主人公の日下部はどこにでもいる中学生だ。
ひねくれている、孤立している、特別なモノにあこがれている。
『こいつは本物だ――こいつは世の中の本質を見抜いている――俺の生涯の友人として相応しい人間は、神楽坂以外にありえない――』
ヒロインの神楽坂に出会ったとき、彼はそう心のうちにつぶやく。
この物語が、例えばバトルものだったり、伝奇ものだったり、
SFものだったりしたのなら、
彼女は異世界や非日常への案内人で、少年は新しい世界へと
(それこそ神楽坂という中間の存在を通して)
踏み込んでいくことになるのだろう。
――だが、この物語においてそれはない。
***
トクベツだとか、本当だとか、普通だとか。
これはそういう些細な
――けれど人類の滅亡よりも大きな問題を抱えた少年少女の物語だ。