第33話 私、逃げ出す

 紫月からの地獄とも思える褒め殺しを食らい続けてどの位の時間が経っただろうか……。あまりの恥ずかしさに私はもう限界だった。いっその事もう死ぬしかない!そう思って動こうとしたけど動けない。

 そういえば何故か紫月が私を椅子に縛り付けたんだよね。でも椅子ってどこから持ってきたんだろう?家に余っている物なんてあったっけ?……多分紫月が作った物なんだろう。

 ってそんな事はどうでも良い!ちょっと現実逃避したくてやったけどこの状況が良くなる事がないのが分かったから止める。それに、トカゲの姿で座り続けるのはなんだか落ち着かない!


「ねぇ、色ちゃん?どうしたの?いきなり動いて」

『……もう限界だからこれ解いて。トカゲの姿だと座るのが落ち着かないし、もう嫌だ。それにもう十分お仕置きしたと思うんだけど』

「なに言ってるの、まだ駄目に決まっているじゃん。これはお仕置きなんだよ?色ちゃんがちゃんと反省しないままで止めちゃったら意味が無くなっちゃうよ」


 それを聞いて私の自己評価が低すぎるってちゃんと反省してるし、自分で言うのもあれだけどそれなりに凄いんだっていう事も分かった。なのになんでこんな事するの?もうなんだかうんざりする。

 私は縛り付けられている椅子と紐をエネルギーに変えようとしたが、出来なかった。だから無理矢理紐を引きちぎり、小さくなる。


『……分かった。もういい。勝手にする』


 そして逃げ出した。


「……えっ?色ちゃんなんで?」


 紫月が動揺している。でもそんなんじゃ駄目。足りない。ちゃんと謝ってくれるまで許せない。私にだって譲れない一線がある。だからそれを分かってもらう為に走り続け、途中グイス達にも会ったけどスルーをして家を出る。

 とにかくみんなに見つかりにくい場所に向かわないと!んーと……私がぶっ壊した元国があった場所で良いっか。もしも人間がいたらその時に考えるとして、早速レッツゴー!

 道中はなにもなかったけどもうそろそろ着くころだと思うんだけどな……ってあれ?前と全然違う。街の残骸が少しあっただけだったはずなのに小さな村になってる!造られるの早くない?もっと時間がかかるものだとばっかり思ってた。

 って感心している場合じゃない!やっぱり村があるって事はつまり人間もいるって訳で……。

 どうするかを考えていると周りになにかいる?!そう気づいた時にはもう遅かった。いつの間にかいた子供に脇腹を掴まれ持ち上げられてしまった。じたばた暴れても抜け出せるどころか、なおさら力を込められてしまい脇腹の辺りが痛くなってくる。だんだん痛みが増していく。流石にもう耐えきれない!


『痛い!痛い!そんなに力入れないで!』


 子供はビックリしたのか私を放した。少し高い所から落とされたけど普通に着地するけど、着地した時の衝撃もあってさらに脇腹が痛くなった。これ以上はもう動ける気がしない。でも動かないとなにされるか分かったもんじゃない!そう思った時今度はそっと優しく私を抱え込むように持ち上げられる。


「とかげさんごめんなさい。きずつけるつもりじゃなかったの……」

『次やったら許さないから』

「うん。わかった!……あっ!そうだ!とかげさんケガさせちゃったから、おうちにつれていっててあてしてあげるね!」

『えっ?……ちょっと待って!そんな事しなくても私は平気だから置いていって!」


 そう言っても子供は聞いていないみたいでこのまま家まで連れていかれてしまった。この子供の親に見つかったらどんな事されてしまうのか……。想像したくない。その怖さに怯えて震えていると


「とかげさんさむいの?まってて、いますぐタオルもってくるから!」

『寒くなんてないから、タオル持ってこなくても良い』

「でも、ふるえているよ?ちゃんとあたたかくしないとダメってママが言っていたもん!もってくるから、ここでちゃんとまっててね!」


 私をテーブルの上に置いてタオルを探しに行ってしまう。ここで待っていろという事だろうが、こんな分かりやすい所で待っていたら親に見つかる可能性が高い。 でもまだ痛みが残っているから、移動するにしても時間がかかってしまう。ここはもう見つからないように祈りながら子供が戻ってくるのを待つしかないか……。


「ひぃっ!なんでこんなところにトカゲなんかがいるのよ!さっさと出ていきなさい!」


 やっぱり見つかっちゃったか。さて、この状況をどうするべきか……。話してもまともに聞いてくれないだろうし、どうしたらいいのかな?


「とかげさん!タオルもってきたよ!あっ!ママ!どうしたの?そんなにとかげさんをみて」

「もしかしてあなたがコレを持ってきたの?」

「うん、そうだよ!あとねこれじゃなくてとかげさんだよ?ママ」

「悪いことは言わないわ。ソレを早く元の場所に戻してきなさい!こんな汚らわしいものを家に入れるなんて育て方を間違えたのかしら……」


 うん、酷い言われよう。私なにもしていないのに。お前の子供に無理矢理連れてこさせられたからむしろ被害者の方なんですけどね……。しかも子供にもそんな事言っちゃうの?はぁ?お前、どんな事でも言って良い事と悪い事があるの知らないのか?

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