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「父さん、見つかった。」
嬉しさでもない 悲しさでもない
怒りでもない 驚きでもない
なんとも読み取れない表情で彼は言った
「よかったじゃん!!」
私は高めのテンションで答えた
「まー、生きてたね。
新聞に、写真載ってたんだ。 漁師してるらしい 」
「生きててよかったね。 ほんとに」
「どっちでもよかったけどね。会わねーし 関係ない」
彼は時々とげをさす
「母さんがさ、いつも作んないくせに珍しく晩飯、作ってたんだよ
嬉しかったんかな 父さん見つかって」
「でもさ、」
彼は話を続ける
「母さんの飯、まずいんだよな。まじで」
「そんなこといっちゃだめだよ せかっく作ってくれたのに」
そんな家庭環境にない私は彼にそう言った
「だってさ、ご飯はべちょべちょ、ハンバーグはぐちょぐちょ
大体、普段作らねーんだよ? お金おいてるだけよ?
まず過ぎてこんなもんくえるかって怒鳴ってでってった」
彼は淡々と話す。
「弟は全部食べてたけど」
ここでまじめな私はこう話す
「うわー。お母さん、かわいそう
せっかく息子のために作ったのに」
彼は笑って答える
「いや、あんなん食いもんじゃねーから」
今思えば私のあの時の返事は間違ってたんじゃないか
私の返答で彼を傷つけていたのではないか
そう 思う
彼自身は一番わかっていた
お母さんが自分たちのために 頑張って作ってくれてたこと
でも ありがとうって うまいって 素直に言えずに 全部食べなかったこと
たとえまずくても弟みたいに おいしいって
素直に言って 最後まで食べたかったんじゃないか
私は彼が一番わかりきってることを 一番気にしていることを
そのままぶつけてしまった
彼はお母さんの料理が嫌いだった
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