第30話 色ちゃんが……!
「色ちゃんグイスが来たよ!」
だけど、色ちゃんは反応しない。悪い方向に考えないようにしながら声をもう一度かけてみる。
「おーい?色ちゃん?」
やっぱり声を掛けても揺すってみても反応がない……。
「色ちゃん……どうしちゃったの?」
『今はとにかく魔石を与えなければいけない!考えるのは後だ』
「う、うん。そうだね。はい、色ちゃん魔石だよ」
グイスから受け取った魔石を色ちゃんの所に置く。すると魔石が溶けるみたいに消えていった。
グイスが持ってきた魔石を全部あげてしばらく待っても、色ちゃんが起きる事はなかった。もう、こうなったら片っ端から魔石を色ちゃんにあげまくってやる!
「グイス、いっぱい魔石を持ってきて!」
『だが、後はもうこの家にはないぞ?』
そんな。……でも、魔石って自然にもあるんだよね?それなら、
「どこかに行って取ってきて!それか魔石を作ってよ!」
『分かった。ワルト達も連れて行くぞ。だがなシヅキ……』
「分かっているよ!!色ちゃんが戻ってこないかもしれない事だって!でも、そんな簡単に諦められないの!」
『そうか。なら良いんだ。覚悟が出来ているのならな。では行ってくる!』
私はシキとシヅキがいる部屋を出てワルト達がいる部屋に急いで向かう。急いで入ってきた私を見てワルトが驚きながら
『おお!?そんなに急いでどうしたんだグイス?』
『説明は行きながらする!ワルトとクラーは一緒に来てくれ!他の皆はシヅキに聞いてくれ!』
『わ、分かった!』『分かりました』
とりあえず説得は出来たみたいだ。だが早くしないと、治るものも治らなくなってしまう!急がなければ!私達は外に出て、ある方向を私が指さして
『クラー私を乗せてあの方向へ向かってくれ!深い森があるはずなんだ!なるべく急ぎでお願いしたい!ワルトもついてきてくれ!』
『分かりましたが、多分ワルトだと私のスピードについてこれない可能性があります。なのでワルトも一緒に乗ってください』
『……分かったよ。今回は素直に乗ってやる!ただ事じゃなさそうだからな。だけどな次からはそんな事絶対にしないからな!』
『それで良いのです。今回はかなり大変な事になっているみたいなので、早く飛ぶ予定ですので文句は言わないでくださいね?では、身体を大きくするのでそれなりに離れてください』
私とワルトはクラーから離れる。するとクラーがどんどん大きくなり、5m位の大きさになった。この大きさは久しぶりに見た気がするのは気のせいだろうか?まあそんなことよりも早くクラーに乗らなくては!
クラーの身体を登って背中に着いてしっかりとつかまる。ワルトもつかまったところでクラーが飛び立った。
『それでなにがあったのですか?』
『それがな……』
私はシキに起きたことを話した。
『そんな事があったのかよ!?……だからかグイスが急いでいたのはよ』
『ああ、そうだ。だが魔石はそう簡単に見つかるものではない。だったら作ればいいだけの話だ。簡単だろう?』
『ですが、何故森に行く必要があるのですか?家でも十分作れると思いますが』
『確かに家でも作れるが、万が一の時の為だ。魔素が無くならないようにする必要がある。だから魔素が濃い場所に行かなければならない』
緊急時に魔素が無ければ皆が大変な事になってしまうからな。多分シキはあの量の魔素だけでは足りない。だからこんなところまで来ているのだが……。さて、どうなるだろうな?
『なるほど。分かりました。……もうすぐ着くみたいですよ?』
『なるべく魔素が濃い所に降りてくれ』
『了解です。ならばあそこですね。どうやらなにかいるみたいですが、どんな相手だろうと問題はないはずです』
そう言うとクラーは一直線にある所へ向かっていった。……ん?なにかいるって言ったのか?それが本当ならば、向かってほしくないのだが?もう向かっているものは止められない、諦めてなにもない事を祈るしかないか……。
そんなこんなでクラーが着地する。丁度良い場所に広場があって良かった。私とワルトがクラーから降りるとクラーが1m位に縮んだ。
さてクラーがなにかいると言っていたが、周りを見渡してもそんな奴はいな……い!?そこにはドス黒く染まっている人影が大量にいた。なんなんだこいつらは?しかもいつの間にか囲まれている!ただ分かるのは、明らかにおかしいって事だ!こうなったら戦うしかない!
『ワルト、クラー!』
『分かってるぜ!全く、なんでこうなっちゃまうんだろうな?!俺だってこんな変な奴とは戦いたくないのによ!』
『私だってそうですよ!でも残念ながら、相手は逃がす気はないみたいですよ?』
『おい!来るみたいだぜ!』
そうワルトが言った瞬間には、もう人影達がこっちに向かって走りだしてくる!全くこんな事している場合じゃないのだが、流石に人影達を避けながら魔石を作るのは骨が折れる。仕方がないが倒すしかないか!
近づいてきた人影達を片っ端から引っ掻く。噛みつきはやらない。あんな変な物を口に入れたくはないからな!
ワルトの方を見ると人影達を何故か飛ばないまま蹴っ飛ばしていた。なんだか意外だな。てっきり引き千切っていると思っていたがそうではないみたいだ。
そうやってよそ見していると人影の攻撃を受けそうになり、少し焦ったが難なく後ろに下がりかわす。
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