第4話
*
オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ州
シドニーを軸に多くの産業が集まるビジネス都市となっているが、近年では観光地としても人気の都市となっている。
◇とある総合病院
『先生・・!頼む・・この痛みを取って下さい・・』病室から男の声が聞こえていた。
40代後半か50代ぐらいのやせ細った男が懇願していた。
『あなたの癌はすでにステージ4に達しています・・・残念ながら痛みをとることは出来ません、しかし一時的に和らげることは出来ます』
『先生・・オレはまだ死ぬわけには行かないんだ・・娘に・・娘に会うまでは・・』
『申し訳ない、こればっかりは我々でも・・』そう言うと医師は逃げるように病室から出ていった。
男はうなだれながらも痛みに苦しんでいた。
男の名前はデイヴィット・クーパー
1年半前から体調不良を感じていたが、病院通いを怠りそのまま放置していた しかし半年ほど前から激痛が全身を襲ったことで病院に行くことになった。
そこで医師から宣告されたのがステージ4の胃がんだった。
クーパーは決して良い男ではなかった。
結婚をし、娘が1人いるが、根っからのギャンブル好きとアルコール依存症もあり、3年前に妻と娘は家を出ていった。
しかしクーパーは自分がステージ4の癌だと知って初めて自分のこれまでしてきた事を後悔し、妻と娘にもう一度会いたいと感じていた。
だから・・・まだ死ぬわけには行かない・・クーパーは諦める訳にはいかなかった。
しかし、こればっかりはどうしよもない・・
そんな時、見知らぬ男がクーパーの病室を訪ねた。
『ちょっといいかい?』男は紺のスーツを着こなした、スラリとした高身長の30代から40代の男だった。
『誰だ、、あんたは』
『私はこう言うものです』男は名刺を差し出した。
そこには《サンズ・ケミカルズ》と書かれており、名前の欄にはオリバー・デッドウェルと記されていた。
『サンズ・ケミカルズ・・?』
『あなたは痛みに苦しんでいるようですね、我々の新薬を試してみませんか?』
『新薬・・・?』
『ええ、この新薬を使えばあなたの痛みを取ることができます』
『本当か!?』
『ええ、ただしこの新薬はまだ認可されていません あなたは臨床実験の被験者としてこの新薬を使用していただくことになります』
『金がかかるのか?』
『いいえ、実験として協力してくれるのであれば、費用は我々が持ちます』
『だったら、頼む!この痛みから解放させてくれ』
『では早速行きましょう』
すると男はどこかに電話を掛けて段取りを進めた。
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