第5話
1
《サンズ・ケミカル社》
オーストラリアに本社を置く、製薬会社である。
デッドウェル家が代々会社を受け継いでおり、現在のオリバー・デッドウェルが3代目として社長に君臨している。
オリバーは43歳という若さ故の焦りからか、新しい方針を次々に発表していき、自分自身のカラーを出そうとしていた。
しかし、それはすべてが裏目に出てしまい、会社の業績は下降線を辿っていた。
そんなオリバーへの世間の風当たりも強くなってきており、益々焦りを感じていたオリバーはサンズ・ケミカルにとって大きな看板的な薬剤の開発に着手した。
そして出来たのが《D-361》
D-361は無痛薬として開発され、それはサンズ・ケミカル社にとって最後の切り札だった。
オリバーはなんとしてもこのD-361の認可を勝ち取ることに全精力を費やしていた。
2
『社長!どういうことですか!? D-361はまだ開発段階ですよ!』
白衣を着た研究員の男がオリバーに詰め寄った。
『時間がない、臨床実験に入る』
『危険です! まだD-361にはどのような副作用が出るか分かりませんよ!』
『それを彼の前でも言えるか』オリバーは後ろの椅子に座っているクーパーの方を見やった。
研究員の男は何も答えなかった。
『彼にも時間は無いんだ・・』
3
ソフィアと久能はダイナーを飛び出したあと、止まること無く車を走らせていた。
『あいつらなんの・・?』ソフィアが問いかけた。
『オレの力を利用しようとしている奴らだ』
『どうして気づかれたのよ』
『オレがこの”クワトロ”と呼ばれる力を使うと力のエネルギーで感知する仕組みになっているらしい』
『なら当分、その力は使わないようにしないとね 見て』ソフィアは目線で前方を指した。
ハイウェイの看板標識に《WELCOME SYDNEY》と書かれていた。
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