第46話 明徳の乱
元中八年(一三九一年)に入ると、京の室町
この年の桜も散った三月初め、頼之の復帰に
「御所様(義満)、
ささやかな駆け引きでもあった。決意を秘めた
「そうか、
引き留める様子をいっさい見せない義満に、
その斯波
三月十二日、ついに
三月二十九日、その照禅が亡くなる。八十三歳の高齢であった。義満は、身内のように接してきた
そして、翌四月三日、
「兄者(正儀)、何かあったのか」
「摂津守護の細川頼元殿が幕府
「やはり、九郎(楠木正秀)が申していた通り、常久殿(細川頼之)は表に出ることを
「なあに、表に出ぬだけで、実質的な
「それで、兄者(正儀)はいつ、常久殿に会われるのか」
「
そうは言うものの、正儀は一日千秋の思いでこの時を待っていた。正顕も、そんな兄の気持ちをよくわかっていた。
「兄者、細川殿は信用に足る男とは思うが、やはり幕府の者じゃ。どこで会うことになるかは知らぬが、くれぐれも油断召さらぬように」
「うむ、四郎の言葉、しかと肝に銘じておこう」
「叔父上(正顕)、それがしも付いております。腕の立つものも連れて参りますので、どうか御安堵くだされ」
頼もしくなった正信の言葉に、正顕も頬を緩めて頷いた。
正儀が細川頼之と会ったのは、上洛が一段落した翌五月のことである。
待ち受けていたのは頼之と、その弟で幕府
館の外に設けられた
「常久殿(頼之)、
二人が会うのは、頼之が父、頼春の三十三回忌法要で上洛した時以来である。すでに七年が経つ。正儀は、胸の奥から熱いものが込み上げていた。
感慨深げに、頼之も応じる。
「正儀殿、長らくお待たせし、まことにすまなかった。されど、南主(後亀山天皇)を御支えし、よくぞ、持ちこたえられましたな」
再会を、頼之も心から喜んでいた。
正儀が、隣の頼元にも目を配る。
「
「いやいや、兄(頼之)が表に立つのをためらったので、それがしは単なる身代わりでございますよ」
照れ笑いを浮かべた頼元は、頼之の歳の離れた弟で、子のない頼之が養子としていた。頼之が
「正儀殿は、
頼元の言葉に他意はないと思われるが、没落した南朝の中での
「正直、この時を待っておりました。朝廷(南朝)はそれがしが取り
「正儀殿、わかっております。御所様(義満)の機嫌のよい時を見計らって、それがしから奏上致しましょう」
しかし、すかさず頼元が頼之に釘を差す。
「兄上(頼之)、その前に、我らはやらねばならぬことがある。正儀殿には悪いが、こちらの方が先であろう」
「先と申されるのは……」
小首を傾げた正儀に、頼之は一旦、頼元に目をやってから話し始める。
「正儀殿、ここだけの話であるが……」
「兄上(頼之)っ」
口を開いた頼之を、頼元が慌てて止めた。
「頼元、よいのじゃ。正儀殿はすでに見抜いておろう。山名のことじゃ」
「やはり、山名氏清を討つのでございますな。氏清を
正儀の応えに、頼之は満足げに頷いた。
一方、頼元は唖然とする。
「やはり、正儀殿は、兄(頼之)にも劣らぬ知将でございますな。されど、このことは、貴殿らの胸のうちにお仕舞いください」
頼元は、後ろで聞いていた
すると、正信が身を乗り出す。
「して、それはいつ頃」
「いつというのはさすがにお答えすることはできませぬが、和睦の交渉は、これが終わってからになりましょう。なあ兄上」
「正儀殿、すまぬが、ここは頼元の言う通り。先に和睦交渉をはじめれば、必ずや山名氏清はこれに反対して、
「わかりました。あともう少しのところまで来て、焦っても致し方ありませぬ。山名を討伐し、
この日の会見はここまでで、和睦交渉が始まるまでは、時折、顔を合わせようということで決着した。
ここは
すでに寺の周辺は幕府の影響下にあったが、細川頼元が幕府
楠木の菩提寺でもある観心寺には、父、楠木正成の首塚がある。さらに後村上天皇の陵墓である
「父上、遅うなってしまいましたが、ようやく、和睦の交渉が始まろうとしております。君臣和睦の実現のため、お力添えくだされ」
その時、正儀は、背中に人の気配を感じる。
「父上……」
思わず振り向いたが、そこには誰も居なかった。正儀は確かに、父の視線と息遣いを背中に感じていた。
八月二十一日、正儀は細川頼之・頼元兄弟に会うため、再び
この度は、津田正信の他に、楠木正秀をも連れ立っていた。
「これは池田
「常久殿(頼之)、その節はお世話になり申した」
再会を喜ぶ頼之に、正秀も笑みを浮かべて応じた。池田
「正儀殿。南主様(後亀山天皇)の御機嫌はいかがでございますか」
「常久殿が幕政に復帰され、頼元殿が
その説明に、頼之は何度も頷いた。
「これも正儀殿が和睦を諦めず、南主様(後亀山天皇)に説いていただいたおかげじゃ。それがしも正儀殿に誠意をお見せしたいと存じる。赤坂や
「本当にございますか」
正信が頼之の言葉に驚いて声を上げた。
すでに、将軍、足利義満に上奏して、赤坂など楠木ゆかりの地から山名の軍勢を撤退させていた。さらに畠山の軍勢が進軍して再び進駐しないよう、
「和睦が整えば、河内の守護は楠木殿じゃ。今、東条から兵を引いたとて、幕府にとってどうということはござらん」
「もう、山名・畠山の兵は引いておるはずじゃ。
驚く正儀の表情を見て、頼之と頼元がそれぞれ言葉を足した。
感慨深げに目を閉じる正儀の
明けて八月二十二日、
一行は、久方ぶりに
楠木館は山名氏清に火を放たれて、灰塵に帰していた。感傷的に館跡で立ち尽くす津田正信の肩に、正儀が手を置く。
「館はまた建てればよい。そうすれば、元のままじゃ」
そう声を掛けると、ここに馬を留めたまま、桐山の楠木本城(上赤坂城)へと足を向けた。
その頃、正儀ら一行を追って、馬に乗った一隊が迫っていた。およそ五十人が、
正儀らは赤坂城(上赤坂城)に入った。
山名氏清に焼き討ちされた本丸(主郭)の館は、炭化した柱が支える天井を無くし、寒々と空に突き出している。わずかに二の丸(二郭)の館が、一部を燃やしただけで、辛うじて形を留めていた。
城の
「父上、二の丸以外は、全て燃え落ちております」
「そうか……」
言葉少なに、正儀が二の丸(二郭)の館に入ろうとした時である。
―― ひひぃん ――
微かな馬の
「桐山の麓からじゃ」
「これは……一騎や二騎ではないぞ」
二人の顔が青ざめた。
「残軍が
次の言葉を正儀は飲み込んだ。
そうしているうちに武装した一団が、無人の
「九郎(正秀)、尾根の抜け道を通って千早へ、小太郎(楠木正勝)へ知らせるのじゃ」
「さ、されど……」
「何をしておる。早う行け」
正秀に向けて正儀が怒鳴った。だが、正秀は正儀のことを思って
「されど、父上(正儀)や六郎兄上(正信)はどうされるのですか。この数では……」
「わしらも生きるために言うておるのじゃ。早う行け」
正儀の言葉に、正信も正秀の目を見て頷く、
「早く兵を連れて戻ってくるのじゃ。それまで、我らは息を潜めて隠れておる」
「は、はい、六郎兄上(正信)。すぐに兵を連れて戻って来ます」
正秀は立ち上がってその場を後にした。
赤坂城を裏から抜け出して、一心不乱に尾根伝いに千早城へと続く山道に出る。後に振り返ると、館に火の手が上がっていた。
「ご、御無事で」
正秀は千早城への道を急いだ。
正儀らは、敵の注意を引き付けるために、燃え残った二の丸(二郭)の館に火を放っていた。正秀を無事に逃がすためである。
「父上、早く、こっちです」
正信に
一団の頭と
「楠木正儀殿とお見受け致す」
「くそ、どこの手の者じゃ」
そう言って、正信が正儀を庇うように立ち塞がる。そして、睨みを効かせながら、ゆっくりと刀を抜いた。
武士団の頭は、正信の問いには応じず、正儀に視線を合わす。
「お
これに、楠木の郎党たちも刀を抜き、正儀と正信を逃がそうと、敵兵に切り込んだ。
「大殿(正儀)、六郎様(正信)、今のうちに早くお逃げください」
「すまぬ」
一人の郎党の呼びかけに正信が応じ、
正儀は津田正信とともに山道に入る。必死で敵を撒こうと、道なき道を突き進んだ。だが、
「おのれ、返り討ちにしてくれよう」
抜刀した正信は、正儀を背にして二人の兵に切りかかった。
覚悟を決めて、正儀も静かに刀を抜く。
「どこの兵か知らぬが、わしはまだ、死ぬわけにはいかぬのだ。南北合一を実現するまでは」
敵兵の振り下ろす刀を、正儀は自らの刀で受け止めた。力で押さずに後ろに引いて相手の刀を払う。そして、すかさず、敵の侍の胸に刀を突き当てた。敵兵は、血しぶきを上げて仰向けに倒れた。
敵二人を切り倒した正信が、正儀を探してあたりを見回した。すると、草むらに潜んで正儀を弓矢で狙う敵兵の姿が目に入る。
「父上、危ない」
―― びゅん、ざば ――
正信の言葉も空しく、矢が正儀の太腿に突き刺さった。正信は素早く、矢が放たれた方向に走り、次の矢を射ろうと慌てる敵兵に刃を突き立てる。
「父上」
駆け寄る正信に対し、その場に
「ううっ」
正儀の口から、低い呻き声が漏れた。正信が傷口を縛ると、大きく息をしながらも、正信の肩を借りて、片足で立ち上がる。
「少しでも、遠くへ逃げるのじゃ」
正儀は正信に支えられ、山の奥へと進んだ。
楠木正秀が、楠木正勝・正元の兄たちと、兵百人を連れて赤坂城に戻ってきた時には、すでに二の丸(二郭)の館は燃え落ち、敵の姿は消えていた。
「父上(正儀)……」
焼け落ちた館を前に、正秀は茫然と立ち尽くした。
「父上、父上、どこじゃ」
「御無事なら声を上げてくれ」
正勝と正元は祈るように、城のあちらこちらを探した。
燃え落ちた館の裏手に、数人の楠木の兵と、十数人の敵兵が血を流して倒れていた。正元が駆け寄り、一人の郎党の首に手を当てる。
「おい、しっかりせよ」
脈はない。正元は正勝に向かって静かに首を横に振った。
顔を強張らせて、正勝が立ちすくむ。
「父上を逃がそうと、切り合いになったのか……」
正元は息絶えた兵に手を合わせてから、上向きに寝かせてやる。
「ここには、父上と六郎兄者(津田正信)の姿はないな……」
「小太郎兄上(正勝)、小次郎兄上(正元)、それがしは山の中を探して参ります」
正秀は兵たちを連れて山の中に入っていった。
しゃがみ込んだまま、正元が拳で地面を叩く。
「くそ、すでに敵は去ったのか……いったいどこの者じゃ。少人数を一軍で襲うとは卑怯な奴らめ。何が目的なのじゃ」
そう言うと、悔しそうに顔を上げた。
この後、正勝や正元も山の中に入るが、なかなか見つけることはできなかった。
日が暮れようとした時のことであった。
「
それは、正秀の声であった。正勝と正元は、正秀の声の方角へと急いだ。
そこには、津田正信に抱えられ、息絶え絶えの正儀の姿があった。
正勝と正元が正儀の顔を覗き込む。
「父上」
「小太郎と……小次郎か……九郎(正秀)までも……騒がしいのう……どうした」
たくさんの血を流した正儀は、意識がもうろうとしていた。
正信が正儀に語りかける。
「父上、もう大丈夫じゃ。一緒に参ろう」
「参る……京へか……ああ、そうか……南北合一は……成ったか」
正儀の口から出た意外な言葉に、正勝と正元は顔を見合わせた。
「父上、お気を確かに。ここは……」
声をかける正秀を、正勝が手で制する。
「父上、南北合一は成りましたぞ。
「そうか……見たかったな……さぞ、立派な行列で……あったろう」
そう言って、正儀は乾いた瞳を閉じた。
かすむ意識の中で、正儀は幼き日の記憶を取り戻していた。
次兄の
長兄の
顔を上げると虎夜刃丸を抱いた母、南江久子の慈愛に満ちた顔がある。そして、その隣には虎夜刃丸を覗き込む父、楠木正成の顔があった。
『虎夜刃丸、よくぞ、南北合一を成し遂げた』
「父上……
正儀の最後の言葉であった。
元中八年(一三九一年)八月二十二日。楠木正儀は、南北朝の合一を目前にして、六十二歳の生涯を終えた。
この時、金剛山の国見城に入っていた楠木正顕は、この事変を知ると、ただちに息子の
正顕は、広間に戸板ごと運び込まれた正儀の遺体にすがり付く。
「兄者(正儀)……兄者……」
呼びかけに応じない正儀を前にして呆然と座り込んだ。正顕にとって正儀は、たった一人の兄であり、生きる指標であった。
正勝の嫡男、金剛丸が目を赤くして息をしゃくり上げる。菱江
次男の楠木正元は、怒りで肩を震わせながら顔を上げる。
「やったのは山名か、畠山か。わしが軍を率いて護衛しておればこのようなことにはならなかった」
「父上を邪魔だと思う者は他にもおる。和睦を欲しない者たちじゃ。それは朝廷(南朝)の中にもな。
唇を噛んだ正勝が、ぎゅっと拳を握り締める。悔やんでも、悔やみきれなかった。
正儀の亡骸は千早城の奥、金剛山への登り口に葬られた。
その夜、正勝は一人、
「父上……それがしなど、まだまだでしょうな」
正勝は、正儀から譲り受けた
京にある細川管領家(
「どうした、三郎(頼元)。何かあったか」
兄の前に、頼元が蒼い顔をして腰を下ろす。
「あ、兄上(頼之)、
突然のことに、頼之は我が耳を疑う。
「何、正儀殿が……本当か」
「千早城の楠木右馬守(正勝)殿より、密使が使わされたとのこと」
「なぜ、そのようなことに……襲ったのは誰じゃ。山名か、畠山か」
思わず頼之は立ち上がり、頼元の両肩を揺さぶった。その剣幕に頼元は驚きながらも、わからぬと首を横に振った。
「何という事じゃ。幕府の武将がやったとすれば、南主(後亀山天皇)との和睦の道が、また閉ざされる」
頭を抱えて座り込む頼之を前にして、頼元も肩を落とす。
「南北合一も、目前だっただけに、正儀殿も、さぞ、無念であったことでしょう」
「正儀殿、すまぬ。そなたに、南北合一を見せてやることができなんだ。もっと早く、わしが幕政に戻っておれば、そなたの夢を叶えてやれたのに……」
悲壮な顔つきで、頼之は口を
九月、
正儀の死は、南朝に大きな動揺を与えていた。正顕は、関白左大臣の二条
沈痛な表情で
「伊予守(楠木正顕)よ、千早城の様子はどうじゃ」
「はっ。皆、兄(正儀)の死を受け入れられず、城の中は静まり返ったようです」
「さもあらん。麿もそうじゃ。
実為と正儀は、公家と武家を越えて、盟友といえる
その死を
「それで、
「はっ。いまだに……」
険しい表情で
「実は、九州の
「
相次ぐ凶報に、正顕は言葉を失った。
右大臣の吉田
「
「はっ、承知つかまつりました。それがし如きに兄の代わりができるとは思えませぬが、それがしができることで
兄、正儀の意思を、正顕は継ぐ決心を固めた。
幕政に復帰して実権を得た細川頼之は、かつて、正儀にも打ち明けた山名
十月、手はじめに、山名惣家の山名
これに激怒したのは、将軍の
翌十一月、楠木正顕は内大臣の阿野
さっそく
「伊予守(正顕)、山名
「はい、
正顕の元には、服部
「その山名氏清が、我らに対して和睦を申し入れ、討幕の
「確かに山名氏清の兵力は
その言葉に、関白左大臣の二条
「山名でも勝てぬか」
「
これに、
「麿も伊予守(正顕)の申すこと、最もじゃと思う。御一同、いかがか」
「では、山名の使者にはそのように伝えよう。御一同、よろしいな」
「いや、お待ちくだされ」
口を挟んだのは、意外にも当人の正顕である。
「山名の使者にはすぐには答えず、よくよく考えると伝えておいてはいかがかと存じます。そして、
関白の
「ほう、まるで
「
「死せる孔明、生ける
挙兵を決めた山名氏清は、紀伊の府中にある守護館に、自ら足を運んでいた。兄で紀伊守護の山名
「頼む。兄者もともに旗を上げてくれぬか」
懇願する氏清に、
「駄目じゃ。考え直すのじゃ。お前が反乱の
「山名が幕府を開く絶好の機会ではないか」
「
「負けるとは限らん。
「何……早まったことを」
弟の言葉に、
冷静な
「我らを見捨てるというのか。兄者は一族の
「ううむ……」
こうして紀伊勢の援軍を得た氏清は和泉に兵を挙げた。しかし、氏清が期待した南朝の
山名氏清が兵を挙げたという知らせは、すぐに花の御所にも届いた。将軍、足利義満の
「将軍の威厳を
「当然じゃ」
「いや、山名氏清は、
「万が一、幕府の軍勢が敗れることあらば、それこそ、征夷大将軍の威光が傷つくというもの」
頼之の考えとは逆に、氏清および山名一族の勇猛振りを恐れて和睦を望む声も少なくなかった。軍議は討伐と和睦に分かれ、紛糾した。
「ここは、御所様(義満)のお考えを聞こうではないか」
軍議が紛糾する中で、声を上げたのは
「山名氏清の欲するところは天下じゃ。ここで山名と和睦をしても、またぞろ争いが生じることは明白。遅かれ早かれ討伐せねばならぬ……」
義満の腹は
「……しからば、当家の運と山名の運とを、天の
威厳を備えた将軍の決断に、異議を訴える将はいなかった。義満は、自ら将軍直轄の
十二月三十日、山名氏清と甥で娘婿の山名
若くて恐れを知らぬ
一方、猛勇、氏清の軍勢は、二条大宮付近で甥の山名
「者ども、山名の強さを、思う存分、見せてやるのじゃ」
大軍をものともせずに互して戦う氏清に対して、義満は、新たに若狭守護の
すると、多勢に無勢、劣勢に
「
「
名刀、
その
一方、山名氏清の兄、山名
この山名氏の一連の騒乱は、時の北朝の元号から『明徳の乱』と呼ばれた。
山名氏清の敗北は、千早城の楠木正勝にも思わぬ余波をもたらす。幕府に討たれた山名の残党が京から南河内に敗走し、千早城に助けを求めたからであった。
四の丸(四郭)の櫓から、山名勢の様子を見てきた楠木正秀が、本丸(主郭)の館に戻る。
「小太郎兄上(正勝)、山名の敗軍はおよそ五百騎。助けを求めて北の麓に留まっております」
「
棟梁、正勝の
「すぐに、幕府の追討軍が来るであろう。我らが山名を助ければ、勢いに乗じてこの城も攻められかねん。小次郎(正元)、ただちに追い返すのじゃ」
「承知した。兄者(正勝)」
ただちに正元は、山名の兵がよく見える四の丸(四郭)に向かった。そして、
「山名の功名心と野心がために、我らは多くの一族を失った。我らに山名を助ける
そう言って正元が手を上げると、
山名の敗軍を率いる一人の将が進み出る。
「お待ちあれ。我らは南主(後亀山天皇)の元で、我が主の
山名の将が言い終わらぬうち、正元の
「今度は地面ではないぞ」
正元が手を上げると楠木の兵たちが、きりきりと再び弓を引いた。山名の兵はじりじり
結局、楠木にも追い返された山名氏清の残党は、追撃してきた幕府の河内
明けて元中九年(一三九二年)二月、将軍、足利義満と細川頼之は、山名氏清の兄で紀伊守護の山名
結局、
後日のこと、
大野城が落城した翌日、
このとき三十五歳の義満は、頼之に向かって、満足そうな笑みを見せる。
「
「うまくことが運び、この常久も安堵しております」
そう言った後、頼之は緩めた頬を引き締める。
「御所様(義満)、山名討伐も終り、幕府の懸案の一つがなくなりました。いよいよ、南主(後亀山天皇)との和睦を進め、
南朝との交渉を、頼之は並々ならぬ意気込みで奏上した。
「常久、南主との和睦の前に、もう一つやるべきことがある。和睦の交渉はその後じゃ」
思わぬ義満の応えに、頼之は首をひねる。
「はて、何でございましょうや」
「千早城を落とし、楠木を滅ぼすのじゃ」
「ご、御所様、そ、それは……」
頼之は耳を疑った。その驚く顔を見て、義満がにやりと笑う。
「楠木は南主の守護神じゃ。楠木の力を削ぎ、南主を丸裸にしてこそ、和睦の交渉はうまくいくというものよ」
その言葉に、頼之ははたと息を
「もしや、楠木正儀が討たれたというのも……」
「すまん……兄上」
反応したのは弟の頼元であった。頼元に呆然とした顔を向ける頼之に、眉一つ動かすことなく義満が応じる。
「
問いかけに、頼之は言葉を失った。
「……だから
苦渋に満ちた表情を、頼之は義満に見せる。
「御所様、それは断じてなりませぬ。楠木を味方に付けよというのが先代、
「歳をとったな、常久。はたして楠木が本当に
義満は冷徹であった。頼之も義満の言うことはよくわかっていた。むしろ、予想以上の義満の成長に、満足する面もあった。
しかし、頼之は正儀と交わした約束を、何としても守らなければならないと思う。
「されど、楠木を討伐すれば、南主は再び和睦を拒むでしょう」
「そうであろうか。和睦を欲しておるのは、南主だけではなかろう。
困窮がため、京に戻ることを欲している
「楠木をそのままにして和睦をすれば、そなたは河内の
「もはや御所様をお引き留めはできませぬ。ただ一つだけ、それがしの願いをお聞き入れいただけませぬか。棟梁の楠木正勝が大人しく千早城を明け渡し、畠山の下で
「
最後に義満は、父とも慕う頼之の願いを聞き入れた。
京の細川屋敷に戻った頼之は、楠木正勝への書状を
「これを、千早城の楠木正勝へ届けてくれ」
書状を受け取ろうと頼元が手を差し出した時、頼之は書状を手から落としてその場に倒れた。
「兄上、どうなされた。兄上、お気を確かに……」
その場に伏せるように倒れた兄を、頼元が抱きかかえ、額に掌をあてる。
「……ひどい熱じゃ。誰か、誰かある」
家臣たちによって寝所に運ばれた頼之は、この日から、病床に
春先とはいえ、
千早城に集まったのは、棟梁の楠木正勝を筆頭に舎弟の正元と正秀、津田正信。正勝の嫡男の金剛丸。さらに叔父、楠木正顕と息子の
特に、
その
墓の前で、
「父上(正儀)、南北合一を目の前にして、なぜ、このようなことに」
「叔母上(
照子はそんな
涙を流して手を合わせる妹と娘を、正勝は後ろから見守ることしかできなかった。
千早城の楠木正勝の元に、細川頼之の書状が届いたのは、その翌日のことである。書状は、楠木一党が千早城を明け渡し、幕府の軍門に降ることを求めるものであった。
驚いた正勝は、正儀の墓参りで千早城に集まっていた一族一門の男たちと、菱江庄次郎
「常久(細川頼之)め、父上(正儀)に和睦の話をちらつかせ、我らをたぶらかしておったのか」
一族を束ねる正勝が、苦々しい表情を見せる。
「これではっきりした。父上(正儀)を襲ったのは、山名や畠山、まして朝廷(南朝)の
「小太郎兄者(正勝)、それでどうするのじゃ。我らが城を明け渡さなければ、二万の大軍を送るとある」
舎弟の津田正信が正勝に詰め寄った。
興奮冷めやらぬ正元が、正勝に代わる。
「どうもこうもなかろう。父上のため、
「小次郎(正元)、落ち着くのじゃ……」
口を挟んだのは、正儀亡き後の一族の長老、楠木正顕である。
「……相手は二万、我らは五百にも満たんのじゃぞ。いくら難攻不落の千早城とて、今の戦は元弘の折りとは違う。我らの策も仕掛も幕府はよう知っておるのじゃ」
「されど叔父上、勝てないまでも、負けぬ戦はできようかと……」
「小次郎(正元)、考え違いするでない。そなたたちの祖父、正成は、城を守り抜くことで鎌倉の幕府に反旗を
冷静な叔父の分析に、正元は悔しそうな顔で口を
しばらく沈黙していた正勝が、顔を上げる。
「叔父上(正顕)、それでもそれがしは城に残って戦いたいと存ずる。さすがに敵は二万の大軍。叔父上の言われる通り負けるであろう。もう、勝つための戦ではない。楠木の証を残すための戦じゃ。棟梁としては失格じゃ。命が惜しくないものだけ残ってくれればよい」
「わしは兄者に同意じゃ」
「わしも小太郎兄上とともに戦う」
正勝の言葉に、正元と正秀が同意した。
「もちろん、わしとて異存はない。我が兄弟たちも幕府との戦で命を落とした。おめおめとわしだけ生き永らえようものか」
和田正頼が意を決すると、息子の
正顕の息子、
「父上、我らとて楠木正成の孫です。小太郎殿の気持ちはよくわかります。我らの兵を全てここに移し、楠木の最後の戦を見せたく存じます」
「親不孝をお許しくだされ」
「うむ、これで決まりじゃな。父上(正儀)にはあの世で怒られるであろうがのう」
正信の言葉は、緊張していた一同に笑いを誘った。
清々とした顔で正勝は、一同を見回す。
「皆、申し訳ない。わしの我がままに付き合わせてしもうた」
そんな正勝に一同は口元を緩めた。
しかし、ただ一人、正顕は苦悩の表情を浮かべていた。兄、正儀が生きていれば、何と言ったであろうかと自問自答していた。
そんな正顕に、正勝が頭を下げる。
「叔父上、申し訳ありませぬ」
「わしが何を言っても無駄なようじゃ。お前たちの好きにするがよい。されど、決して
「承知しました。叔父上には
正勝の頼みに、正顕は静かに頷いた。
その夜、提灯の灯りを頼りに、楠木正勝は千早城の裏手、金剛山への登り口にある父、正儀の墓に参り、手を合わせた。そして、
『上達したようじゃな』
どこからともなく正儀の声が聞こえる。
「ち、父上……」
『討死するつもりなのか』
「そ、それは……」
『楠木が居なくなれば、誰が帝(後亀山天皇)を御支えするのじゃ。ここで討死してはいかん。生き延びるのじゃ』
「本当はそれがしもわかっております。されど、それがしは楠木正成の孫。七度生まれ変わっても朝敵を滅ぼすのが我らの勤め」
『
「父上、何を今更。わかりきったことでございます」
『小太郎、本当に目の前に見えている者が朝敵なのか。幕府を滅ぼせば帝を御救いすることができるのか。幕府であろうが、朝廷であろうが、それは単なる器にしか過ぎぬ。朝敵とは人の心の中に
「父上……」
そう呼び掛けたところで、正勝は我に返る。
「……夢であったか」
しかし、その時、微かに映える提灯の灯りに気づく。その灯りは正勝の方へと迫っていた。
「誰じゃ」
「私めにございます」
声の主は、娘の照子であった。
「この夜更けに、そのような身なりの女が……危ないではないか」
その姿は、小袖の上に
「父上が、館を出ていかれるのを見て、きっとここだと思うて参りました。すると笛の音色が……忘れないようにもう一度、父上の笛を聞きとう存じます。私のために吹いていただけませぬか」
娘、照子の頼みに正勝は頷き、もう一度、
照子が思わず涙を
「父上、これが最後ではありませぬな。必ず生きて、もう一度、笛を聞かせてくだされ」
その肩に、正勝はそっと手をやる。
「約束しよう。さ、明日は
娘から目を
二月二十六日、千早城の明け渡しを拒んだ楠木正勝は、幕府
千早城では楠木一族と和田党ら総勢五百人が、
本丸の
「殿(正勝)、全ての登り口に兵を配置致しました」
「うむ、ご苦労であった」
祖父、楠木正成の元弘の戦さながらに、正勝は城の守りを固めた。
「朝敵め、攻めてくるがよい。目にもの見せてやろう」
その隣では、舎弟の楠木正元が掌を組んで指を鳴らした。
一方、千早城を取り囲んだ幕府軍は、陣幕を張り、楠木討伐の総大将、畠山基国を囲んで軍議を開いていた。
「畠山殿、難攻不落の千早城、いかに攻めますか」
「大内殿は楠木と戦ったことがございませなんだな。いくら千早城が鉄壁とはいえ、幾度も戦っておれば、攻め方もわかって参ります。ここは我らに任せて、城の側面から睨みを効かせていただきたい」
基国は和泉・紀伊と、河内の隣国二ヵ国を手に入れた義弘を警戒していた。千早城は必ずや己の手で落とし、領国の河内へ、大内が付け入る隙をなくそうとした。
「では、畠山殿のお手並みを拝見致そう」
その思惑に気づいた義弘は、
幕府軍が千早城を取り囲んで幾日か経過する。いまだ睨み合いが続いていた。
千早城の楠木軍は、幕府軍が城に攻め上がってくるのをひたすら待っていた。楠木の戦は、攻めくる敵を
「小太郎兄上(楠木正勝)、敵は動こうとしませんな」
「難攻不落の千早城。
そう言って、正勝は正秀の肩を軽く叩き、落ち着くように
「どれ、わしが幕府を動かしてやろう」
そんな正秀の様子を見て、正元が軽口を叩いた。
「小次郎兄上(正元)、幕府を動かすとは、いったいどのように」
「そうじゃな、九郎(正秀)も着いてくるか」
きょとんとする正秀を、正元は手で招いた。正勝が、そんな二人の様子に顔をしかめる。
「小次郎、九郎に無理をさせるでない」
「いえ、それがしも連れて行ってくだされ」
正秀は正勝の許しを得て、正元と一緒に手勢百人を率いて、本丸(主郭)から麓に近い四の丸(四郭)へと降りていった。
四の丸に入った正元たちは、麓の幕府軍に向かって、鐘や
「何じゃ、畠山の兵は腰抜けばかりか」
「戦ができぬなら、帰って畠でも耕しておればよかろう」
「何ほどの、豆をまきてか畠山、日本の国をば、味噌になすらん」
「わっはは、それはよい。わっはは」
正秀らは、麓に向けて挑発を続けた。
楠木の兵たちにからかわれた畠山の兵は、なにをっと
幾日が経ち、不満がうっ積する畠山の兵らを解き放ったのは、千早城の背後、金剛山に立ち上った一筋の
「者ども、総掛かりじゃ」
総大将の基国の
この日も楠木正元と楠木正秀は、四の丸(四郭)に詰めていた。
「小次郎兄上、畠山の兵が動きましたぞ」
「よし、掛かった。いったん二の丸(二郭)に戻り、返り討ちにしてくれよう」
自分たちの行動が幕府軍を動かしたと誤解する正元は、余裕を持ってこれをみていた。しかし、城の上では、恐ろしい事態が待ち受けていた。
畠山基国は一部の兵を
「小次郎兄者、こ、これはっ」
本丸に向かおうとした正秀は、上からも攻め寄せる畠山軍に仰天した。
「くそっ、上は兄者(正勝)に任せよう。我らは下の兵に当たるのじゃ」
正元は、麓から攻め上がる兵だけでも何とか追い払おうと、千早城自慢の防戦を試みる。だが、浮き足だった楠木の兵たちは、やみくもに、大石や丸太を落とすだけで、兵に当たらず
本丸は金剛山から攻め下った畠山の兵たちに
「和田和泉守(正頼)殿、御討死でございます」
衝撃の知らせであった。
劣勢の中、正頼は和田党を率い、背後の金剛山から攻めくる畠山軍に、果敢に討って出ていた。敵を千早城に侵入させまいと奮戦したが、多勢に無勢で力尽き、息子の和田
和田党の大将を討ち取った敵兵が、勢い付いて金剛山から迫った。そんな中、正勝は正元らを四の丸から呼び戻す。
「小次郎(楠木正元)、こうなっては致し方ない。今なら間に合う。千早城を棄てるぞ」
「何っ、
撤退を渋る正元の肩を、正勝が両手で揺さぶる。
「わしは父上(正儀)の声を聞いた。父上が生き延びよと申された。この戦、討死してはいかんと父上に
敵兵が迫る中で正勝が怒鳴った。その剣幕に、正元はたじろぐ。
「あ、兄者、いったいどうした。父上は亡くなったのじゃぞ」
「我らは生きて
兄の
意を決した
「殿、それに御舎弟殿。そうと決まれば、ここはそれがしに任せて、早く撤退を」
これに、正勝は一瞬、
「すまぬ、庄次郎(
正勝は忠儀を残し、撤退をはじめる。正元は釈然としない中、正秀や津田正信、楠木
続いて跡を追おうとする畠山勢の前に、忠儀はわずか郎党五十人で立ち塞がる。
「者ども、矢が尽きるまで敵を射るのじゃ」
忠儀は、木々に隠れるように郎党を配置して矢を放つ。少しでも畠山軍の追撃を遅らすため、果敢に戦った。だが、畠山軍は人数を厚くして、少しずつ押してくる。そして、忠儀らの矢が尽きるのを待って、刀で切り込んだ。
「者ども、一人でも畠山を討ち取れ」
声を張り上げる忠儀であったが、一人、また一人と楠木の郎党たちは討ち取られた。そして、ついには忠儀自身も力尽きた。
楠木正勝らは金剛山の山中を自らの足で大和五條へ向かって逃げた。畠山軍に得意の騎馬を使わせないためでもある。
その畠山の兵たちは、菱江忠儀らの決死の抵抗を平らげると、こちらも徒歩で楠木軍を追撃した。
千早峠を越え、五條に下る道に入ろうかというところ。正勝らは
「小太郎兄者、急がねば。小次郎(正元)はどこじゃ」
「九郎(正秀)・
「殿(正勝)、幕府の軍勢がそこまで来ております。立ち止まっている場合ではありませぬぞ」
数人の
しかし、負傷した兵を伴う正勝らの行軍は思うようにはいかない。正勝は咄嗟に判断する。
「ここで
敵を撹乱し、先に進んだ正元・正秀らを逃がすとともに、ここに居る一同が一緒に討ち取られないためでもあった。
「承知」
「承知した」
各隊を率いる正信と
棟梁の正勝も、
急に立ち止まった
「殿、敵が近くまで来ております……」
そう言って
「……我らが反対へと引き付けます。殿はこのままお進みくだされ」
「承知した。
目で正勝に応じた
兜と
「大丈夫か」
正勝は、傷を負って足を引きずる一人の郎党に肩を貸した。その時である。
「見つけたぞ、あの先じゃ。取り逃がすな」
背後から、敵兵の怒声が響いた。
肩を借りていた郎党が、慌てて正勝の手を振り払う。
「殿、早くお逃げくだされ」
「す、すまぬっ」
すぐに正勝は、草を
「一人逃げるぞ、追え」
十数人の畠山の兵が正勝を追おうとする。すると、楠木の郎党たちが力を振り絞って立ちはだかる。数は同数だが、楠木の兵たちは、皆、傷を負っていた。白刃を交えると、一人二人と討たれていく。数的有利に立った畠山の数名が、すかさず正勝の跡を追った。
草を
「くっ」
正勝も抜刀して、果敢に敵兵と刃を交えた。だが、谷川を背にして三方から囲まれる。
―― ざっ ――
正勝の目の前が赤く染まる。額から頬にかけて敵兵の刃を受けて血が
「小次郎……」
後を託すように正元の名を叫び、正勝はひざから崩れ落ちた。
千早落城の報は、早馬で京の細川管領家(
未だ細川頼之は病床にあった。目を閉じたまま深く呼吸を繰り返す頼之の枕元に、舎弟で
「兄上(頼之)、昨日、千早城が落ちました。楠木党の面々は城から落ちて行ったようですが、子細は不明です」
高熱でうなされる頼之に、その言葉が伝わったかどうか、頼元にはわからなかった。
意識が朦朧とする中、細川頼之は自分が馬に乗って揺られていることに気がつく。
「ここはどこじゃ」
そう言って後ろを振り返る。そこには大勢の武士や公家が馬に乗り、頼之の後に従っていた。
「この行列は……」
「
疑問を抱いた頼之に、馬に乗った隣の男が応じた。目をやると正儀が、
言われて後ろを凝視すると、屋根に
見事な
「そうか……二人で南北朝廷の騒乱を終わらせようと約束したのでございましたな」
その言葉に正儀はにっこりと微笑む。
「さ、ともに参りましょう」
正儀に
元中九年(一三九二年)三月二日、細川頼之が亡くなる。享年六十四歳。正儀が亡くなってから半年後のことであった。
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