第20話

 ハンバーグはかなり大きく焼いたので、積み重なってはいるが、その上にピザソースをぬり、チーズをたっぷりと掛け、ピーマン、マッシュルーム、玉ねぎを置いてオーブンに入れてチーズが溶けるまで温める。

 これでピザハンバーグの完成だ。


 1人前ずつならサラダを置いて完成なのだが、祝いでもあるし、大皿の方が慣れてもらうにはいいだろう。


 魚屋からの刺身も届き、一緒に持って来てくれたビールも冷やしておく。


 その後棟梁からおおよその見積もりを出してもらい、各部屋の水道も確認してもらって工事の日程を決める。


「値段は安くするが、材料費だけはどうにもならん」


「ええ、分かってます」


「明日にでも誰かに見積書持ってこさせるから。工事は3日後からで、先に俺が屋根の方から入るからよ」


「わかりました。どのくらいで終わります?」


「若手も連れてくるから材料さえ揃えば2日だな。ちょっと直せばいいとこが多いからすぐ済む」


「水道管は?」


「今回は大丈夫だろう。年に1回は見た方がいいかもな」


 工事をお願いして、棟梁が帰宅してすぐ、残りのものをつくりはじめる。


 中くらいの鉢にサラダを作るだけなのだが、つまみが欲しい。


 厚揚げを一口大に切り、小松菜も一緒に鍋に入れ、沸騰したら、だしの素、醤油と酒で味付けし、中鉢に入れて、漬物もすべて出して準備を終わらせる。


 ハンバーグの方はアルミで覆ってあるので保温にもなるだろう。


 夕餉の時刻にみんなが集まったので、ご飯や味噌汁なども出し、雪翔に挨拶する様に言う。


「あの、今日からお世話になります。早乙女 雪翔です。高校は海都君と同じになりました。よろしくお願いします」


 拍手が起こり、みんなから宜しくなと背中や肩を叩かれ歓迎会が始まる。


「おー!ピザだ」


「中にハンバーグが入ってるぞ?」


 意外にも驚きの声が上がったので、どちらも好きでしょう?とみんなに言う。


 ビールに焼酎、ジュース等料理もどんどん減っていき、すぐにおかずは無くなってしまった。


「どうします?何か簡単な物なら作れますよ?」


「ピザがいい!」


「ピザですか?ちょっと待ってくださいね」


 席を立ち、冷蔵庫を開ける。


 ピザソースもチーズも残り僅か。パンは明日の食事に使いたいと中をみて、揚げにふと目が止まる。


「これで行きましょうかねぇ……」


 京揚げを二等辺三角形になるように四つに切り、アルミホイルを敷いたトースターの皿の上に乗せてピザソースを塗り、ピーマンなど薄くスライスしたものを乗せていく。

 ベーコンも乗せチーズをかけてトースターで焼く。それを三回繰り返し、お皿に乗せて机の上に置く。

 揚ピザの出来上がりだ。


「ピザだ!でも、揚げ?」


「揚げは糖質も少ないので、体にもいいんですよ?まぁ、食べてみてください」


「あ、サクサクだし美味い!雪翔も食えよ」


「はい、いただきます」


 俺もおれもとみんなが手に取り、好評だったのでまた一つメニューに加えようと思い、一つ摘む。


 もう一本つけようと酒の瓶を持つと、陰から羽織を引っ張られるので、土間の奥へと移動する。


「冬弥様、秋彪様がお出でです」


「社にかい?後で行くと伝えて来ておくれ」


 そのまま違う酒を出して席に戻る。


「あの、お狐ちゃんが……」


「大丈夫だよ、伝言を頼んできたからねぇ。それより、ちゃんと食べたかい?昨日も見たと思うけど、凄いでしょう?夕餉の時間は全員そろうとあっという間になくなってしまうんですよねぇ」


「いつもは?」


「大学生の子達はバイトもしてるし、堀内くんは大学に残って働くんです。だからこの三人は居たり居なかったりです」


「僕も、このまま大学に行きたいんですけど、話では二年生から授業が難しくなると聞きました。就職と進学とコースが分かれるんだそうです」


「海都」


「なに?」


「海都は進学でしたっけ?」


「そうだよ!」


「雪翔もだそうですよ」


「お前頭良さそうだもんなぁ。俺、堀内さんに教えて貰ってるんだけど、数学だけ駄目なんだよ」


「理数系に行くんですか?」


「俺、文系。でも期末の成績でバイトが出来るかどうかの瀬戸際なんだ」


「僕、ついていけるかなぁ?」


「大丈夫じゃないですか?もっと自信を持ってください。変なモノは紫狐が祓ってくれますから、後は雪翔次第ですよ」と最後の部分は小声で言う。


「雪翔は休み中どうするんだ?」と賢司が言うが、「下宿屋の手伝いを……」と下を向いて話してしまう。


「おい、何か賢司がいじめてるみたいになってるじゃん」


「そ、そんなことは……」


「嘘だって!顔を上げて話さないと、声が前に行かないから聞こえにくくなるし、弱く見られるぞ?自信持てよ」とほろ酔い加減の隆弘が元気づけているが、あまり人と関わるのが好きではないのか返事だけして、みんなのやり取りを見ているだけだった。


 22時にはいつもお開きとするため、酔っていないものに運んでもらい洗い物をする。


 宴会の時は酔いつぶれたものは自分で洗えないので、つい手を貸してしまうが、その分草むしりなどを手伝ってもらっている。


「さて、手伝いはもういいですよ。皆さん暖かくして寝てくださいね?暖房もちゃんと切って寝ないとだめですよ?」


 はーい!と返事だけ元気にしてみんなが戻るので、そのまま社に行き、秋彪と会う。

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