第45話 出発準備をする

 冒険者って意外と大変なんだね。私はほんの少ししかやったことがないからよく分からないけど。

 ワルトが嬉しそうに


『へへへっ!そうだろ!俺は凄いんだー!』


 言っているのであまり調子に乗るなとは流石に言えなかった。嬉しそうにしている時にわざわざ言って落とすのはかわいそうなので止めておこう。

 そうだ、紫月とグイスが帰ってきたんだったら渡しとかないとね!無限収納袋は長いから袋だけでいいか、袋から私とクラーで作った通信機を出して


『はいこれ、私とクラーで作った通信機だよ!好きな所に付けて話したい相手を思い浮かべてくれればその人と喋れるようになっているからね!』

「へー!そうなんだ。ワルトのものもそうだけどこんなものよく作れたね!難しいものなんじゃないの?こういうのって」


 紫月が通信機を左耳の上の方に付けながらそう言ってきたので


『いいや?別に難しい訳じゃないよ。適当に作ったものも多いからね。手順も道具に魔法で書き込むだけだからね』

「じゃあ、私にも出来る?」


 んーと、そうだね。ワルトにも出来たんだからやり方のコツさえわかれば紫月にも出来ると思うんだけどね。


『コツさえつかめば問題ないと思うよ!でも今はあの国をぶっ壊す方が先だから作るのは後でね』

「分かった!楽しみにしておくよ!じゃあ情報を言うね。一言で言うとねボールみたいなもの以外は私達の邪魔になるようなものはないみたい。それさえなんとかすれば問題はないかな」

『それならもう問題ないよ。私がちょっと弄ったから気にしなくても平気になったよ』

「後ね、結構政治的にも腐っているみたいだよ?貴族は平民から馬鹿みたいに税を搾り取っていて贅沢三昧してるみたいだし、教会もそんな感じで碌な人間しかいない。奴隷もいっぱいいたよ。奴隷達はみんな死んでいる目をしていた。余程酷い目に合っているみたいだけど、どうする?助ける?」


 奴隷……酷い目に……?いじめ? ……でも人間以外なら助ける気はあるけど


『紫月奴隷って人間?』

「うん、そうだよ」


 人間か。人間にいじめられる人間。私は人間モドキ。人間ではない。でも私も人間にいじめられた。でも人間……助けても、怖い。大量は怖い。

 別にすれば、問題ない?でも、そんな場所あった?ないなら、作る?それでいいか。


『……助ける事にする。人間、怖いけど』

「分かった。じゃあ私は奴隷達を助ける事にするね」

『了解。グイスはどうする?紫月と一緒に行く?それとも私と行く?』

『私はそうだな、別行動にする。ちょっと気になる事があるのでな』


 気になる事?私はグイスが気になる事が気になるよ。なんの事だろう?グイスが具体的に言わないとか明らかに言いたくないみたいだからね。だから無理には聞かない方がいいか。


『そうなんだ。じゃあワルトはどうする?』

『俺は家にいるぜ。誰かは家にいないとなにかあった時大変だろー?だから俺がいてやるぜ』

『そうだね。じゃ家はワルトに任せるよ。なにかがあった時はちゃんと連絡してね!』

『ああ、分かっているぜ!任せとけ!後ついでにライとちびの面倒も見ておくからな!それとだな、これも持っていけ!』


 ワルトが袋から取り出してみんなに渡してきたのはビー玉だった。 ……見れば見るほどビー玉にしか見えないけど、なんだろうこれ?


『それはだな、いざという時の為に作っておいたエネルギーの塊だ。本当にヤバい時に使えよ?』

『分かったよ。なるべく使う機会がないといいんだけどね。なったらなったで遠慮なく使わせてもらうね。ありがとうワルト』

『礼を言うのはまだ早いだろ?そういうのは無事に終わった時に言うべき言葉だ。しっかり終わらせてこいよ!』

『分かった。じゃあちゃんと無事にみんな帰ってこれたら言うね!』


 私はアイツをちゃんとぶっ倒すから、安心して待っててね!ワルト!


『おうよ!その時を待ってるぜ!』

『うん!分かってる!あとはクラーだけどどうする?』

『私は主様が心配なので一緒に行きたいと思います。人間が多い所で大変な事になっても対処できるようにしたいので、なにを言われても絶対に主様から離れませんのでご了承くださいね?』

『じゃあその時は頼りにさせてもらうからねクラー。ちゃんとその通りに私がなにを言っても絶対に離れないでね?』


 きっと私は酷い事を言ってしまうから。不本意で結果的にそうなってしまう。何故か確信できてしまう。そんな事が確信できるんだったら他のを確信出来ればいいのに。


『そこまで言われなくても大丈夫ですよ。私は主様を信じていますので。どんな事されても受け止めてますので問題ないです』


 クラーはそう言うと私に近付いてきてそっと私を抱きしめる。それが嬉しくて色々言いたかった。


『クラー……』


 それなのに口から出てきたのは名前を呼ぶだけだった。ちゃんと言えない自分に不甲斐なく思いながら、私はしばらくの間クラーのぬくもりに浸っていた。

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