第2話






◇数時間後




数台の黒いシボレーSUVが砂埃を巻き上げながら一軒の家の前で止まった。



防弾チョッキを身に纏った数名の隊員と共に黒いスーツ姿の男が車から降てきた。


スーツの男はゆっくり玄関の扉まで近づくと、拳銃を取り出す。


男が玄関の扉のノブを回す、鍵はかかっていなかった。


警戒しながら男は先頭に立って中に入った。



しかし、そこには既に人のいる気配は感じなかった。


男はスマートフォンを取り出すと、どこかに連絡を入れる。


『感づかれたようです、すでに久能秀隆はいません』


《そうか、オーストラリアの空港の搭乗者リストを調べているが、そこには久能の名前はない まだ遠くへは行っていないだろう、引き続き捜索しろ》


『了解』男はスマートフォンを切ると、外で待機していた隊員と共に車に乗り込んで、その場を去った。







オーストラリアの田舎道を1台のトラックが走っていた。


『あんた、どこの人?中国人?』運転席にいる少し痩せ美味の男が話しかけた。


『いや、日本人だ』


『こんな所にいるなんて物好きだな、ここには何もないぞ、観光ならシドニーだろ?』


『何もないから良かったんだけどな・・』久能秀隆は荷物をまとめた後、道でヒッチハイクをしており、そこでこのトラックの運転手に出会っていた。


『まぁ、いいよ で、どこまで行くんだ』


『一番近い街まででいい』


『ならAシティだな』そう言うと、運転手は少しスピードを上げた。





Dシティから出て数時間、車窓の景色は全く変わらず、岩山と草原だけが写っている。


一定のスピードを保っていたトラックが少しスピードを落とした。


『どうした?』久能が声をかける。


『故障車かな?』運転手は前方に停まっている車を指差す。


運転手はトラックを停めると、車を降り前方の車の方へ向かっていった。


久能は助手席から様子を伺う。


運転手が車に近づいく。


停車している車には2人ほどいることが確認できた。


そのうち1人が車から出てくる。


久能は少し警戒して出てきた男を見ている。


男が腰に手を掛けた、そのことで少しジャケットがめくれ上がり、拳銃が見えた。


『ちがう・・やつらは強盗だ・・』


久能はすぐさまトラックから降りた。


男はすでにトラックの運転手に拳銃を向けていた。


『金をだせ!』


『わ・・わかった・・ちょっとまて・・撃つなよ・・』


トラックの運転手は両手を上げたまま、ゆっくりと後ろへ下がっていく。


しかし、次の瞬間 拳銃を持っている強盗の首を誰かの腕がつかんでいた。


『う・・う・・うわ!!!!』男は驚愕して怯えていた。


トラックの運転手が腕の先の方に振り返ると、そこには久能秀隆がいた。



久能秀隆の腕は長く伸び、強盗の首を掴んでいた。



そして少しづつ腕を縮めて強盗の目の前までたどり着いた。


久能はそこで首を掴んできた手を話した。


男は怯えながら車に逃げ込み、すぐさま走り去っていった。



『大丈夫か・・』久能はトラックの運転手の方へと振り返ろうとした瞬間、トラックが砂煙を巻き上げて駆け出していった。




トラックの運転手もまた、久能の得体もしれない能力に怯えていた。




久能はトラックから投げ出されたリュックの荷物を拾い上げると、果てしない道を歩き出そうとしていた。


その時、クラクションの音が後ろから聞こえてきた。


久能は振り返ると、赤い年代物のセダンが停まっていた。




『乗ってく?』


運転席から身を乗り出して声をかけたのはブロンドヘアの女性だった。







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