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起きたら、お月さまが出ていました。
塔の壁の壊れてるところから光が差し込んでいて、それがまぶしくて起きたんです。
隠し通路の扉は床にありました、地下を通ってるみたいです。鉄で出来ていた上に錆びていたので、力を入れたらつい引っこ抜いてしまいました。埃で鼻と目がちかちかして、んー……。中は真っ暗で、ぼくは仕方なしに狼の目になりました。差し込む光が全くないので、こうしないと中が見えなかったんです。
これくらいなら飛び降りられると思ったので、ぴょんと底に下りました。ぼくが地面に落ちた音が、通路に山彦みたいに響きます。
どれくらい距離があるか分からないので、取り敢えず走ることにしました。ぼくが誰かの物音を聞くまでは、誰かにぼくの音を聞かれる訳がないので(つまり、今のぼくよりも耳が良い人は居ないということです)、そこは安心です。
行き当たりの梯子を上って、外から人の音がしないのを聞くと、天井に付いてる扉を押し上げました。こっちも錆びてたので、うっかり弾き飛ばして大きな音を立てないように、慎重に。
外に出たら、そこは見張り台と住宅区の間にある、建物の中でした。本がいっぱいあるから、資料を集めて置く場所なのかな。扉に鍵がかかってたらどうしようかと思ったけど、鍵はかかってなかったので一安心です。ぼくは小屋から出ました。
多分、ぼくが居なくなったことはもう知られているだろうから、まっすぐ玄関から帰ろうと思って歩いていたら、ダニエルお兄ちゃんとばったり。「どこに行ってたんだ!」ってすごい勢いです。
一人になりたくて、誰にも見つからないように村の中をぐるぐるしてた、って言ったら、ぼくの手を握って「帰るぞ」だって。
帰ったらママはぼくを見て、やっぱり「どこに行ってたの」って、ダニエルお兄ちゃんと同じことを聞きました。やっぱりぼくはさっきと同じように答えました。
ママは、何も言わないでどこかに行ってはいけないと怒りました。でも、途中から泣きそうな顔になって、帰って来てくれてよかったって、ぼくのことをぎゅっと抱きしめてくれました。
気がついたら、ぼくも泣いてました。
家に帰れてよかったです。
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