第6話 プランニング

ある日、美生たちに陽から集合がかかった。3人は陽の部屋に集まる。陽の部屋だが、有希が勝手知ったる他人の家といった感じで、紅茶を入れてくれた。


「あなたたち、夏休みの予定は決まってる? どこかロングツーリングに行きましょう。」


「悪くないですね〜。」


「美生が一緒ならいいよ。」


美生は何も言わなかった。お金あるかな?と考えている。


「私たちの人生で、今年の夏休みは1度きり。無駄にはできないわ。」


「どこに行きます〜?」


「美生が行きたいところなら、どこでもいいよ。」


美生はまだ黙っている。母はお金を貸してくれるだろうか?


「夏だから、北海道がいいわ。」


「いいですね〜、お魚が美味しそう〜。」


「美生と一緒に食べたら、なんでも美味しいよ。」


4人は、バイク屋に相談に行った。店主は北海道へのロングツーリングの話を聞いて、いくつかアドバイスをしてくれた。


バイクは、ヴェスパとランブレッタにすること(別にトリシティでもいい)。

予算に余裕があれば、ワンボックスカーをレンタルすること。


まず、クッチョロやモトム、グッチーノでは、何日も朝から夕方まで長距離を走るには、バイクの負担が大きすぎる。免許の関係上、佳は運転できなくなってしまうが、佳は美生とタンデムできればいいのだから問題はない。


ワンボックスカーをレンタルできれば、バイクが故障しても積載できるし、雨の時はバイクを走らせずに済む。女の子のツーリングならば、荷物も結構多くなるだろうから、車があると便利。最悪、誰かの体調が悪くなっても車の中で休めるし、車中泊もできる。


なるほどと、4人は思った。かなり贅沢な気もするが、みんな初心者なのでいいかもしれない。だが、美生は浮かない顔だった。ワンボックスカーを10日から2週間レンタルすれば、20万円近くかかってしまう。宿泊費や諸々の費用を考えれば、一人当たり15万円以上ツーリングに必要になるだろう。


他の3人は裕福な家の子だが、美生の家は普通の家庭だった。もちろん美生が何か不自由な思いをすることはなかったが、それは母や祖父が美生にそう思わせないように頑張っていたからである。

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