RED BARON -the four power-

RALPH novels

第1話









◇オーストラリア:とある田舎町





2017年 Dシティ





『グッドモーニング、久能』




恰幅の良い中年の白人男性が、一人の日本人男性に声を掛けた。


『やぁ、スティーブ グッドモーニング』久能くのうと呼ばれる日本人男性は優しい声で挨拶する。


『久能、週末にバーベキューをやるんだが、来ないか?』


『ぜひ』男は気さくに答えた。



2人が会話していた横を黄色いスクールバスが通り過ぎる。


『ヘイ!久能ー!グッドモーニング』


スクールバスの窓から身を乗り出して小さな男の子が叫ぶ。


『やぁ、トニー そんなに身を乗り出したら危ないぞ』


『トニーは君のことが大好きなんだよ』スティーブが久能の肩に手を置き、話す。


『いい息子さんだな、スティーブ』


『ああ』



スクールバスが角を曲がった後、物凄い衝撃音が轟いた。



久能とスティーブは慌てて角の方向へ向う。







角を曲がった久能とスティーブはその先にあった光景に驚愕した。



スクールバスは橋のガードレールを突き破って車体の半分が外へと突き出ていた。


橋の下には大きな川が流れているがその高さは数十メートルに達していた。



『トニー!!』スティーブは叫びながらバスへと駆け寄った。


『スティーブ!だめだ!今、車体は僅かなバランスで保っている、下手に触るとバスごと落ちるぞ』


スティーブは動きを止める・・しかし、トニーが心配でやりきれない様子が伺えた。



バスにはトニー以外にも大勢の子どもたちが乗っていた。



『たすけてー!』


『こわいよー』


多くの子供たちが泣き叫んでいた。



久能秀隆くのうひでたかはゆっくりとスクールバスの方向へ向かいながら上着を脱ぎ捨てた。


『久能・・・』スティーブは久能が何をするのかわからない様子で声を掛けた。



筋肉質な体をした久能はバスの前までたどり着くと、躊躇なく橋の下へと飛び降りた。



『久能ー!!』スティーブが叫ぶ。


スティーブはバスの近くまで駆け出し橋の下を見下ろした。



久能が下に落下していた。


スティーブはただ、見届けることしか出来なかった・・・しかし次の瞬間、スティーブは驚愕の光景を目の辺りにした。



落下した久能は川に着地し、足を踏ん張ったらそこから大きく上へとジャンプしたのだ。



久能はその勢いで数十メートルも上にある橋の方まで高く飛んでいき、橋から投げ出されているバスの前方部分を押し上げた。



バスは橋の真ん中まで車体を押し戻されたことで、落下の心配は無くなった。



久能はバスの中へと入り、トニーを抱えながら他の子供たちと一緒に出てきた。


外にはスティーブをはじめとしてその他のバスに乗っていた子供の親たちが集まっていた。



『パパー!』トニーがスティーブの元へと駆け寄る、スティーブはトニーを力強く抱きしめた。



『無事で何よりだ』久能がスティーブとトニーの方へと近づいた時、スティーブはそっとトニーを背中に追いやりスティーブも身構えた。




久能秀隆はそれで全てを察した。





スティーブは怯えていた、得体も知れないものを見たように・・・・・










久能秀隆は自宅で荷物をまとめていた。



部屋は必要最小限の物しか置いていないようであり、かなり質素だった。




『久能・・さっきはすまなかった・・』スティーブが訪ねてきた。


『いいんだ、あれが正常な反応だ』


『出ていくのか・・?』スティーブは荷物をまとめている久能の姿を見て声をかけた。


『ああ、』


『さっきの事なら、謝る・・』



『いや、違うんだスティーブ オレがこの能力を使うとバレる仕組みになってるんだよ』


『バレる・・誰に?』






『”ZACK”に』







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