第3話
1
『どこまで?』ブロンドヘアの女性が声をかける。
『一番近い街まで』久能は不思議な感覚を抱きながら答えた。
さっきの強盗に襲われたところを見ていたはずだ・・こんなだだっ広い一本道で目に入らないワケがない。
それでも何もその事には触れないのは・・何故なんだ・・?
『何故、乗せてくれたんだ・・?』久能から話し始めた。
『あなた困ってそうだったから』
『さっきの見ただろ・・』
『見たわよ』
『怖くないのか?』
『でも、あなたトラックの運転手を助けたじゃない』
『しかし・・』
『それ以外にあなたを乗せない理由がある?』
車は長い一本道を駆け抜けていった。
2
ブロンドヘアの女と久能秀隆を乗せた赤いセダンは休憩がてら、途中のダイナーに寄っていた。
『あたしはソフィア、あなたは?』
久能はコーヒーを一口飲むと『久能・・久能秀隆』
『何故、こんなド田舎なんかにいたの?』
『静かに暮らしたかっただけさ』
『そう』ソフィアと名乗った女はそう応えると二人はそこから無言を貫いた。
会話がないまま、時間だけが過ぎていたその時、けたたましくダイナーの扉が開いた。
黒いスーツの男が中に入ってきていた。
久能は直感的に追ってだと気づき視線をそらした。
スーツの男は店の店主と何やら会話をしている。
そして、店内を見ながら歩きだした。
『どうしたのよ?』ソフィアが小声で尋ねる。
『何も話すな、普通にしていろ』久能は窓の外を見ながら話した。
黒いスーツの男が久能たちのテーブルに近づく。
胸の鼓動が早くなっていたが、久能はそのまま窓の外を覗いていた。
その時、ある光景が目に入ってきた。
そこにはダイナーの駐車場で女を殴る男の姿があった。
女の顔は血が出るほど殴られた痕跡があった。
久能は一瞬、目をそらす・・・ここで動いたらスーツの男に見つかってしまうからだ。
しかし、久能は再び窓に目をやる。
女は次第にふらつき始めて目は
久能はまた目をそらす・・
しかし再び窓に目をやる、それを繰り返した・・・
そして久能は窓に手を向けた。
伸びた手は窓を突き破って女を殴っていた男の首を掴んでいた。
『な・・・なんだ!これは!』男は驚いていた。
『いたぞ!久能秀隆だな!』スーツの男が詰め寄ろうとしていた。
久能は空いている腕を伸ばしスーツの男を掴んだ。
ダイナーの店内は騒然としていた。
『どうしたのよ!あんた』ソフィアは久能の方を見る。
『君は逃げろ、これはオレの問題だ』
久能はそう言うと窓に向けて息を吹きかけた。
すると窓は久能の息で木っ端みじんに砕け散った。
『そこから逃げろ』
『でも・・あなたは・・?』
『オレのことはいいから!』
『でも・・』
『少しだけだったが・・・助かったよ』久能はソフィアの方にチラッと見た。
ソフィアは何か言いたげだったが、そのまま外へと出ていった。
久能はソフィアが外へと出たことを確認すると掴んでいたスーツの男を投げ飛ばした。
他の客も慌てて店を出る。
久能は伸びた両腕を元に戻した。
『ZACKか』久能はスーツの男に問いかける。
『
『知ったことか』
窓の外で女を殴っていた男は驚きすぎて放心状態になっていた。
殴られていた女は無事にその場から逃げ去っていた。
スーツの男は久能に銃を向けていた。
2人はそのまま、数秒間対峙していた。
その時、爆音を轟かせて赤いセダンが店に突っ込んできた。
『乗って!!』ソフィアが運転席から顔を出した。
久能は本能的に車に乗り込むと、ソフィアは勢いよくバックして急反転をし、急加速で一本道を駆け抜けていった。
『久能が逃げた!赤いセダンだ!赤いセダンを追え!』スーツの男はワイヤレスイヤホンマイクで部下に指示をだした。
赤いセダンはスピードを落とすことなく、一本道を駆け抜けていた。
『なぜ逃げなかった』
『外の女の人を助けたでしょ』
久能はそれには答えなかった。
『やっぱりあなた、良い人ね』
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