた。
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