第43話 私とクラー
そう言うとワルトはどこかに行ってしまった。どこに行ったのか聞けば良かったかもしれない。もしかしたら魔素が濃い所にいった可能性があるからね。かなり気になる……!
ふと、クラーの方に目を向けると私の方をただ見ているだけでなにもしていなかった。あっ、そっか。そういう所が存在しないからなにも出来ないよね……。
それに気付かなかった自分を殺したくなったけど、それはみんなに怒られてしまうので必死に押さえつけながら代わりに自己嫌悪をしまくる事にした。だけどそれはまた後にしてまずはクラーの方が先だ。
『……クラー気付かなくてごめん』
『いえいえ、平気ですよ。主様は私の事は別に構わなくていいので魔道具を作る続きをやってください。私は見ているだけで十分ですから。どちらにしろそんな事は出来ないのでやりたくても出来ませんから』
『クラーはなにを勘違いしているの?普通に出来るようにちょっとだけ弄らせてもらえばどんな改造でも出来るからね?私を舐めてもらっちゃ困るよ。なにを追加したい?素直に教えてね?ちゃんとそうしてあげるから』
『……本当ですか?』
クラーが真剣な表情でこっちを見ている。心配性だな、こんな事で私は嘘を吐かないのに。
『勿論だよ!どんな事でも私に言ってくれればちゃんとその通りにしてあげる。さあ、貴女の主になにを頼むのかな?』
『……主様に必要と思われる全部を私に付けてください。私は元々主様に望まれて作られた訳でもないのに、勝手に自我が芽生えてしまった存在です。そんな私でも主様は捨てる事もせず優しくしてくださりました。それがとても嬉しかったのです。だから私は主様が望むものになりたい。ただそれだけで私は満足ですのでどうか叶えてはくれませんか?』
……ハッキリ言って私はそれをしたくない。だってそれってただの道具として使えって私にはそう聞こえてしまう。
『かなり言いづらいんだけど、残念ながら私はしたくない。出来るっちゃ出来るけどね』
『それならば……!』
クラーは必死に言い寄ってくるけど私も譲れないからごめんね。
『だけどさそれってただの道具と変わりないじゃん。確かに自我が芽生えたのはびっくりしたけど、言ってしまえばそれも出会いの一つって訳だと私は思うんだ。そんな出会い方をしただけなのに今じゃ普通にこうやって楽しく話しているんだよ?それってかなり凄い事じゃないのかな?それなのにクラーをただの道具として扱え?そんな事私が出来る訳がないよ!せっかく、友達になれたんだよ?それなのに私にそうしろと?……そんなの……嫌だよ……!』
私の我儘なのは分かってる。だけど、そんな事だけはしたくない……!
『……ごめんなさい主様。まさかそこまで私を大切に思われていたなんて知らなかったのです。そんな酷い私をどうか罰してください……!』
『分かったよ。……本当になにされても絶対に文句は言わないでね?』
『はい、勿論です!むしろ躊躇なくやってください!その方が罰になりますので!』
『……分かった。じゃあやるからね。じっとして動かないでね』
私はクラーの頭に手を置いてエネルギーを使い色々弄り始める。 ……これでおしまいかな?もう一度くまなく見直しをしておかしい所がないかを確認してっと。うん!どうやらなさそうだから、これにて終了だね!
『終わったから、もう動いても大丈夫だよ』
『……あの、主様。私になにをしたのですか?』
『ん?簡単な事だよ。私と同族にしてあげたの。こんな事は普通の生物には出来ないんだけどね。勝手にこんな事をした私を許してね』
『……すみません。良く分かりませんがグイス達とは違うのですか?』
えーっと、どう説明すれば良いのかな?とちょっと悩んでいるとクラーが
『……ごめんなさい、少し気になっただけです。なので別に答えなくても大丈夫ですので!』
と慌てて言う姿を見て、可愛いなとつい思ってしまう。
『いや、どう説明したら良いのか考えていただけ。だから気にしなくていいよ。んーとね簡単に言うとグイス達は私の体質よりにしているだけ。クラーは私の体質と全て同じにしたんだ。例えば私が出来てもグイス達は出来ないっていう事が出てくる。だけどクラーは違う、私が出来る事なら同じように出来るようになったんだよ』
『それってつまり、私は主様と同等にしてもらったという事ですか?!』
『まあ、そうだね。でも戻してくれって言われてもやらないからね。それじゃ罰にならないし』
『……これが罰なのですか!?むしろ、ご褒美にしか思えないんですけど!嬉しくて仕方がなくなってしまいましたよ!全く、どうしてくれるんですか主様!』
えへへ……。良かった。喜んでくれているみたいで。これでずっと一緒だね。
そろそろ余韻に浸るのも終わりにして
『よし、クラー!一緒に魔道具を作ろっか!』
『はい!でもどんなものを作るつもりなんですか?』
『それはね……アレを作ろうと思ってね』
『すみません、主様。アレってなんですか?私、気になります!』
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