第43話

 ゆっくりと眠り、橙孤からの報告なども聞き、身支度を済ませる。


 調子はしばらく戻らないだろうが、いつまでも寝ているわけにも行かないし、今日は大食いの海都も帰ってくる。


「冬弥様、ご無理はされませぬよう……」


 そうみんなが心配してくれるが、今からこの気になれていかないと本当に動けなくなってしまう。


「大丈夫です」


 部屋から出て土間へと行くと、栞が粥を持っていこうと思っていたと支度してくれているところだった。


「こちらで食べます。慣れていかないといけませんし。皆さんにはなんと?」


「疲れだろうと言っておきました」


「そうですか……頂きます」


 粥を食べながら、今日の夕方には海都が帰ってくるので、唐揚げなど沢山作っておかないとすぐに無くなると話、買出しに行かないとと少し文句を言う。


「昨日残りの魚を焼いてしまったので、もう鮭も鯖も無いんです」


「鯖……人数少なかったから足りたと思いますが。酒のあてにしようと思ってたんですよ。いいのが入っていればいいんですけどねぇ」


「はい。後はボードに夜のうちに皆さん書いてくださったので」と指を指すほうを見る。


「普段は適当なのに……参りました」


「気を使ってくれたのだと思います」


「昨夜は何にしたんです?」


「大したものは…… 朝も残りを玉子とじにしたんですけど、厚揚げの牛蒡すき焼きと鯖、ほうれん草のお浸し位で。朱狐さんが手伝ってくれたので助かりました」


 えへへと頭を掻いている朱狐に頑張りましたねとご褒美の揚げを渡して影に戻す。


「それまだ残ってます?」


「ありますけど」


「下さい」


「あ、すぐ温めます」


 ささがきにしたゴボウに椎茸、一口大に切った厚揚げに牛肉としらたき。

 うまい具合にすき焼き風に味付けされていて、ごぼうの食感がまた絶妙で美味しい。


 卵でとじたので、朝はみんなご飯にかけて食べそうだ。


「美味しいですね」


「ありがとうございます。絹さやがあれば彩も綺麗だったんですが、買い忘れてしまって」


「いえ、十分ですよ。また作ってください」


 食事を終えたあとみんなが起き出してきたので、朝餉の支度を手伝い、ゆっくりしてていいよとみんなに言われるので、無理はしませんよと切り返しておく。


 みんなが学校に行ってから、土間や板の間、部屋の前の廊下や水道など掃除をし、出してあったシーツや枕カバーなどを洗って干しているとすぐにお昼前になってしまう。


 栞が来てくれてまだ数日だが、良く気づき働いてくれるのでとても助かっているのも事実。


 普段は狐たちにさせるのだが、今はそれも儘ならないので一人でしていたらお昼をまたいでいたかもしれない。


 外に出してあるカゴに、必要なものをメモで入れておいてもらうので、トイレットペーパーやティッシュなど補充分を入れていき、雪翔が帰ってくるのを待つ。


「冬弥様、終わりましたけど買い物はどうされます?」


「栞さん、うどん屋さん行ったことあります?」


「いえ……食べたことはありますけど」


「これ、行きがけに賢司に貰ったんですよ。ショッピングモール内の割引券。1枚で5名様まで何ですけどねぇ、期限が今日までなんです」


「あら、本当。しっかりしてるのにおっちょこちょいなのかしら?」


「そういう所はありますね。なので隆弘の方が上に見える時がありますよ?」


 ただいま戻りましたと土間から帰ってきたので、すぐ用意してほしいと言い、水狐に送らせショッピングモールへと行く。


「あちらに似てませんか?」


「真似したと言ってましたしねぇ。雪翔、ここわかります?」と割引券を見せる。


 案内図を見て、こっちだと言う方について行くと、昼時にしてはすぐに通され席につくことが出来た。


「なんでも頼んでください」


「あ……今日のランチカツ丼セットだ」


 メニューを見ながら嬉しそうにいうので、雪翔はカツ丼セット。その横に春のうどんセットと書かれているものはたけのこごはんが付いてくると書いてあり、栞はそれに決めたようだ。


「冬弥さんは?」


「この蛤のセットと天ぷらで迷ってます……」


「珍しくないですか?迷うって」


「最近食べてませんでしたからねぇ。今日は夜皆さんいるので天ぷらにしましょう」


 蛤御膳に決めて店員を呼び注文する。


 来たのは豪華で、ランチの雪翔の方にはサラダやデザートにあんみつまで乗っている。


 みんなで食事を進めていると、通る人はカートいっぱいの買い物袋を乗せている。


「特売ですかねぇ……」


「食べたら行ってみます?」


「ええ。そう言えば来る時に売り出しの旗がたってませんでした?」


「それ多分、春だから新生活応援とかのと思うんですけど。夕方TVで宣伝してましたよ?」


「なら覗いていきましょうか」


 ゆっくりとお茶を飲んでから会計を済ませて人混みに紛れる。


「2階が多いみたいですね」


「服屋さんかな?」


「雪翔要るものは無いですか?」


「特にないです」


 ないというので食品売り場へと行くと、今度はガラガラだった。


「この差、凄いですね……目が回りそうでした」


「同じくです。さて、雪翔はカートとカゴ二つ持ってきてください」


「天ぷらの具材を見ていきましょうかねぇ」


 きのこ類に海老やカボチャ、ししとう等カゴに入れて大判の海苔と山芋を買う。ついでに納豆なども入れて、特売になっている魚や肉などもついでに買っていこうと店内を回る。


「玉子は流石に足りないでしょうねぇ……」と3パックカゴに入れて、野菜ジュースなども入れていく。


「かき揚げとかは?」


「揚げておいたら丼とかできますね。粉だけ追加で買いましょうか。ごぼうって残ってます?」


「あります。玉ねぎと人参も」


「天丼になってしまいそうですけど、みんな食べるでしょう」


 必要なものを買い、カートに全て乗せて店内を歩くと、ちょうど良さげな大鉢を見つける。


 衝動買いだが、焼き目がよく安いこともあり購入し、水狐に頼んで下宿に戻ってもらう。


「さて、仕込みましょうか」

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