第49話 終わりと始まり

 ……さて、どうするか。警告でもして立ち去るか、それとも問答無用で殺すか。この国にもこんな奴がいるのなら変わるかもしれない。よし、少しだけ信じてやる。殺るのはやめてやろう。


『分かった。決して許せはしないが、殺すのは止める。その代わりにお前達がこの国を変えていけ。動物達に対して優しい国にな。流石に一気に変える事は出来ないだろうが少しずつ進めていけ。もしもう一度、動物達危害を加えたらこの国を消滅させる。良いな?』

「分かりました!必ずや達成してみせます!」


 その人達は土下座から立ち上がって敬礼をした。これで少しは良くなると良いな。

 私は飛び立ってクラーの近くに着地した瞬間にフラッとしてしまう。これはもうヤバいと直感で分かったので小さくなった。だけどこれ以上は力が入らなかったから倒れこんでしまう。結構精神的に負担になっていたみたいだった。


『主様大丈夫ですか!?』


 クラーの凄い不安そうな声が聞こえてくる。なんとか喋ろうとして


『うん……大丈……夫……。でも……凄く……眠い……。ごめ……んね……。かな……り長……いあい……だ寝ちゃう……かも……』


 みたけど普通に喋れない。こんなんじゃ全然大丈夫に見えないよね……。

 でももう眠気に耐えれない。ごめんね、クラー。私は眠りについた。









 目が覚めると見たことがない部屋にいた。見渡してみてもただ殺風景な部屋みたいで他には誰にもいなかった。

 ここはどこ?私はクラーといたはずなのに……?そう疑問に思っているとなんだか騒がしい足音が聞こえてきてガチャっとドアが開くとみんなが来て抱きしめられたり頭を撫でられたりと色々された。少ししてみんなが落ち着くのを待ってから


『ねえ、みんなどうしたの?』

「どうしたのって覚えていないの色ちゃん?」

『うーんと覚えているのは、あの国で帰ろうとしたところまでかな?』

「あれから色々あったんだよ!何故かあの国が色ちゃんの事を神様扱いしてきたり、奴隷達は色ちゃんの世話をしたがったりとかね。全くあの奴隷達は駄目だね、色ちゃんは私が世話するのは確定なんだから。割り込んでくるのは違反だと思うんだけど、どう思う色ちゃん?」


 そんな事を言われても……だけど私はもう起きたから世話をする必要はないと思うんだ。そう言おうとしたらクラーが


『紫月、なにふざけた事を言っているのですか?主様を世話するのは私に決まっています!そもそも紫月にはもうすでに小さい主様という存在がいますよね?それなのに放っておいて良いのですか?ほら、あそこで泣きそうになっていますよ?』

『うわーん……。しづきがもうひとりのわたしばっかりかもってわたしをほうちしてる!もう、しづきなんてしらないもーん!』

「あっ!ごめんね、色ちゃん!そんなつもりはなかったの!」


 もうひとりの私がどこかに行くのを追いかけるように紫月も行った。んー?そう言えばさっき紫月があの国が私を神様にしているって言ってたけど、どういう経緯でそうなっちゃったんだろう?全く訳が分からないよ!

 クラーが真剣な顔になり


『主様……。私はずっとこのまま目を覚まさないと思ってしまいました……。主様を信じ切れませんでした。すみません!』


 そう言って土下座をされる。どうしてという戸惑いが大きいけどそれ以上に気になったのが私はどの位寝ていたのかという事。


『クラー、謝る前に私が眠っていた時間はどの位なの?』

『……それは約100年位です』


 そっか。これはクラーの事責められないね。流石に長くても数年だと思っていたけどまさかそんなに経っていたんだ。私だって同じ立場でそんなに長い時間起きないままだったら一生目覚めないと思っちゃうよ。


『……そっか。それならむしろ私の方が謝らないといけないよ。ごめんね。よく耐えたねクラー。ずっと寂しかったでしょ?これからはずっと一緒にいれるからそれで許してくれると嬉しいんだけど良い?』


 クラーが私の言葉に反応してガバッと土下座から起き上がって私を強く抱き締める。少し痛いけどこれ程クラーが寂しく感じていたんだと思い、それをしっかりと受け止める。


『主様……!勿論です!ずっと一緒ですからね!今度寝たら無理矢理叩き起こすので覚悟してくださいね?二度とこんなに寂しい思いはしたくないので』

『分かった。好きにしていいよ。でもその前にさみんなで一緒に魔王の国に行ってみない?せっかくみんなが揃っているんだし、それに他にも色々と今の世界を見てみたいから』

『勿論です……!行きましょうか!』


 これから私の……いいや、私達の新しい始まりだね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

能力持ちの私は異世界でも嫌われる むーが @mu-ga

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ