第29話 紫月も進化(?)

 もふもふし続けて私が満足した時には、グイスがグッタリしていた。グイス大丈夫かな?……こんな風になっている訳だし、大丈夫じゃないよね。

 そういえば、グイスがそこは触らないでくれとか言ってたっけ?……ものすごく、申し訳ない事をしてしまった。グイスに向かって土下座をして


『グイス、ごめんね。私がちゃんと聞いていれば、こうはならなかったのに……。本当に、ごめんなさい!』


 グイスは気だるげそうな声で


『……ああ、平気だ。……シキが気にする必要はない』


 そう言われても……ね?気になってしまうものは気になってしまうから、土下座をやめて普通のサイズのトカゲになってグイスの頭を優しく撫でる。

 すると心なしかグイスが嬉しそうな顔をする。良かった。そう安心していると紫月が


「色ちゃん?グイスは放っておいていいから、私を……進化だっけ?させてよ!」

『分かった。でも、ちょっと待ってて』


 グイスにそっとエネルギーを送る。……この位かな?丁度良い感じだね。多分、すぐに元気になるよね。これで良し!


『よし、終わったよ!じゃあ進化って言えるのかどうかは分からないけど、始めようか!』

「……なんだか緊張する!」

『そこまで緊張しなくても大丈夫だよ。失敗した事ないから平気!じゃあ、やるよ!頭に手を乗せるからね』

「……うん!」


 私は紫月に近づいて手を乗せる。ゆっくりとエネルギーを送っていく。今まで以上に慎重に、紫月の様子を見ながら送っていくとおかしい事に気付く。私のエネルギーが全然紫月に馴染まない?!どういう事?訳が分からない。

 とりあえず原因を考えてみよう。それさえ分かれば、なんとかなるはず!うーん……。もしかして緊張しているせい?


『ねぇ、紫月緊張している?』

「う、うん。確かに緊張しているけど、それがどうしたの?」

『じゃあ一旦やめるね。なんでだか分からないけど、私のエネルギーが上手く馴染まないみたい』

「分かった。落ち着いていれば良いんだね!」


 紫月が深呼吸し始めるのを見ていると、紫月の中にある私のエネルギーがちゃんと馴染んでいく。よし、これなら上手くいきそう!

 もう一度エネルギーを送っていくと、今度はドンドン吸い取られている?!はぁ……。全く、そんなに急がなくても時間はあるから落ち着け!急に押さえ付けると紫月の負担になるから、徐々に流れをゆっくりにしていく。後は満タンになるのを待つ。……こんなもんかな?

 なにがあっても良いように手を離してちょっと遠くに移動する。そして紫月が光り輝き始めて眩しくて目を閉じていると手で頭を撫でられる。だけど紫月の大きさとは違うから誰だろう?気になって目を開けると、誰かがそこにいた。その人は身長が高くて、色々と大きい。なんだか凄く大人感が出てる。


『……ん?えっと、どちら様ですか?』

「それは酷いよ、色ちゃん……」


 ……その言い方と声は紫月なのか?でも見た目が全然違うから、紫月ではない可能性もあるかもしれない?一応聞いてみよう。


『もしかして、紫月?』

「もしかしなくても私だけど?一体、どうしたの?」


 紫月で良かった。他の人間だったら、みんなにどう説明すれば良いか悩む事になっていたよ。


『えっ、紫月気付いてないの?別人レベルで色々変わってるよ。鏡作るから見てみて』

「そうなの?」


 エネルギーを鏡に変換してっと、よしこれで良いかな?


『はい、これ鏡』

「……これが私なの?確かに、色ちゃんにそう言われるのも分かるね。誰これってなる」

『そうだよ。一発じゃ絶対分からないよ!』


 みんなに見せたらどんな反応するんだろ?気になるけどそれよりも、久しぶりにお腹空いた。身体から力が抜けてぐでーってなる。エネルギー使い過ぎた。身体に力が入らなくなってきた……。このままじゃヤバいかも?


「どうしたの色ちゃん?」

『お腹空き過ぎてキツイ……。なにか持ってきて……』


 あっ、身体がトカゲの形を保てなくなってベチャって水溜まりみたいになっちゃった。その様子を見ていたグイスが


『分かった!今すぐ、魔石をいくつか持ってくる!』


 大急ぎで部屋を出ていく。グイス起きていたんだ。ああヤバい。なんだか凄く……眠い……。でも……起きて……いな……い……と……、だめ……。





 色ちゃんが大変な事になっているのを私は見る事しか出来ていない。その事実が嫌で仕方ないのに、なにをしたらいいかが分からない。

 ……でも、本当は分かっている。怖くてやりたくないだけ。自分が死ぬ覚悟が出来ていないただそれだけの事。色ちゃんはその覚悟が出来ていたのに私はまだ出来ない。私は弱虫なんだ。自己中心的で、どうしようもない奴なんだ。


(だからといって大切な色ちゃんを見捨てるの?)

 

 誰か……じゃない、自分の声がそう言う。

 ……誰が色ちゃんを見捨てるって?違う!私は見捨ててなんかいない!


(だってそうじゃん。私はなにも色ちゃんにしてないんだよ?それのどこが見捨てていないって言うの?)


 確かに、なにもしていない。……今からやるんだよ!


(……それでこそわたしだね。良かったよ、このまま諦めてなにもしないのかと思っちゃったよ。これで安心だね。丁度グイスも来たみたいだし!)


『おい!シキ!大丈夫か!』


 あっ本当だ!これでなんとかなる!

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