第39話
先に食事を終えて、土間で捨てられるパックの容器を探し、冷蔵庫に入れてあった竹輪とチンゲン菜で塩炒めを作り、肉団子を解凍してケチャップソースで和える。
それを皿に入れてラップをし、冷蔵庫に置いておく。
それとは別に冷凍の温野菜ミックスを小皿に入れそれも冷蔵庫へ。
あとは明日の朝魚を焼いて卵焼きを作り、全部チンして詰めれば後はおにぎりを作るだけで済む。
よし、と席に戻り刺身をいくつか取って酒のあてにし、のんびりと飲むが、おにぎりはでかいの3つと言われ、鮭とおかかと梅でと更にリクエストされ、ため息をつく。
「あー、ついでなんだけど、俺明日からバイトがラストまでになっちゃって12時回ることが多くなりそうなんだけど」
「良いですけど、土間から入ってくださいね?」
「すいません、立て続けに宴会予約入っちゃったもんで」
「アルバイトとはいえお仕事なら仕方ないです。他には居ます?」
「俺はいつも通り。夕飯には間に合わないけど、21:00までには帰れるかな」
「僕は暫くは落ち着いてるので夕方には帰れます」
「皆さんボードに書いてくださいね?夕飯はいる人の分はラップしておきますから、いつもの様に洗っておいてください。後……海都、帰りは夕方になってますけど……」
「バスで行くから、混んでたら遅くなるって先生が言ってたよ」
「そうですか。怪我がないようにしておいてくださいね」
食後、大人組はまだ酒を飲んでいたのでそれに付き合い、22時を過ぎたところで二人に寝るように促す。
お休みと先に海都が部屋へ行き、雪翔は栞に何やらお願いをしている。
「どうかしました?」
「うちの狐達すっかり懐いちゃって、今日雪翔君と寝たいんですって」
「栞さんがいいなら構わないんじゃ無いですか?」
「でも……」
こっそりと部屋の結界のことを話して安心していいと言うと「今日だけ」とお許しが出たので、雪翔もおやすみなさいと部屋へと戻っていく。
「あ、どうです?そのお酒」
「とても飲みやすいですよ?一杯如何ですか?」
「じゃあ……」
飲むとほんのりと甘さがあり、鼻からはフルーツの良い香りが抜ける。
それをじーっと見ている三人に、何ですか?と聞くと、「やっぱり夫婦でしょ」とからかわれる。
「そう言えばさ、冬弥さんて幾つなの?」
「え?」
聞かれると思っていなかったので、年齢など考えてもいなかったとも言えず、見た目で30位だろうと思い、30ですと答えておく。
「前の下宿は親父さんがしてたの?」
途中で何回か狐と入れ替わって誤魔化してきたので、その通りだと答え、栞の年は23だと適当に言っておく。
「そういうあなた方にも浮いた話はありませんけど?」
「俺と隆弘は今はいない組。堀内さんが今いい感じの人がいるんだよね?」
「そうなんですか?」
「大学で見られてしまって……お付き合いとかしてないんですけどね。何度か食事を……」
「いいじゃないですか。どんな方なんですか?」
「実は教授の娘さんで……」
「な、玉の輿だし、出世街道まっしぐらじゃん」
「そんなにからかわないで下さいって。元々高校の後輩だっただけだし、彼女は事務の手伝いで来てるだけなので、これからのことは分からないです」
「へぇ」と栞と目を合わせると、軽く頷くので少し力を使い良い方へと行くように力を貸す。
あとは本人の努力次第だが、真面目で優しい堀内にはとてもいい話だと思うし、頑張ってきた分幸せになってもらいたかったのもある。
みんなお酒が進んでいるようだったので、無くなったものから片付け、洗っていく。
「いつも冬弥様がされてるんですか?」
「自分でさせますよ?今日は特別です」
その後賢司が空き瓶などを運んできてくれたので、机の上もスッキリと片付き、栞がテーブルを拭いてくれたので早く終わったが、珍しく飲まされた堀内が半分もう寝ている。
「部屋まで連れていってあげてください。なにごとも程々だといつと言ってますでしょう?」
「ごめんてば。堀内さーん、部屋行きますよー」
なぜか中年オヤジのように、大丈夫っすよ?立てます立てます等と変なことを言いながら立ち、フラフラっと歩いては、おっとっと!と言っているのを見て、今後たくさん飲ませるのはやめようと全員が心に誓っていた。
「さて、明日なんですけど……」
「はい」
「蛍をそのまま雪翔に貸してもらえますか?階段を作りたいですし」
「構いません」
「社への狐はどうします?」
「みなさんが張ってくれた結界がありますから、一日おきに交代させようかと。毎月10日に必ず来るご夫婦がいるので、その時は行きたいですけど」
「分かりました。朝は7時から朝食です。みんなの学校の時間に合わせてますので。学校が近いと言っても親御さんから預かってますので、規則正しくしてますが……大学生も授業がなくても起きてきますから、ボードで判断するしかないんですよねぇ」
「あら?明日は二人いないんですね?」
「夜ですか?」
「はい」
「賢司はバイト、隆弘も家庭教師の日ですね。海都は明日からいませんから、ちょっと食卓が寂しくなります」
「そうですね、今日の食べっぷりには驚きました」
「みなさんそう言いますよ?さ、今夜はもう休みましょうか」
「はい。おやすみなさいませ」
栞が部屋に行くのを確認してから自宅へと行き、まだまだ寒いが縁側で笹かまをつまみに少し飲む。
カコンと鹿威しの良い音が鳴り響き、月と酒を堪能してから横になり休む。
いつもと同じ時間に起き、お弁当の用意をして味噌汁を作っていると、珍しく海都が大きなカバンをぶら下げて板の間に出てきた。
「早いですねぇ」
「うん、遠足とかそういうのだけは早起きなんだよ」
「いつも起きてくださいよ。はい、お弁当です」
「ありがと。あのさ、バスの出発が8時だから早めに行きたいんだけど……」
「そうですね。遅れるよりいいですし。もう食べます?」
「いいの?」
「ええ、下宿屋は学校に合わせますから大丈夫ですよ」
目玉焼きを二つと、サラダにウインナーを焼いて、ご飯とお味噌汁をよそい、土間ではあるがテーブルで食事をしてもらう。
「おはようございます。海都君は早いんですね」
「うん、食べたらもう行かないと」
「楽しんできてくださいね」
「今から楽しみ!じゃぁ行ってきます」
行ってらっしゃいと見送ったあとみんなが起き出してきて、社の掃き掃除に行っていた雪翔も戻ってきたので、朝御飯にする。
「冬弥さん、俺講義が昼前だからもう一回寝るから」
「いいですけど、私は少しでかけるのでちゃんと起きてくださいよ?」
「うん。昨日の夜もぐっすり寝たはずなんだけど、まだ眠い」
「大分と日中は暖かくなってきましたしねぇ」
ササッと食べて食器を洗い終わった隆弘がおやすみと寝に行き、他はのんびりお茶を飲んでから行ってきますと学校に出ていってしまった。
「雪翔、宮司はいつしめ縄をするとか言ってませんでしたか?」
「まだ。運んだしめ縄に紐を通さないといけないとか言って、御輿の入ってるところに入れにいってました」
「なら、そろそろですねぇ。蛍出てきてください。雫もですよ」
「はい」
「雫は一度栞さんに戻ってください。蛍から見て鳥居はどう見えました?」
「あのぉ」と雪翔の後ろにかくれてしまう。
「蛍!ちゃんとお答えしなさい!」
「ほ、蛍から見たらとても高すぎます!」
「鳥居の上の鳥居がですか?」
「そうです。か、階段は作れますけど、高いの作るには、私とゆっきーとでは細いのしか無理、です」
「そんなに緊張しないでください。怒ってませんし、取って食おうなんて思ってませんから」
「冬弥さん、それ返って怖がらせちゃうかも」
「そうですか?」
「すいません。あまり他のお狐様になれていないので」
「構わないですよ。朱狐も昔はこんな感じでして、良く那智にいじめられてましたねぇ」
「あの、昨日の夜に話してたんですけど、色鉛筆でみんなで絵を描いてたんです」
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