第17話










◇シドニー郊外




キャシーとミシェルは大きな荷物を抱えて避難を急いでいた。


2人が駆け足で進む先に突然、横からクーパーが現れた。


『あ・・あなた・・?』妻のキャシーが声を上げる。


『パパ・・』ミシェルも驚きを隠せない様子で声を発する。



『無事か・・』クーパーは少し息を切らせながら声をかけた。


『どうして、ここに?』


『お前たちの顔を見たかったんだ・・』


『何よ、今更』


『オレはお前たちに迷惑をかけた・・今更顔向け出来ないことはわかっている・・しかし、最後にもう一度会いたかったんだ・・』


『”最後”って・・どういうこと?』娘のミシェルが問いかける。


『オレは・・』


その時、一発の銃声が鳴り響いた。


『ぐ!・・』クーパーは左肩を抑えていた。


『あなた!』


『パパ!』



キャシーとミシェルの背後から数名の警官が現れた。


『クーパーを発見』一人の警官が肩口にある無線で連絡をとる。


『ちょっと、彼が何をしたっていうのよ!』キャシーは警官に詰め寄る。


『彼がシドニーで暴れた怪物だ』


『え!』


『これ以上、被害を拡大する訳には行かないので、射殺命令が出てます』


『ちょっと待ってよ!私のパパよ』


警官は詰め寄ったミシェルを振り払った。


ミシェルは吹き飛ばされた、アスファルトに激しく体を打ち付けた。


その姿を見たクーパーは怒りに狂い、発狂した。



『ぐうぉおおおおおおお!』


クーパーが見る見るうちに巨人化する。


『あ・・あなた・・』キャシーは腰が抜けその場に座り込んだ。


巨人化したクーパーはすでに理性を失っており、キャシーとミシェルを判別することが出来なくなっていた。


大きく振り上げた右足が座り込んでいるキャシーの真上に上がった。


振り下ろされる右足にキャシーは何もすることが出来なかった。


しかし、次の瞬間すばやく何者かがキャシーを抱え、駆け抜けていった。


アスファルトから離れた横の草むらにキャシーを座らせる一人の男がいた。




久能秀隆だった。






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