第7話「悪魔も涼みたい!? 夜空に咲く大輪の華!」
〈前回のあらすじ〉
〈本編〉
「中津里町海浜公園花火大会?」
「そう。一緒に行かない?」
終業式の日、ひかるは1枚のチラシを杏子に見せた。それは、例年8月頭に行われる花火大会の告知だった。
「予定は無いから大丈夫だよ」
「良かった。じゃあ、一緒に行こう!」
嬉し気に笑うひかるを見て、杏子はふと気になった。
「でも、あたしで良いの? 他に行きたい友達とかいないの?」
ひかるは少し残念そうにしながら答えた。
「それが、部活とか塾で都合が合わなくて……」
「なるほど。って、あたしが暇みたいじゃん!」
ちょっと拗ねた杏子に、ひかるは慌ててフォローを入れる。
「違うよ、そんなつもりで誘ったわけじゃないから! 杏子と行きたいから誘ったんだよ?」
「ふーん……まあ、暇なのは確かだから良いけど」
「良いのかな、それは」
ひかるからチラシを受け取り、杏子は描かれた大輪の花火を眺める。
(花火大会なんて、最後に行ったのはいつかな……)
ふと、そんな感傷にも近いことを考えた。
杏子の記憶の中にある花火は、父親に手を引かれて見たもの。それは幼いころのことで、もう何年も花火を見ていないはずだった。記憶に新しいのは、家までかろうじて届いた花火の爆ぜる音だ。
「ひょっとして、こういうの好きじゃなかった?」
「へ? いやいやいや、そんなこと無いから!」
不安げな顔で覗き込んできたひかるの問いで我に返り、杏子は慌てて首を横に振る。
ひかるはほっと胸をなで下ろした。
「良かった。嫌だったらどうしようかと思った」
「大丈夫。こういうことに慣れてないだけだから」
「そうなの?」
杏子は窓の外に目をやった。澄み渡る空に、飛行機雲が一直線に伸びていった。
「家族で行くことはあったけど……クラスの誰かと行くことなんて無かった気がする」
「そうなんだ……」
空を見つめる杏子の背中に一抹の寂しさを感じ、ひかるは杏子の手を握った。
「杏子、一緒に楽しもう」
「……うん!」
杏子は笑顔で頷いた。
「で、行くのは良いんだけど……」
花火大会当日。会場行きのバスの中も、会場へと繋がる道路も、大混雑していた。
「……人が多いね」
「大きなイベントだからね」
バスに揺られること約20分。
会場に着いてまず目に入ったのは、「人の壁」だった。
会場を埋め尽くす、人、人、人……一種の生物が
杏子はさっきと同じ言葉を、さらに実感を持って繰り返した。
「人が多いね……」
「はぐれないように気を付けよう」
ひかるは杏子の手をそっと握った。その手の柔らかさと温かさを感じながら、杏子もまた握り返す。
人の動きに惑いながらも、ひかると杏子は立ち並ぶ出店の中の1つでからあげを買った。さっそく頬張ろうとする杏子に、ひかるが自分のを1つ楊枝で刺して突き出した。
「はい、あーん」
「えぇ!?」
「ほらほら、あーん」
「うぅ……あーん」
観念して杏子が大きく開けた口の中に、ひかるがからあげを放り込む。衣に染み込んだ醤油ベースのタレの味と、アツアツの肉汁が杏子の口の中に広がった。
杏子が頬を緩めたのを見て、ひかるもからあげを頬張る。
「「おいひい……」」
「ワタシも食べてみたいミラ」
「ボクもだぜ」
ひかると杏子がそれぞれ肩に掛けるカバンから、ミーラとクルルがこっそり顔を覗かせた。
「あ、待ってね」
人がひしめく会場の中で、それでも人目に付きにくそうな場所を選んで、ミーラとクルルにからあげを食べさせた。
「おいしいミラ……」
「うまいぜ……」
祭りの味を噛み締める様子に、ひかると杏子は顔を見合わせて笑った。
「ねぇ、たこ焼き売ってるよ」
「本当だ……って、デカっ! 大きすぎない?」
「食べきれるかなぁ……1つください」
「買うんだ。買っちゃうんだ」
「あ、あっちにミラクル☆エンジェルズのお面売ってるよ? 買う?」
「いや、流石にそれは……アクリルキーホルダーとかなら買うけど」
「買わないんだ。そこは買わないんだ」
「もっといろいろ食べてみたいんだぜ」
「ここでしか食べれないものとか食べてみたいミラ」
「そういうのってあったかな?」
「これだけ店があるんだし、きっと何かあるよ!」
しっかりと手を繋ぎながら、会場を歩くひかると杏子。
花火が打ち上がるまでは、まだ時間があった。
「ねえ、アスモデウサ」
「どうした?」
いつもの洋館で、ベッドの上に寝っ転がりながらベルフェゴーラはアスモデウサに問うた。
「なぜこんなに暑いの……?」
窓から差し込む光を、ベルフェゴーラは忌々し気に見た。アスモデウサはベッドの縁に腰掛け、わざとおどけて言った。
「体が
アスモデウサの指が、そっとベルフェゴーラの太ももを撫でて腹部へと至る。ベルフェゴーラはその手を払った。
「そういうことじゃなくて、何でこんなに気温が高いのよ」
冗談とは言えノッてこないベルフェゴーラに、アスモデウサは肩をすくめた。ベッドから立ち上がり、カーテンを閉めながら答える。
「日本では『夏』という時期に入っている。日本の夏は『高温多湿』が基本らしい……特にここ数年は異常に気温が高くなっているようだな」
「やってられないわ……今だけ魔界に帰っても良いかしら」
ベッドの上でごろごろとしながら不貞腐れるベルフェゴーラを見て、アスモデウサはため息をついた。
「室内は涼しくしているだろう? それに、魔界に帰ったところでサタニアが怒るか、さもなければ面倒な仕事を押し付けられるだけだぞ」
「……それもそうね」
部屋の壁面に埋め込まれた魔力貯蔵用のタンクをベルフェゴーラは見た。アスモデウサとベルフェゴーラが集めた魔力は、一抱え程度あるタンクの底から5センチ程度を満たしているに過ぎなかった。満タンまでは高さにして2メートル程度はある。
「他の仕事を並行してしているとは言え、この状況で魔界に帰ろうものならサタニアが激怒しそうね」
『誰が激怒するって?』
声が聞こえた瞬間、ベルフェゴーラはドレッサーを別の部屋に移そうと心に決めた。しかし、その決心はすぐに忘れてしまうのだが。
ドレッサーの鏡に映るサタニアは、アスモデウサに目を向けた。
『アスモデウサ。お前に頼みがある。今から魔界に戻れるか?』
「……何のためにだ?」
理由は察しながらも、アスモデウサは聞かないわけにはいかなかった。
サタニアは露骨に嫌な顔をしながら告げた。
『お前の配下だったものたちがサボタージュしている。対応に協力してくれ』
「またか……アイツらも懲りないものだ」
(お前の同類だろうが)
いかにも「困ったものだ」というジェスチャーをするアスモデウサに対して、喉元まで出かかった言葉をサタニアは飲み込んだ。
『ではすぐに戻ってくれ。詳しい話は戻ってからする』
それを最後に、サタニアとの通信魔術は切れた。
「これで何回目だったかしら?」
「さてな。もう数えるのはやめたからな」
アスモデウサは開扉魔術を発動し、魔界へのゲートを開く。
魔界に戻ろうとゲートをくぐりかけ、アスモデウサはあることを思い出して机の上に置いていた1枚の紙をベルフェゴーラに渡した。
「何、これ?」
「今夜行われるらしい、『花火大会』というものの知らせだ。恐らくニンゲンどもが多く集まるだろう」
「……! なるほどね」
ベルフェゴーラの目が怪しく光った。
「後は任せたぞ。オレはサタニアにお呼ばれしているからな」
「ええ、任されたわ」
ひらひらと手を振って、アスモデウサはゲートの向こう――魔界へと戻っていった。
「『任された』……とは言ったものの、やっぱり暑いわ」
アスモデウサに渡されたチラシを片手に、ベルフェゴーラは花火大会の会場へと向かっていた。
「嫌になるわね、この感じ」
じっとりと肌にまとわりつくような感覚。空を飛べば多少は風で涼しく感じるものの、しかし空気そのものが
「あそこね……」
波打ち際に沿って光の灯る一帯を確認し、ベルフェゴーラは付近のビルの屋上へと下りた。
『ちぇっ、ここも満車かよ……』
『うぅ、人が多いのは苦手なんだけど』
『進入禁止? ここからなら良く見えると思ったんだけどな……』
目ざとく悪性の魔力を見つけ、ベルフェゴーラはその手へと収集する。そして、怪物を生み出すための素材を探す。
会場に並ぶ出店をじっくりと品定めしながら眺め、ベルフェゴーラは1つの店に目を付けた。
『へいらっしゃい! 大きなたこ焼きはいかがかね~!』
大きなものを売っている店の主人は、声も大きかった。
「さあ、行きなさい。アタシの可愛い魔獣ちゃん」
ベルフェゴーラが放った魔力が店にまとわりつき、やがて怪物の形をとって実体化する。
「タコヤーキー!」
『うわぁあああああああ!!』
楽しさに満ちていた会場に、一転して悲鳴が響き渡る。放出される悪性の魔力の量は、これまでの比では無かった。
「……くくく、あははははははッ!」
手元に集まる魔力を見て、ベルフェゴーラは笑わずにはいられなかった。既に怪物の創造に使用した量など回収し終わった。
蜘蛛の子を散らすように逃げる人々。しかし狭いエリアに集中していたがゆえの悲劇が、さらに悪性の魔力を生み出す。
「良いわ! 暴れなさい、アタシの魔獣ちゃん!」
「タコヤーキー!!」
ベルフェゴーラの指示を受け、怪物は巨大つまようじに刺さった巨大たこやきを振り回す。
『うわああああああああああ!!』
「良いわ、もっと、もっと――」
しかし、ベルフェゴーラの高笑いは途中で止まった。
夜空にひるがえる4枚の翼。
「全てを照らす光、ミラクルソル!」
「闇の中に輝く光、ミラクルルア!」
互いに手を取って一回りし、最後に背中を合わせて指鉄砲を怪物に向ける。
『世界を照らす奇跡の光、魔法少女ミラクル☆エンジェルズ!』
「ええ……」
ベルフェゴーラのテンションはだだ下がりだった。
「タコ!」
「ハッ!」
「ヤーキー!」
「やぁっ!」
怪物が振り下ろした巨大たこやきをジャンプでかわし、ソルとルアは怪物の頭(店の屋根)を両側から殴った。
「タコッ……」
巨大たこ焼きの刺さった巨大つまようじを落とし、頭を押さえてうずくまる怪物をソルとルアは間髪入れずに蹴り飛ばす。
「ヤーキ!」
叫び声を上げながら、派手な音と共に怪物は海中に没した。
ソルとルアは互いに頷き合う。
「……つまんないわねぇ」
横薙ぎに振るわれた怪物の腕を屈んで避け、足を払うソル。そして、天上から胴体へドロップキックを見舞うルア。
「タコ……ヤキ……!」
ふらふらと立ち上がる怪物を、「ソル・バーニングシューター」と「ルア・ムーンライトシューター」が襲う。
「タ、コ!」
「つまんないわねぇ……」
終始ソルとルアが怪物を圧倒する状況に、ベルフェゴーラは同じ言葉を繰り返す。
そして逃げ惑っていた人々が、天を舞い地を駆ける魔法少女に気付いた。
『おい、何だあれ?』
『何かの撮影?』
『空飛んでねえか!?』
スマートフォンを取り出す人が出始めた中で、1人の子供が声を上げた。
『ミラクル☆エンジェルズだ!』
『ミラクル☆エンジェルズ?』
『ミラクル☆エンジェルズって……』
『アニメの?』
さざ波のようにその名前が広がると共に、人々が発する魔力は中性や善性に変わっていく。
ここに至って、ベルフェゴーラの我慢は限界に達した。
「つまらない、つまらない、つまらないわ!!」
ビルの屋上で子どものように地団駄を踏み、ベルフェゴーラは手元の魔力から幾分かを怪物に向かって送る。
「せっかくの機会なんだから、もっとしっかり戦いなさい! アタシの魔獣ちゃん!」
「タコヤーキー!!!」
「大きく――」
「――なった!?」
怪物のサイズは約2倍に、生える四肢は太くたくましく変化した。それに驚きながらも、ソルとルアは同時にキックを繰り出す。
「ハッ!」
「やぁっ!」
「タコ……」
しかし、それを怪物は腕で受け止めた。
「ヤーキー!!!!」
「「うわぁああああ!!」」
怪物に弾き飛ばされ、ソルとルアは立ち並ぶ出店に突っ込んだ。
「いったぁ……何してくれてんの!」
「それはこっちのセリフなんだけど」
「ベルフェゴーラ!」
ルアが見上げた先、電灯の上にベルフェゴーラは立っていた。
「せっかく気持ち良く魔力を集めてたのに……やっちゃいなさい、魔獣ちゃん!」
「タコヤーキー!」
怪物が巨大なたこ焼き器を構えた。
「「え?」」
目を丸くするソルとルアの前で、ポポポンッとたこ焼きが生成され、火を噴いて飛び出す。
「「ええええええええええ!?」」
殺到する無数のたこ焼きを避けようにも、ソルとルアの背後には何千人もの人々がまだ残っており、そもそも逃げ回るにはスペースが狭すぎた。
「ルア・リフレクション!」
「ソル・リフレクション!」
海浜公園に現れた満月と太陽。衝突したたこ焼きが次々と爆ぜていく。
『うわぁあ!』
広がる爆音と爆煙に人々が恐怖し、発する魔力が再び悪性へと変わっていく。
ベルフェゴーラはほくそ笑んだ。
「タコヤーキー!!」
それまでソルとルアだけに集中していたたこ焼きが、背後の人々にも向かい始めた。
「しまった――」
ソルとルアの防御を通り越したたこ焼きが、人々の頭上で爆ぜた。爆発の熱と風が人々を襲い、煙が視界を奪う。
『に、逃げろ!』
誰が言ったかもわからない言葉で再び人々はパニックに陥り、我先にと会場の出入り口へと殺到する。
「良いわ、良いわ……そのままやっちゃいなさい!」
再び大量の悪性魔力が集まり始めたことに喜びを感じ、ベルフェゴーラは笑いをこらえられなかった。
「このままじゃまずい!」
「でも、どうすれば……」
耐えるのが精一杯な状況で、ソルには打開策が浮かばなかった。ルアもほぼ同じだったが、ただ1つだけ思うことがあった。ルアは爆音に負けじと声を張った。
「ねぇ、ソル!『魔法少女ミラクル☆エンジェルズ』のそれぞれのポジション覚えてる!?」
「何よ、こんな時に!」
不審がるソルに、ルアはある「賭け」を提案する。
「ソルは攻撃寄り、ルアは防御寄り! あたしが皆を守るから、その間にソルがあいつをぶっ飛ばして!」
「えぇ!?」
驚愕するソルに、ルアは叫ぶ。
「お願い!」
「――! わかった!」
意を決し、ソルは「ソル・リフレクション」を解除した。そして殺到するたこ焼き群の中へと突っ込む。
一方のルアは「ルア・リフレクション」を解除して後退し、新たに技を発動する。
「ルア・フルムーンバリア!!」
会場に広がる、巨大なドーム状のバリア。真の満月が、そこに現出した。
ルアと観衆を狙っていたたこ焼きのすべてが、バリアに衝突する。絶え間ない爆発と巨大なバリアの維持は、これまでで一番の負荷をルアにかけていた。
(頼んだよ、ソル……!)
必死に耐えるルアが祈ったソルは、襲来するたこ焼きの対処に苦労していた。
たこ焼きはただ飛んでいるだけではなかった。ソルにかわされ、怪物に迫るための踏み台にされたたこ焼きは、そのままソルを追いかけた。ブーメランのように戻って来た自動車型怪物の車輪とは違い、このたこ焼きは精密誘導を売りにするミサイルに近かった。
(守ってちゃダメだ……守ってたら、さっきと何も変わらない!)
「ソル・バーニングシューター!!」
何度目かわからない技の発動。しかし、今回は目的が違った。
迫るたこ焼きとソルの放つ光球が接近し――すれ違う。
(……?)
ベルフェゴーラは意図を図りかねて首を傾げた。
たこ焼きがソルに殺到して爆ぜる。
同時に、ソルが放った光球もまた怪物に着弾して爆ぜた。
「たかだかその程度で何が――」
(――ほんの一瞬でも良い)
ベルフェゴーラが嘲笑う中で、ソルは痛みに耐えながら次の手を、最後の手を打つ。
ソルの一撃でわずかに生じた怪物の隙。たこ焼き群が爆煙でソルの姿を見失った少しの
「ソル・バーニングストリーム!」
ベルフェゴーラがわからなかったソルの真意が、煙を払い怪物を撃ち抜く光となって現れる。
「タコヤーキー!」
断末魔の叫びを上げて、怪物は消滅した。
「……まあ、良いわ。今日はこれで許してあげる」
左手に集まった膨大な魔力を、ベルフェゴーラは満足げに見た。
「大丈夫?」
「ルアこそ、大丈夫なの?」
波打ち際で仰向けに倒れたソルのそばに、ルアが駆け寄った。
「あたしは大丈夫。すごく疲れたけど……ごめんね。無茶なことさせて」
「良いよ。ルアも無茶したんだし」
そこでソルはルアが発動した「ルア・フルムーンバリア」を思い出して、少し不満げに言った。
「あんなことできるなら、最初からやってくれても良かったんじゃない?」
「あぁ、あれ? あれはね……」
ルアは最初から「できなかった」理由を答えた。
「あれは、あの時咄嗟に考えたやつだよ」
「……え?」
「『魔法少女ミラクル☆エンジェルズ』には、あんな技は出てこないよ。だからできるかどうかわからなかったけど、やらないとどうしようもなかったし、何とかなるに違いないと思ってやったの」
「一から十まで『賭け』だったの? 呆れた……」
深く息を吐いて目を閉じたソルに、ルアは慌てて弁明した。
「で、でも、ソルだって本家に無い技使ったからね?」
「そんなことしてないよ。私は」
「『ソル・リフレクション』。あれも本家には無い技だよ」
ソルは思わず目を見開いてルアの顔を見た。ルアの顔は真剣そのものだった。
「うそ、無かったっけ?」
「無いよ。何度もリピートして見てるから、間違いない」
変な説得力のあるルアの言葉に、ソルはそれ以上疑うことをやめた。代わりに、残念そうに呟いた。
「花火は中止だろうね」
「あ、そっか。花火大会だったっけ」
「大事なところを忘れないでよ……」
ため息をつきながら、ソルは星が瞬く夜空に目をやった。
「見たかったな。花火」
「できるんじゃない?」
「少なくとも今日はもう無理でしょ」
「ソルが打ち上げれば良いじゃん」
ルアの予想外な提案に、ソルは首を横に振った。
「私に花火を打ち上げるための知識は無いよ?」
「そうじゃなくて、本家に無い技としてさ」
本当に、ソルにとっては予想外な提案だった。
「……あんな無茶させておいて、さらにやれって言うの?」
「あ、それは……ごめん、今のは無しで――」
慌てふためくルアの口を指で押さえて、ソルはゆっくりと立ち上がった。
空に向かって右手を突き上げ、花火を思い浮かべる。
「ソル・プロミネンスファイアーワークス」
ソルの手から放たれた小さな火が、空を駆け上っていく。
やがてそれは、大輪の華を夜空に明るく描き出した。
〈次回予告〉
米原ひかるです。冷静に考えれば、悪魔のいる街でつつがなくイベントが行われるわけが無いですよね……どうしたの、杏子? え? 自分が魔法少女であることが家族にバレた!?
次回、『魔法少女ミラクル☆エンジェルズ』第8話。
「正体がバレた!? 黙っててごめんなさい!」
私たちが、奇跡を起こします!
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