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 朝、アリアの音で目が覚めました。

 ぼくの部屋に入ってくる前から分かってたけど、実際に入ってきたら「ママ、ルーフが居るー!」って大声だったのでびっくりしました。アリアは昨日寝ていたから、ぼくが帰って来たのを知らなかったんだ。


 ぼくが居なくなったことは、村のみんなが知っているみたいです。みんなで必死に探していたんだって。村の周りは柵で囲われているから、居なくなるなんておかしいもんね。

 村の外に行っていたなんて、とてもじゃないけど言えません。


 アリアは、なんだかぼくに付きっ切りでした。ぼくが手伝いに行く時も着いてきたので、「どうしたの」って聞くと、「ルーフを守るの!」って。ミリガン神父とのこと、グレイおじさんから聞いたんだって。

 「どんなに体が強くなっても、ルーフはルーフなんだから、無理しちゃダメ」って言われました。でも、ぼくが居なくなったのはミリガン神父の言葉の所為じゃなくて、お腹が空いて仕方なくなったからで、それは前のぼくとは違うことです。アリアなら、ひょっとしたら本当のことを言っても大丈夫かもしれない。

 でも、けっきょく違った時がとても怖くて、言えませんでした。アリアがミリガン神父みたくなったらどうしようもないです。


 当然だけど、グレイおじさんもぼくが居なくなったことを知っていました。

 グレイおじさんは、ミリガン神父みたいな人も少なからず居るけど、でもぼくのお陰で作業が一週間分も早く進んだのは事実だ、と言いました。だから、そこに関しては誇っていいって。


 みんな本当のぼくのことを知らないから。


 ぼくがこれからは手伝いは午後からにさせて下さい、というとグレイおじさんは良いって言ってくれました。これからは全くバレないように、夜の内に村の外に行って帰ってこないといけません。そうなると寝る時間がなくなってしまいます、だからです。できれば、あんなことがなければいいんだけど、多分また来ると思います。

 あの時のこと、ぼくは覚えてるけど覚えてないです。やったことは覚えてるけど、けど今のぼくがやったんじゃないんです。ぼくの知らないぼくがやってた気がします。ぼくにも、よく分かりません。

 でも、ぼくじゃないのなら、何をするか分からないから、ぼくがどうにかしなくちゃいけないんです。


 アリアは丸太を運ぶぼくの後ろを追いかけていました。だんだん、足音の間が空いていったので、途中からアリアもいっしょに運びました。最初は「大丈夫だよ」って言ってたけど、途中から楽しくなってきたみたいで、丸太に腰掛けて足をぱたぱたさせていました。

 やっぱりバレたくないなぁ。

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