第11話








『お前が、彼になにかやったのか・・・』


『彼が望んだことだ』オリバーは優しい口調で久能に話しかけた。



クーパーはうなだれていたが、体を少し起こして口を開いた。


『・・・こんな副作用があるとは聞いていない・・・』


『だから帰ろう、クーパー 研究室で元に戻せるようにするから』


オリバーはそっと手を差し伸べた。


『いやだ!・・・妻と娘に会いに行く・・』


『今の状態で会うのは危険だ、クーパー』オリバーは諭す。


『いやだ!いやだ! うぉーーーーーーーーーーー』クーパーは再び興奮状態に陥った。


『危険です!社長、クーパーの情緒が不安定になっています・・・このままではまた暴走を・・』


『仕方ない、力ずくで抑えるぞ』そう言うとオリバーは防弾チョッキを来て、拳銃を持ったセキュリティサービスの社員に指示を出した。


数名の男たちが一斉に拳銃を構えた。



『まずいわ・・久能・・』ソフィアが怯えていた。


後ろではクーパーの興奮状態が続いている。


男たちが一斉に拳銃を撃ち放った。



久能は地面のアスファルトを掴むと勢いよく上に持ち上げた。


アスファルトが盾となり、ソフィアとクーパーに弾丸が打ち込まれることはなかった。



『な・・何者だ・・あいつは・・』オリバーは信じられない光景に少し驚いていた。


しかし、すぐさま第2攻撃を仕掛ける様に指示を出す。


男たちは続けて拳銃を打ち込む。



アスファルトの盾が少しづつほころび出してきていた。


『ダメだ・・もたない・・』久能は苦痛の表情を表す。


その時、後ろで呻いていたクーパーの体に再び異変が起こった。


『ダメだ!クーパー、抑えろ!』久能は叫ぶ。


しかし、クーパーは制御出来ず再び巨大化した。


そのまま突進していくと、オリバーたちを跳ね除けて、シドニーの街の彼方へと消えていった。



『クーパーを追うぞ!』そう言うとオリバーはその場から去っていった。



久能とソフィアはその場に佇んでいた。


『あいつらが関係してるの・・?』


『クーパーと呼ばれていた男は”サンズ・ケミカル”と言っていた・・今のやつらはきっとその関係者だろう』


その時、久能はただならぬ気配を感じてソフィアの前に立ち尽くした。



『見つけたぞ、久能秀隆』


黒いスーツの男だ。


『今度はZACKか・・』


『我々とご同行願えるかな』



『断る』


『頑固なやつだ・・』黒いスーツの男は拳銃を構えた。


対峙する両者。



次の瞬間、予期せぬことが起こる。


久能の左頬にかすかな風圧を感じると、黒いスーツの男が肩を抑えてうずくまった。



『ぐ・・・』


久能は肩を掴まれると、勢いよく後ろに引っ張られた。


そのまま裏路地の角に連れて行かれると、ソフィアと共に車に乗せられた。


車は急発進するとシドニーの街を駆け抜けていった。









車内は静まり返っていたが、運転している男が口を開いた。



『あいつは”エージェントセブン”、比留間の右腕だ』



『あんた・・何者だ・・』




『ZACKの佐渡 健さどたけるだ』







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る