第8話
*
シドニーの街が騒然としていた。
数台のパトカーが道の真ん中で横着けされており、ドアを盾にした警官が一斉に拳銃を構えていた。
しかしクーパーは動きを止めずに前進してくる。
《止まれ!止まらなければ撃つぞ!》一人の警察官が拡声器を使って静止を促す。
それでもクーパーは周りの車をなぎ倒し、前進してくる。
警官が一斉に拳銃を撃ち放つ。
パン!パン!パン!
一斉に撃たれた拳銃も弾はすべてクーパーの体に命中した。
一瞬、動きを止めたクーパーだか、すぐにまた前進しだした。
それもそのはず、クーパーは痛みを感じない体となっていたからだ。
『どうなってるんだ・・・』警官たちが動揺する。
クーパーはパトカーを踏みつけるとさらに前進してきた。
警官たちは後ずさりして逃げるしかなかった。
その時、一人の警官が足を絡めて地面に転んだ。
クーパーがその警官の方へと向かう。
クーパーが大きく足を上げた、その振り下ろす下には警官がいる。
クーパー躊躇なく足を下ろした。
ドン!!!
クーパーが振り下ろした足を支える人物がいた・・・・久能だ。
久能は両手でクーパーの足の裏を押さえると『早く逃げろ』と警官に促した。
警官は慌てるように逃げ去っていく。
久能は支えた足を思いっきり上へと突き上げた。
バランスを崩したクーパーはその場に仰向けに倒れ込んだ。
『な・・・に・・もの・・だ・・』
『どうしてこうなった?』
『わか・・らない・・注射を打たれたら・・・こうなった・・』
『どこで』
『サ・・・サンズ・ケミカル・・・』
そこまで言うとクーパーは再び雄叫びを上げ、久能に向かってきた。
クーパーは右腕を大きく振り上げると、久能目掛けて振り下ろす。
久能は両手でそれを抑えた、久能の足がコンクリートにめり込んでいることで、その衝撃は察しできた。
久能はすばやくクーパーの腕を交わすとその腕に飛び移り、そのまま腕を駆け上がっていった。
そしてクーパーの肩口付近まで行くと久能は大きくジャンプした。
久能は右手を大きく伸ばし、遠心力を利用してクーパーの顔面を殴りつけた。
顔面に久能の拳がヒットしたことでクーパーは大きく仰向けに倒れ込んでいった。
倒れたクーパーの周りはその衝撃でたくさんの砂煙に包まれていた。
砂煙が徐々に晴れてきた・・・しかしそこにはすでにクーパーの姿はなかった。
『どういうことだ・・』久能は立ちすくんでいた。
一人の警官が近づく。 先程、久能が助けた警官だった。
『一体、何者なんだ・・』
『わからない・・』
『いや・・・君だ・・手が伸びたり、巨大な足を支えたり・・』
『いや・・これは・・』久能は能力を見られたことに焦りを感じていた。
《おい、ディクソン!もう一人の男はだれだ!》他の警官たちから無線を入る。
ディクソンと呼ばれた警官は久能の方を見ると肩口の無線に手を掛けた。
『一般人です、こっちは異状なしです』
《わかった、巨大な男の行方を追うぞ》
『了解』ディクソンと呼ばれる警官は無線を切ると久能の方を見やった。
『借りは返したぞ』
『すまない』
ディクソンはその場を去ろうした時、久能が呼び止める。
『サンズ・ケミカル・・』
ディクソンは振り返った。
『あの男は”サンズ・ケミカル”と言った、サンズ・ケミカルで何かを投与された可能性がある』
『わかった』ディクソンはそう言うとその場を去った。
久能は荒れ果てたシドニーの街を見ながら立ち尽くしていた。
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