第6話









久能秀隆とソフィアはシドニーの安いホテルにチェックインしていた。


『とりあえず、休憩よ すぐに出ないとあいつらにまた見つかるわ』ソフィアは上着を脱ぎ、キャミソール姿をあらわにしていた。


『仮にも見ず知らずの男と2人きりなんだぞ・・』久能は目のやり場に困りながらソフィアに忠告した。


『あなたは大丈夫』


久能秀隆はコップに水を注いで一気に飲み干すと、徐に語りだした。




『最初にこの”力”に気づいたのは小学生の時だった・・・』


ソフィアは動きを止め、久能の方を見た。



『学校の体力測定で、オレは尋常じゃない数字を叩き出した』


久能は再びコップに水を注ぐと今度は湿らす程度に口に含んだ。


『その数字が尋常じゃない時・・他の人間はどういう反応を見せるかわかるか』


ソフィアは察していたが答えなかった。


『”恐れる”んだ』


『いいのよ、別に話したくなかったら話さなくて・・』


『いいんだ、オレが誰かに打ち明けたいのかもしれない・・ずっと一人で抱え込んでいたから・・、君だけが”力”を見ても変わらず接してくれた』


久能はさらに語りだした。


『オレの体に入っているのは”クワトロ”と呼ばれる血清だ ”クワトロ”には4つの”力”がある』


『イタリア語で”4”だものね』


『”アーム”腕、”フット”足、”ボディ”体、そして”ブレス”息の4つの”力”がある、これを父親から知らぬ間に入れられた』


『なぜ?』


『父親はある政府機関で働いていた、そこでは新たな脅威に備えるために極秘プロジェクトを進行されていたらしい』


『極秘プロジェクト・・?』


『簡単な言葉で言えば”スーパーソルジャー計画”ってとこだな』


『なんなの・・?』


『特殊な力を持った生物兵器を生み出そうとしていたっていう事だ』


久能は残りの水を飲み干すと、さらに続けた。


『父親はその”クワトロ”をほとんど一人で作り上げた、そしてその最初の実験台にオレを選んだんだ』


『自分の息子を最初の実験に使ったの!?』


『ああ、結果がこれだ』久能は手を広げるポーズをとった。


『ただ、”クワトロ”の成功者は後にも先にもオレだけだったらしい』


『なるほど・・それであなたを追ってるのね』


『”クワトロ”の唯一の成功者であるオレの体を調べて対応出来る新たな”クワトロ”を作ろうとしているんだ・・・ZACKは』


『なら貴方のお父さんになんとかしてもらえないの?』


『父親はもういない・・・8年前に死んだ』




『だからオレはこの”力”と共に生きなければならない・・・普通の生活をしたいだけなのに・・』










『久能秀隆、33歳 ”クワトロ”と呼ばれる血清実験の唯一の成功者だ』




シドニー空港に降り立った佐渡健さどたけるは電話越しに話していた。


電話の相手は黄昏貴美子たそがれきみこだった。


《私はどうすれば?》




『比留間を見張っていてくれ、あいつはZACKの中でも危険人物だ』


《佐渡長官も久能秀隆を探しているのはクワトロの力を使おうとしてるんじゃないのですか?》






『いや、私は久能道忠くのうみちただの意思に応える為に彼を探している』








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