第38話 謎の扉

 うわっ!なんだこれ?

 扉を開けた中には人影みたいなものがギッチリと入っていた。どうしてこんなのがいるの?!ホラーは本当に私嫌いなんだって!なんの嫌がらせなの!!

 こうなったのはこの扉を開ける前に遡るんだけど……。





 まずその扉を見つけたのは紫月だった。


「ん?なにこれ?凄い厳重な扉だね」


 紫月がそう言うので気になって見てみると確かにドアというよりも扉といった方が正しいような気がする程の大きさ。それとガッチガチにいくつもの鍵がかかっていて明らかに何かが入っていますよと言わんばっかりの扉だった。

 クラーも近くに来て扉を見る。


『そうですね。開けてみますか?』

「うーん。開けてみたいのはやまやまなんだけどこれを開けるのは中々大変そうだからね。私だと難しいかも……色ちゃん出来る?」

『うん。出来るよ!任せて!』


 変な所までエネルギーに変えないように気を付けないとね!しっかりと扉の鍵に狙いを定めて、エネルギーに変えた。お腹は減っていないけどエネルギーを食べていると


「あー!色ちゃん私にも少し位分けてくれてもいいじゃん!前にあんなにもエネルギーがあった魔石食べたからお腹空いてないでしょ!なのに食べちゃうとかずるいよ!」

『主様!私にも分けてください!』

『そう言われても、もう食べ終わっちゃったから……』


 紫月はまだ想定内だったけどまさかクラーが言ってくるとは思ってもいなかったよ。

 うーん。でも食べちゃったものを吐き戻すのは私の体質上出来ないし、どうすれば良いんだろう?

 ……そうだ!紫月には魔石であげる事にしよう。大した量のエネルギーじゃないから小さいけどそこは我慢してもらう事にする。

 クラーにはちょっと違う方法でやらないといけない。何故かって?それはクラーに魔石をエネルギーに変える能力が無いから。それで直接エネルギーをあげないといけないから、違う方法にするって訳だよ!


『食べたものを吐き出せるのはちょっと出来ないから代わりに紫月には魔石をあげる。はい、これどうぞ。小さいけど』

「えっ?良いの?冗談で言ったんだけど?まあ、小さいけどもらえるならもらっとく。ありがとうね色ちゃん!」

『この位だったらよほどの事がない限り大丈夫だから平気だよ。よしそれじゃあクラーは頭を私の方に向けて』

『……こうですか?』


 クラーの頭に手を乗っけてエネルギーを送る。ちゃんと手加減してゆっくり送ってるよ?早く送るとちょっと言いづらい事になるからね。

 ん?具体的に言え?そんなの駄目に決まってるじゃん。18禁になっちゃうよ?色んな意味で。


『……ふぁ。これ良いですね。これからもお願いしたいです』


 クラーがふにゃっとなってきたのでもうそろそろやめる。意外とエネルギーが減らなかった。これもゆっくり送っているおかげかな?


『これだけで満足してくれるならいつでも大丈夫だと思うから、また言ってね』

『ありがとうございます主様。私は幸せです』


 本当に幸せそうな顔をしてクラーは座り込んでしまう。結構、限界だったのかな?うん、クラーはかわいいな。見ていて癒される。これならもっとしてあげれば良かった。いや、これからすれば良い事だよね!早速家に帰ったら、クラーにやってあげよっと!

 そんな事を考えていると紫月がこう言った。


「私だって、色ちゃんにしてもらいたいもん!クラーだけずるい!」

『私は別にや……』『それは私だけの特権ですので、紫月には出来ませんよね主様?』


 私が言っている途中にクラーが割り込んできた上に威圧をかけられたので肯定以外の……つまり否定してはいけないのだろう。

 当然私はそれに耐えきれず


『……はイ。ソウでス』


 少し片言で肯定せざるをえなかった。でもそれをものともせず言い返したのは紫月だった。


「……クラー、色ちゃんに威圧かけないで。さっき正気に戻ったばっかりなのにかわいそうだよ。それに色ちゃんをいじめるのは駄目だって言ったよね?」


 紫月も怖くなってきちゃった。私の為に怒っているのは分かるんだけどごめんなさい。普通に怖いです。だからなるべく威圧から逃げるように服の中に潜って丸くなる。


「ほら、色ちゃんが怯えちゃったじゃん。クラーどうしてくれるの?」

『はい。すみませんでした。主様にも申し訳ありませんでした。ごめんなさい。……ですが、紫月だけずるいですよ!主様に紫月は色々やってもらっているのに私にだって私専用のなにかをやってもらってもいいじゃないですか!』

「……確かに一理あるね。じゃあそれだけは譲ってあげる。その代わり他のやつは私が独占するって事でいいよね?」

『なっ!?それはずるいですよ!』


 ……なんかどうでも良い喧嘩になってきたね。なんでそんな事で喧嘩するんだろう?みんな平等にやれば良いだけなのでは?と思うんだけどこれは言って大丈夫なのかが微妙な所だよね……。


「じゃあクラーの専用を無くす?そしたら私も独占するのはやめてあげるよ」

『……分かりました。それで良いです』

「よし!それで良いのなら、この話はこれで良いっか! ……もうそろそろ話を戻してあの扉を開けてみようか!」

『そうですね。ですがこの扉、なにか文字が書いてありますよ?読めないですが……』


 ん?そんなのあったっけ?ひょこっと顔を出してじーっと見てみると、確かになにか書いてある。読めないけどね。


「うーん。私も読めないみたい。色ちゃんは読める?」

『いや、読めない。でもこれって入るな危険的な警告が書いてあるんじゃないのかな?と思うんだけど』

「そうだとしても、中になにがあるかかなり気になるし開けるしかないでしょ!」


 と言って開けたらあんな風になった訳なんだけど……。

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