第31話 謎の人影

 だが、流石にこの数は多くないか?さっきから倒しているはずなのだが、一向に減る気がしない。さて、どうするべきか……。


『おい!このままじゃ埒が明かないぞ!いくら倒してもその分だけ湧いてきやがる!どうしたら良いんだよこれ?』


 ワルトが少し戸惑いながら言う。それを聞いたクラーが平然とこう言う。


『倒すなんて簡単ですよ。全部エネルギーに変えてしまえば問題ないです』


 エネルギーに変えるだと! ……そうか、その手があったな!すっかり忘れていた。せっかくシキに進化させてもらった能力なんだ、これでは宝の持ち腐れになってしまう。これからはちゃんと使っていかないとだな!


『じゃあ、グイス頼んだ!ついでにそれで魔石も作ったら一石二鳥だな!』

『確かにそうだな。ではさっさと魔石に変えてやろうではないか!私達の邪魔をしたんだ、容赦はしない!』

 

  私は人影達を次々に魔石に変えていく。少しすると人影達は全部魔石になったみたいでもう新しい人影は出てくる事はなかった。これで終わりか。大した事なかったな。


『……もう出てこないみたいだな。では魔石を集めるか。二人ともそこに集めるのを手伝ってくれ』

『分かったけどよ、なんで集めるんだ?袋でも作ってそこに入れればいいじゃないかよ』

『確かにそういう事も出来るが量が量だとかさばるのだ。それならば濃縮して一つにした方がかさばらないかつ持ち運びが楽だろう?』

『なるほどな!そっちの方がはるかに楽だな!』


 納得してくれたようでなによりだ。

 それから、少しして魔石が一ヶ所に集まった。軽く山積みになっている所をみると結構人影がいたことが分かる。 ……それに今まで見た事がない奴だった。


『ワルトあの人影は見た事があるか?』

『いや、見た事も聞いたこともないな。あれは一体なんなんだろうな?』

『……そうか。だがワルトでも知らないとなると相当なものじゃないか?』

『それは言いすぎだグイス、俺でも知らない事は多々あるぞ』


 ワルトが首を横に振る。まあ、考えてみれば当たり前だな。誰にでも知らない事はあるだろうしな。


『そうだな。では話は変わるがワルトは魔素をドンドン魔石にしてくれ。クラーも出来るならやってほしい。私は魔石を濃縮していくのでな』

『私は残念ながらそれは出来ないので、周りを見張っておきますね』

『これもシキの為だ。俺も頑張ってやってやる!』


 ワルトがやる気になってくれたみたいで良かった。これで一安心だな。魔石を作っては濃縮を繰り返してどの位経ったのかは不明だが、かなりの時間を費やした。

 そして出来たのが通常では絶対ありえない程のエネルギーを秘めた魔石が完成した!これでシキも飛び起きるはずだ!


『やっと完成したな!シキもきっと元気になるな!』

『ああ、そうだな。早く帰ろうか!』

『そうですね。紫月達も待っていますから、早く帰りましょう!大きくなるので少し離れてください』


 そして私達は大きくなったクラーに乗り、家に帰った。





 『ただいま』『ただいまだぜ』『ただいまです』


 グイス達が帰ってきたみたい!ちゃんと魔石を持ってきてくれたのかな?早く色ちゃんを元気にしてあげないとね!

 三人とも色ちゃんが眠っている(?)部屋に来て


『ちゃんと魔石を持ってきたぞ!ほらこれだ!』


 ワルトがそう言って一つの魔石を出した。「えっ?これだけ?もっと持ってきてくれれば良かったのに……」

 思わず、思った事を言ってしまった。わざわざ取りに行ったのにそんな言い方したら、きっとイラッとくるよね……。ちゃんと謝らなきゃ!


「ご、ごめん。つい、言っちゃった……」

『そんな事気にするなって!それにこれはな、魔石を濃縮させまくって作った魔石なんだぞ!だからな作るのに時間がかかったんだ!しかも一つしか出来ないから勘違いさせちまったみたいだな。こっちこそごめんな!ほら、さっさとシキにあげてやれよ。こんなに待たせちまっているからな』

「うん!そうだね!色ちゃん元気になってね!」


 私はその魔石を受け取って色ちゃんにあげる。すると、魔石が溶けていってなくなったとおもったら色ちゃんがトカゲの形になった……!これってもしかして!起きたのかも!





 お腹いっぱいだ……。もう、動けない……。


「色ちゃん!起きたー?」


 ……んー?……紫月なの?待って……眠いの……。


「しーきーちゃーんー!おーきーろー!」


 思いっ切りグラグラ揺らされる。ちょっ、待って!起きる!起きるから!ちゃんと上半身を起こす。目の前には何故かみんな集まっている。どうしたんだろう?


『……みんなどうしたの?こんな所に集まって。今からなにかするの?』

「色ちゃんが!起きた!やったねみんな!」

『ああ、やったな!』『全く、一時はどうなる事かと思ったぜ!』『本当に心配したんですからね!』「ぴー!」『元気になって良かっただってさ!』


 あれ……?私そんな事したっけ?ただお腹空きすぎて眠くなって寝ただけなのに心配される事したっけ?んー?いや多分、私が無自覚に心配をかけさせてしまったのかな?こんな事になるレベルってどんな事をやらかしたんだ私?!


『えっと、なんかよく分からないけどみんなごめんなさい!なんでもはできないけど、できる事ならどんな事でもするから許してください!』


 私が言った事にびっくりしたのか、少しの間動かなくなったと思いきや今度はみんなが目合わせして頷いた。こころなしか、嫌な予感が……。き、気のせいだよね?信じているからね?!

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