【σσ 31本】スライム

えっと…

絨毯にくるまれてゆっくりと塔の屋上に降りた。


「旅人殿…無事ですね…」


「どうしたの!」


「ぷしゅぅぅぅ――」


絨毯は透明なビニール製のエアーベッドのような形状に変化してそれが高温の熱で溶かされるように萎んでいく。


「お世話になりまし――」


「おいっ!どうしたっ!おいっ!!」


絨毯は水溜まりとなり、その中に割れたピンク色の球体があった。大きさはゴルフボール位だろうか。


「これがアイツの本体…」


「スライムのコアね…火玉から飛び散った破片によって運悪く貫いたようね…」


メダルから女神が呟いた。


「ん?なんだ…」


目がぼやける…し熱い。


「くっ…泣いているのか…」


旅人は今まで泣かなかった。自分は感情に何かしら欠落しているものがあると思っていたのだが。


「まさか。ゼリー状のモンスターで泣くとはね…」


この世界の初めての仲間、助言者。腹立つ事もあったけれど。短い間だったけれど。大切な存在になっていたのだ。


「ふぅ……」


割れた球体を大事に手の平に乗せて、顔を上げ空を見る。黒雲は消え去り、青空が広がっている。


怒りは不思議と湧かなかっただが、ただただ悲しかった。


『旅人は完全聖防御を覚えた』




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