8ページ目

 アリアの足音で目が覚めました。

それでも毛布を被っていたら、取られてしまいました。「寝てばっかじゃ体に悪いよ!」って。

 それでも手で頭を抱え込んで丸くなったら、毛むくじゃらの手を(人の手に戻すのを忘れてそのままでした)なんかさわさわされたので起きました。くすぐったいのは苦手です。


 ママ、今日はどんな顔をしてるかな。下の階に行きたくなくてゆっくり歩いてたら、ご飯が冷めちゃうから、ってアリアにぐいぐい背中を押されました。

 「怖くないの」って聞くと、「なにが?」だって。……変なの。


 アリアに背中を押されるまま(正しくは押されてる方にぼくが歩きました。全然、重くないんだもの)椅子に座ると、「今日はルーフの大好きなリンゴがあるよ! わたしが切ったの!」ってがたがたになったリンゴの乗ったお皿をもらいました。「朝ごはんが先じゃない」って聞いたら、「あっ」って顔になって、えへへって笑ってました。それを見て、ママも笑っていたので、ぼくは嬉しくなりました。

 朝ごはんを食べている時に、いろいろ村のことを聞きました。牧場の近くの柵が壊れていて、そこから魔物が入ったんだって。

 それでぼくは、冒険をした日、ミリガン神父やジェイクさんが犬を見て慌てていたのを思い出しました。村は柵で囲われてるんだから、見知らぬ犬が村の中に居たら、おかしいもんね。


 外は雨でしたが、みんな休む間もなく働いているのが聞こえました。部屋の中に居ても、外の音が、普通に聞こえてくるんだ。

 ママとアリアも、外に出かけていきました。ぼくはお留守番です。


 ぼくは、自分の部屋でいろんなことを試してみました。

 狼になると、背中が曲がったり、腕が大きくなって伸びたり、なんだろう、骨ごと変わってる感じです。あと、動かせる場所が増えます。尻尾を動かすのが一番不思議な感じでした。目だけ狼にしたり、人差し指だけ狼にしてみたりもできます。

 やってると少しだけ楽しくなってきました。でも、狼になると、今でも見え過ぎたり聞こえ過ぎたりしているのに、もっと見えたり聞こえたりするので、あんまり好きじゃなかったです。


 夜ごはんはパンとスープでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る