第14話

 夕餉の支度をしなければとボードを見、一人居ないからいつもの7人分でいいのかと、アルミホイルを取り出す。

 今日買ってきたスズキを適度な大きさにきり、土間の机に並べた7枚のアルミホイルにオリーブオイルをかけた上に置いていく。

 しめじ、人参の細切りに玉ねぎを上に置いて塩コショウをし、レモンをかけてからもう一度軽くオリーブオイルをかけ、輪切りのレモンを置いて包んでいく。


 それを蒸し焼きにしている間に、いつもと同じ豆腐に揚げ、ワカメの味噌汁を合わせ味噌で作り、漬け物の確認をして補充してから、木のボウルに茹でたマカロニとちぎりレタス、ハムとキュウリをいれてマヨネーズとフレンチドレッシングであえてからミニトマトを飾る。


 今夜はこれでいいだろうと、炊飯器のタイマーを確認し、出来上がったものから机に並べていく。


「これでいいですかねぇ?なにか忘れているような感じがするんですが……」


 コン__


「冬弥様、しゅわっとする飲み物です」と指差され、せっかくだからと買ったものをグラスと一緒に机に置く。


「銭湯へ行く人は早く行ってくださいね」と声をかけると、三人が出てきて部屋を見てくれと言われ連れていかれる。


「何ですか?こんな短時間で終わらないでしょう?」


「それが凄いのなんの。掃除の天才かもしれない」


 中を見ると漫画で散らかり放題の部屋はスッキリしており、机の位置を変えただけなのに何故だか広く感じる。


 隆弘の部屋は飛行機などの模型がごちゃごちゃとあったと思い出しながら見ると、位置は変わっていないものの物が邪魔にならすにスッキリとしている。


「これは……窓を開けないと行けませんねぇ」


「そこじゃないから!」そう言いながらも二人とも窓を開けにいっている。


「掃除機は掛けましたか?」


「かけた!ただゴミ袋がすごくて」


 見ると袋が5つ。


「仕分けはしたんですけど」


「容赦ないんだよ。捨てますねといった側から要らないものとか要るものとかわかったみたいにポイポイ捨てていくんだって」


 ほう。と目を細目よくみると、背中側から薄いがちゃんとオーラと言えば分かりやすいのか狐で言うところの妖力が出ている。


「それにしても短時間で凄いですねぇ。三人でお風呂にいってきてください」そう言い用意してあった買い置きの下着と肌着のTシャツを雪翔に渡す。


 蒸した魚は食べる順からトースターで温めれば良いと思い、もう一品違うものを作る。

 小さいフライパンにはんぺんを四つに切ったものを並べ、焼き目がついたらひっくり返しとろけるチーズを置く。

 火を止めて蓋をし余熱で溶かせば出来上がりだが、そこに少しだけ黒胡椒をかけて食べるのも美味しい。お膳の上に皿に盛り付けたはんぺんとホイル蒸しを乗せてもって行き、火鉢で暖まりながらみんなの帰りを待つ。


 ただいまと他の者も帰ってきたのでお風呂は?と聞くと、銭湯でみんなと会ったと着替えだけしに行くと言いすぐに食卓に戻ってくる。


「冬弥さん、茶碗てこれでいいの?お椀も」


「ええ。それがお客さん用なので。ついでに取り皿もお願いします」


 雪翔を隣に座らせて、みんながしていることを説明する。


「じゃぁ僕も手伝いを」


「引っ越してからでいいです。明日は歓迎会ではないけど、次の日に合格発表ですよね?その時にするから今日は座っておいで」


「はい」


「冬弥さんこれ」と皿に取ってくれたサラダやご飯、味噌汁を受け取り、雪翔にも回ったところでいただきますと食事を進める。


「あぁ、そのジュースは特別です。みんなで飲んでください」と言い、自分は冷やのまま酒を飲む。


 みんなが構うので、すっかりと馴染んでいるように見えるが、かなり緊張しているのだろう。お箸が進んでいない。


「魚嫌いでした?」


「いえ、好き嫌いはないです。皆さん元気だなと思って」


「毎日こんな感じです。海都が良く食べるから、唐揚げの時は大変でねぇ。ご飯もいつも早くなくなるから、遠慮してたら無くなりますよ?」


「はい。あの……」


「出来たんですか?」


「はい。勝手にくっついたんで驚きましたが」


「ノリで貼ろうとか思いませんでした?」


「引き出しの裏かなとは思ってて。掃除の間にコソッと」


「なるほど。よく出来ましたねぇ」


「何かわかるんですか?」


「まあね。秋彪はどうだった?」


「楽しかったです。でも、あちらの狐さんは服が違いましたけど」


「甚平みたいなの着てただろう?あれは秋彪の趣味だよ」


「そうなんですか」


 食べなさいと言い、はんぺんを食べていると、隆弘が食器を洗ってからビールを出しに行ったので、つまみがいるか聞く。


「あ、俺いいよ。この落花生食べるから」


「ありましたっけ?落花生」


「大学でもらったんだよ。たくさん送ってきたからって。みんなも食べていいから、棚に置いておくよ」


「ありがとう!おやつゲットだな」


「僕もいいんですか?」


「勿論、ここの棚にあるのはみんなで食べていいものばかりだけど、食べすぎると冬弥さんが鍵かけちゃうから気を付けろよ」


「はい」


「皆さんがご飯前に食べるからです。私にも少し下さい。はんぺん二枚と交換でどうですか?」


 そう来なくてはと取り皿を持ってきたので、はんぺんと落花生を交換し、殻を割って中だけを出す。


「全部剥いてどうするの?」


「一度にした方が楽じゃないですか?」


 そう言いながらも、普段は狐が剥いてくれているなどとはとても言えない。


 夜の9時を回ったところで雪翔を狐に送らせる事にした。


「明日気をつけてくるんだよ」


「はい。ご馳走様でした」


「時間はわかるのかい?」


「僕のトラックが最初に出ると聞いたので、お昼くらいになると思います」


「なら、引越しが終わったら私の家の方に来て下さい。入った子はみんなそうするので」


「分かりました。お休みなさい」


 狐タクシーとでも言ったらいいのか分からないが、運転好きの狐がウキウキしながら車に乗り込み、出ていく。


「みんな明日が楽しみだねぇ……」

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