第2話

職員室に行くと担任の木更津先生が手招きをしていた。


「お前物理係だったよな?次の実験の準備があるから手伝ってくれ。」


別に希望したわけでも好きなわけでもない物理係になったのは当然残り物である。


「分かりました。」


任された仕事はしっかりやりたいので、真面目に実験準備を手伝う。


時計を見る。短い針は1と2の間を長い針は4のところを指している。


「もういいぞ。ありがとな。」


木更津先生がこう言う。


「ありがとうございます。失礼します。」


そう言って教室をあとにした。


「最後まで手伝うのが普通じゃねぇのかよ。全く最近の若いのはなってないな。」


そんな声が聞こえた気がしたがおそらく気のせいであろう。


別に頭が良い学校に通ってる訳では無いから全ての人がいいひとという訳では無い。


こんなのを気にしていたら生きていけない。


僕は教室への足を早めた。


教室に戻った所で僕が戻ってきていることに気づいているのは羽月だけである。


「係の仕事だったわ。」


若干笑みを浮かべ言葉を放つ。


こんな日常がいちばん自分に合ってるような気がした。


そんな歯車が少しずつズレ始めた。



例の金髪軍団が金山を本格的に狙い始めたのだ。

最初は連絡先を教えてもらうところから、毎日メールが鳴り止まないらしい。


そう僕に泣きついてきたのである。


こんな僕に何かができる訳では無いのでとりあえず羽月と相談することにした。


羽月は

「助けてあげたいけどなぁ。俺らじゃ何も出来ない気がするよな。」


と困ったような笑顔を向けてきた。正直自分がこのことを相談されたら嫌な気がするだろう。このことを自分が相談されたら適当に返してしまう気がする。


しかし今回は別である。幼馴染が困っているわけで、何もしなかったら姉になりをされるかわからない。


正直姉か金髪集団かどっちが怖いかと聞かれたら迷わず姉を選ぶ。そんな姉である。



その日の昼休み僕は勇気を振り絞って金髪集団に話しかける。


「は? 」

「あ、あのさ、金山困ってるからあんまりたくさんメール送るのやめてあげてもらえないかな…?」

「あ、お前が言うことか?金山彼氏いるんだろ?そいつに言わせろよw余計なことに首突っ込むな。」


しまった。変な設定を作った自分を恨む。

もっとましな嘘をついておけばよかった。

ここはとりあえず振り切ろう。


「とりあえずさ、やめてあげてくれないかな。頼むね。」


後ろから声が聞こえた。


「チッ、なんなんだよアイツ」


僕は笑顔で会釈して羽月の所に行く。


正直心臓はバクバクで取れそうである。

羽月は良くやったと笑ってくれたがみんなの視線は少し痛かった。

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