第48話 やっぱりそうなんだ……
人間達が何故か緊張している中、クラーはそれをものともせずに言い放つ。
「貴方は森の中で動物達に対して実験を行っていましたか?」
「……ん?ああ、その事か。いや、実験ではなく研究と言ってくれ。
「そうですか。では私もそうしてみましょうか。勿論貴方達を研究対象にしますけど。そうですね……、
「そんなのは勿論魔人だ!決まっている!特にブタの魔人だ!あれだけ顔が醜穢な上に身体が太っているなど想像するだけで嫌悪がする!」
ブタさんの魔人がかわいそうだよこれ。凄く酷い言い方するよねこいつ。全くこれだから糞野郎なんだよ。本当は一般的な人間よりも脂肪は少なくて筋肉が多いんだよね。まあこっちではどうだかは分からないけど。
「分かりました。どうぞなってみてください。きっとその人達がどんな気持ちを感じているかが分かると思いますよ?」
どこからかカチッと音がする。すると一瞬で糞野郎も含めて辺りにいた人間達が全員がブタの魔人になっていた。
うん、凄い光景だね。ブタさんがいっぱいだー!そう思ったのと同時に元人間達がまたざわつき始めた。その例に漏れず糞野郎も戸惑っているみたいだった。
「おお?!なんだこれは?俺様がこんな姿に!?」
「どうですか?あれだけ嫌っているブタになった気分は?」
「勿論最悪に決まっているだろうが!貴様はふざけているのか!?」
「ふざけている訳ではありませんよ?私はただこの国の人間達に罰を与えるだけですよ。動物達を実験に使う理由は私は分かりたくもないですが、無関係の動物達を苦しめたのでこの国を壊そうと思います」
それを聞いた人間達が喚いて五月蠅過ぎてイライラして思わず睨み付けた。ひぃ!と叫んで静かになったから良かった。
それを見たクラーが顎の下をさわさわと触る。イラついていたのが落ち着いてきた。なんとなく目を閉じてその感覚に集中しているとトンって鼻のあたりに手を置かれて目を開ける。クラーはいつになく真剣な顔で言う。
『紫月が奴隷達を助け終えたみたいなので、始めても大丈夫と言っていました。私は準備が出来ていますが、主様は大丈夫ですか?』
私を心配しているんだよね。私は大丈夫だよ!クラー、ありがとうね。そんな気持ちを込めて言う。
『うん!今のところはなんともないよ!』
『ではこのまま殺していくのは……止めて、人間に戻してから殺りましょうか。そっちの方がやりやすいですからね』
その言葉に頷いてバサッと翼を広げる。気合は十分にあるからね!
それを見たクラーがふふふっと笑う。それに私もつられてなんだか嬉しくなってくる!
「ですがその前に、皆さんに聞きたいことがあります。この王は当然の事をやったと思いますか?それともおかしい事をやったと思いますか?」
「おかしい?どこがおかしいんだよ!動物なんてその程度だろうが!」「そーだ!そーだ!」「当たり前の事でしょう!?」
「そうですよね。では、貴方達を殺すのに問題はないと判断をしました。なので色さっさと殺りなさい」
私はクラーに答えるようにそれなりの声量の咆哮を出す。
またカチッと音がする。十中八九クラーが鳴らしているんだろう。それで人間達が元に戻り、そいつらが喜んでいる内に王を持ち上げて人間達に見せつけるようにする。そして八つ裂きにした。
馬鹿みたいに五月蠅い悲鳴が響き渡る。正直耐えきれないので耳を塞ぐ。少しして悲鳴は治まったみたいなので逃げる人間達を追う。
国の外に出ようとしているから全部の出口を塞いであげよう。さてと人間達がまたどっかに行く前にある程度は殺しておくか。人間達を掬い上げて握りつぶす。
そうしていると近付いて来たのは鎧を付けている人間達だった。さてはあのボールを使う気か?残念ながら私には効かないぞ?どうせならかかったふりをしても良いな。
その人間達がなにをするのかが気になったので少し待ってみる事にした。すると全員が一斉に土下座をする。ふん、今更謝られても許してやる気はない。
「すみませんでした!すべて私達の責任です!動物達を実験に使ってしまっているのを見て見ぬふりをしてなにもやりませんでした!自分達は反対したかったのですが権力には流石に逆らえず、結局なにもできませんでした!勿論、この程度の謝罪で動物達には許してもらえるとは思ってもいません!なのであつがましいのですが自分達の命と引き換えにこの国の人達をどうか許してはもらえませんか?!」
何故それを私に言うの?被害にあったのは私じゃない、森に住んでいた動物達だ。だから私に言うのは筋違いってやつだ。
そもそもなんでクラーに言わないの?私、咆哮しか言っていないんだけど?ちょっと訳が分からないよ……。
こういう時こそ通信機を使おう!
『おーい!クラー!なんか知らないけど鎧を着た人間達が土下座して謝罪してくるんだけどどうすればいい?!』
『うーん。そうですね。私ははっきりと言ってしまうとどうでも良いです。主様に危害が加わらなければの話ですがね』
『そっかー。ありがとうねクラー』
『この位の事ならどうって事ありませんので平気ですよ。ではまた』
クラーにそう言われた後に通信を切った。
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