【σσ 11本】忘却!

ふかふか。

沈みすぎないほどよい固さのベッドマット、肌触りのいい掛け布団は、天日干しをしたのか、お日様の匂いがする。ぬくぬくだ♪

ここが異世界旅のゴールだったんだね。そろそろエンドロール流れないかしら。


初クエストから三週間、小金を得た僕達は宿屋生活を満喫していた。


「マスター!そろそろ資金が、尽きます!新しいクエストを!そしてこの町から出発しないと!シャーロリア様がお待ちになっておられます!」


「シャーベット様?なにどこの氷菓?」


「聖女様ですっ!!」


「ああ…そんな話もありましたな。」


嘯く。


「素晴らしい記憶力をお持ちなのに何故旅の目的を忘れるのですか?」


「アイリさん」


諭すように語り掛ける僕。


「忘れる事は大切なのですよ。すべての事柄を脳が覚えていると脳は疲れるのです。かえってパフォーマンスが落ちるのです。忘却力も大事なのです。僕のように超記憶力の持ち主 は特に疲れやすい、ほっておいたら心の病になってしまう。なので僕のような人間は逆に忘却力が必須なのですよ。具体的には何もしないこと。ぼーっとする事なんです。」


つらつらと語り。そしてベッドに、潜り込む僕でした。


「そ…そうなのですか。ってそんな詐欺師みたいな話術に惑わされませんよっ!」


「虚実交えてお送りしています」


布団から顔だけを出して答える。


「王に、なるのがそんなにお嫌ですか?」


「異世界に来てまで責任取りたくない」


「何か思い違いをされているようですが、王と申しましても名ばかりで実務は女王がされますし。その女王はこの世界の三本の指に入る絶世の美女なのですが」


「つまり国単位のニートになれると?」


「そう言う事になります。」


「ん?ん?話が前後するけれど、その美女と結婚するって事だよね?」


「はい」


「戴冠式と結婚式の合同結婚式です」


「最後のワードに嫌悪感感じるけれど」


ばさっ!


掛け布団をはね飛ばして(羽布団だけに

くすくす)


ベッドに仁王立ちになった僕は


「我はこの世界の王なり!」



「いざ! 聖地ファストユナへ!」


変な方向にテンションが上がり芝居がかっていました。


その時


「ドンドン!ドンドンドン!」


強めにドアを叩く音で驚きビクッとなり、上がったテンションが一気に下がる。ドアを乱暴に叩くのやめてもらえますかね。異世界の借金取りか何かですか?お金借りた覚えはありませんが、現実ではカードローン使いまくってましたけど。

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