第32話 紫月が怖い……

 まず初めに紫月が手を上げる。一体、なにを言われるんだ?気が気じゃないよ……。思わず、遠い目をしそうになる。気を引き締めるんだ私!


「じゃあ、私からで!お願いね色ちゃん!」

『……う、うん。ドンとこいやー(棒)』


 私の棒読みが引っかかったのか紫月は首をかしげてる。はははっそんなに気になる事かな……?


「うん?なんで棒読みなの?言い出したのは色ちゃんでしょ?ちゃんと言った事はやらないといけないよね、色ちゃん?」


 あの……、紫月さん……。凄い、怖い、笑顔で、こっち見ないで……。私が持たない!誰か助けての目で他のみんなの方を見ると、目を逸らされる。あっ、これ駄目な奴だ……!

 それに加えて私が他の所を見ていたのがバレたのか、紫月は私の顔を左手で掴んで左耳にそっとつぶやかれる。


「さっき色ちゃんはどこ見ていたの?駄目だよ?他の奴は見ちゃ駄目なんだよ?今は私のお願い聞いてくれるんでしょう?ねぇ、色ちゃん?」


 そう言い終わると紫月は私を強めに抱き締める。少し痛い。本当に、いつからこんなにヤンデレじみた人になってしまったのか……。言葉選びにも気を付けないと大変な事になる気しかない……。


『うん。ちゃんと分かっているから、力緩めてちょっと痛い』

「嫌だ。だって色ちゃんまたどっか行っちゃうでしょ?私を置いて」

『……確かに私は自分自身はいなくなっても良いと思っていたけど、今は違う。ちゃんと自分を大切にしているつもりなんだ。これでもね。だから、紫月やみんなを置いていく気はないよ』


 こう思っているのは本当。 ……ただどうしても自分の優先順位は低いままなんだ。こればっかりはもうちょっと時間が経たないと駄目だね。だって始めは自分はどうだって良いと思っていた奴だからね。っとこれは言わない方が良いね。また怒られちゃうから。


「……分かった。色ちゃんを信じる。でも今日だけは私の色ちゃんだもん!絶対に離さないし、逃げようとしても逃がさないからね……?」


 はぁ……。私ってどれだけ信頼されてないの?まあ、そうさせちゃったのは自分のせいなのは分かっているけどなんだか複雑な気持ちになる。


『大丈夫だよ紫月、私は逃げないよ。だからね安心して』

「本当に?じゃあなにしても良いんだね?言質は取ったから、絶対に逃げないでね!ふふふ……」


 まあ、なんとかなると思いたいね。嫌な予感しかしないけど、自業自得だからしょうがないと諦めるよ。これがまさに、後悔先に立たずだね! ……あれ、これで使い方合っていたはずだよね?違かったらドンマイ!


「それじゃ、みんなこの部屋から出てね!」


 みんなが出ていく。あっこれって私も出ていっても、問題ないのでは! ……いや多分駄目だな。ついさっき自分で逃げないって言ったばかりなのに、早速するのはちょっと私には無理。それに紫月がヤバい事になるって分かっているからなおさらだね。……はい、素直に待ちます!


「ちゃんと待っててくれたんだね色ちゃん。てっきりみんなと一緒に行くかと思ったんだけど」

『もしもだよ、もしも一緒に行ってたらどうなってた?』

「んー?そんなの当たり前だよ!色ちゃんをアレしてコレして最終的にはふふふ……!」


 紫月、明らかにヤバい事を想像しているよね。色んな意味で凄い笑顔してる……。うんやっぱり、聞かなかった事にしよう。そうしないと、私が持ちそうにない!


『ねえ、紫月二人っきりになったけどなにするつもりなの?』

「……うん?え、えっとね特に考えてないんだ。だって色ちゃんとこうやって話しているだけで嬉しいからね!」


 それなら別にみんなをこの部屋から出さなくても良いんじゃないのかな?と思ったんだけどそれを言うのは止めよう。また紫月がヤンデレ化(?)する事になる。


『そうなんだ。でも私なんかと一緒にいても……』

「そんな事言わないでよ!そんな事言う色ちゃんには、私からお仕置きしないとね……?」

『えっ!?ちょっと待って……』

「問答無用だよ!さあ!こっちに来るんだ、色ちゃん!」


 そう言われた後にガシッと掴まれて強制連行された?!とにかく必死に抵抗しても紫月は動じる事なくどこかへ連れて行かれる。


『あれっ?こんな部屋いつの間に作ったの?』

「この部屋はね、私と色ちゃん専用の部屋なんだよ!良いでしょ!」


 えっ?そんなの嫌な予感しかしないから全然嬉しくないよ!お願いだから、誰か助けて!


『こんな状況じゃ嬉しくないよ!しかもなんでお仕置き私が受けないといけないの!?嫌だ!嫌だ!当たり前の事言っただけじゃん!どうしてお仕置きなんかするの!』

「んー、当たり前?なにが当たり前なの?」

『だから私なんかと一緒にいても楽しくない……ひっ!』

 

 ……ヤバい。これはもう駄目だ。私殺される。その位の怖い顔を紫月はしている。


「ねぇ、色ちゃん?確かに自分を大切に思っていなかったから自分に自信とかはないのは分かるけど、それの度が過ぎるんだよ。分かる?だからね、色ちゃんはちゃんと良い所があるっていう事をたっぷり教えてあげるからね?ちゃんと聞いておいてね?嫌だって思ってもずっと言い続けて洗nゲフンゲフン……してあげるね!」

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