第9話








シドニー市内に黒いシボレーSUVが停まっている。



『クワトロ反応を検知しました!』


『どこだ?』黒いスーツの男が隊員に聞く。


『ここか3ブロック先です』


『よし、急ぐぞ』黒いスーツの男は車を急発進させ、シドニーの街を駆け抜けていった。








『すぐに離れましょう!やつらに気づかれるわ』


ソフィアは久能が力を使ったことで追っ手が迫ることを警戒していた。


『いや・・オレはあいつを追う』久能はクーパーのことが気になっていた。


『何言ってるのよ!ここにいたらダイナーの時のやつらが来るわよ』


『そうだが・・・放っておけない・・』


『あの大男に共感してるのね』



『あいつもある種、犠牲者だ』


ソフィアは少し呆れた表情を見せたが、すぐさま久能に微笑みかけ口を開いた。




『あなた、やっぱりいい人ね』


久能もその言葉に少し笑みを浮かべた。



『でも取り敢えず、これを巻いときなさい』


そう言うとソフィアは持っていた赤いマフラーを久能の口元から覆い隠すように巻いた。








◇日本:ZACK




黄昏貴美子はZACKの廊下を歩いていた。



『おお、黄昏じゃないか 久しぶりだな』


『ご無沙汰しています、比留間長官』


比留間は黒いスーツを来た恰幅の良い男だった。


『まだ佐渡の下に付いてるのか』


『はい、こき使われています』


『あいつの考えていることはイマイチ分からない所がある』


『そうですね』黄昏貴美子は話を合わせるように相槌をうった。


比留間と佐渡はZACKではほぼ同期であり年もほとんど変わらないのでお互い意識しあっている部分があった。


『佐渡の考えは生ぬるい 世界の情勢は混沌としている、決断は早くしないといけない』


『比留間長官はどのように考えているのですか?』


比留間は少し間を開けてから黄昏貴美子を見やり答えた。



『”新たな秩序”が必要だ』



黄昏貴美子の表情が少し変わった。



その後、比留間は笑みを浮かべて『黄昏、佐渡に嫌気が指したらいつでもオレにとこに来い面倒見てやるぞ』



黄昏貴美子は『その時はヨロシクお願いします』と答えるとすぐにその場から離れた。


廊下の角を曲がるとすぐさまスマートフォンを取り出し何処かに連絡を入れた。








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